まず、アメリカでSOX法が施行された背景やその概要をお聞かせください。
SOX法は、現在かなり話題にものぼっていますので、皆さんも名前は耳にされたことがあると思います。この法律は正式には法案の提案者の名前をとってサーベンス・オクスレー(S a r b a n e s - O x l e y)法といいますが、普通は通称であるSOX法で呼ばれています。アメリカでは2001年から2002年にかけて、不正会計処理に端を発したエンロン社とワールドコム社の2つの大型倒産がありました。そこで、粉飾決算などの企業不祥事を防ぐために緊急措置法のような形で作られたのですが、これには少し前段があります。
この2大倒産事件からさかのぼること約10年前の1992年、「COSOフレーム(※1)」が発表されました。これはトレッドウェイ委員会支援組織委員会がまとめた内部統制に関する基本的な枠組みで、COSOはその委員会の頭文字です。また、この概念を3次元の立体キューブで表現した「COSOキューブ(※2)」というものもあります。
監査法人のプロフェッショナルが集まって作ったこれらの考え方は、アメリカの企業内で実践されていたはずなんですが、実際には大型倒産が相次いで起こってしまったということで、「COSOフレームやCOSOキューブの考え方が機能しているのか?」という大きな疑問符がついた。そこで、これ以上不祥事を起こさせないように、COSOフレームワークに基づいて、刑罰が懲役20年を超えるような厳しい法律であるSOX法が急遽生まれることになったわけです。
では日本に導入される際の相違点を含め、日本版SOX法についてお聞かせください。
日本版SOX法は正式には「金融商品取引法」といいますが、これはアメリカ版のSOX法をそっくりそのまま輸入したような厳しいものでは決してありません。またアメリカとの違いは、日本では「会社法による内部統制」と「日本版SOX法である金融商品取引法による内部統制」という2つの側面から取り組む必要があるということです。金融商品取引法による内部統制が孤立して存在しているわけではないんです。まず内部統制は会社法に基づいて取締役会で決めなければなりません。また、取締役会では内部統制に取り組む意思を宣言するだけではなく、実際にその計画を立案しなければならないし、それをどの程度の規模で進めていくのかを決定しなくてはなりません。
他にもアメリカのSOX法と一線を画すことになる背景があるのでしょうか。
現在、世の中の書店を席巻している感のあるCOSOフレームやCOSOキューブですが、これらの本を読んで「なるほど!」と理解できる人は少ないでしょう。もちろんアメリカ型の経営が身についている方には、業務フローをキューブで割ってひとつひとつのチェックポイントを明確にしていく、というこの方法はわかりやすいかもしれません。しかしながら我が国の企業では、そのような業務フローになっていないわけです。
それにアメリカ版SOX法の刑罰は厳しすぎたのではないかという反省もある。実はこの法律、まだアメリカの上場企業の8割には適用されていない。適用が延期されているんですね。上位2割の企業にしか適用されていないということは、法律の威力や効力としてお粗末すぎるわけですよ。このように日本の習慣に馴染みにくい側面や法律としての問題点などを検証すると、やはり我が国独自のしくみを作らなければならないし、緩やかに内部統制をすすめる必要性が高まってきたんです。もっとも緩やかといっても、「処罰されることのない、いい加減なものを作ろう」ということではなくて、向かうべき方向は非常にはっきり決められています。「取締役の職務をきっちり管理しなさい」、「会社全体の業務を的確に管理しなさい」、「会社の財務に関わる情報書類を適正に処理しなさい」、そして「これらの体制整備をしなさい」ということです。つまり、体制の整備というのが内部統制の基本的な枠組みであり、しくみでもあるんですが、どういうしくみを作るかは各々の企業の裁量に任されているといえます。

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