中村征夫氏は、水中写真家を辞めようと思ったことが一度あるという。それはNHKのリポーターとして行った奥尻島で、地震と津波にあったときだそうだ。逃げるのが1、2秒遅ければ死んでいたという。
「初めて海を憎みました。奥尻島の人たちは優しくて本当にいい人たち。ああいう現実を目の当たりにすると、大好きだった海が大嫌いになったのです。数ヶ月の間は辞める覚悟でいました。そのときに考えたのは生き残った意味。お前にもう1回命を与えるから、海は美しいだけではない、豊穣な恵みを与えるだけでもない、魔物のような恐ろしさもある。人はそんな海とともに生きていかなければならない。それをきちんと人々に伝えなさいと、そういわれている気がしたのです。だから環境保全の運動もしているわけです。残された人生は、微力ながら海の現状を伝えて環境修復に貢献したいですね」。