中嶋悟氏の長男・中嶋一貴氏は今年からF1ドライバーとしてフルタイム参戦している。23才という若さだが、これまで一貫して中嶋氏のもとから離れた場所でキャリアを積んできた。あえて「親の七光り」とは無縁の道を選んだ息子のことを中嶋氏は次のように語る。
自分の後を継いでほしいと強く思っていたわけじゃないんですが、ドライバーの父親と一緒に生活をしていて、本人の志向が自然とそうなっていったのでしょう。可能性がなさそうだと思えば「無理だからやめた方がいいよ」とアドバイスしたと思うのですが、小さい頃からの様子を見ていると、「まあドライバーという道に進んでもいいのかな」と思いました。僕は「外飯(そとめし)を食べさせる」といういい方をしているんですが、本当に可能性があるのかないのかという判断はよそでやってもらった方がいいと思ったわけです。僕は親ですから、どうしても欲目で見てしまいますし、客観的な目でジャッジしてもらう方が彼の能力や可能性を正当に評価できるはずです。F1に参戦できたのは本当に嬉しいことですが、それもすべて他の方に決めていただいたことです。
特にF1では本当にいろいろな世界を見ることができるし、これからさまざまな人と関わっていくうえで、人間として貴重な経験を多く積むことができると思います。自分自身を振り返ってみても、楽しい時間や刺激的な時間をたくさん持てました。もちろん苦しいこともいろいろありますが、差し引いたら圧倒的に楽しさの方が勝っています。ドライバーという職業はいつまでもできるものではありませんし、ドライバーを辞めた後に彼が何をするのかはわかりませんが、その経験は必ず後の人生にとって大きな糧になるはずです。