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最先端のICTトレンドを深く理解する ICTトレンドゼミ〜プロフェッショナルに聞く〜

2012年1月11日公開

ICTトレンドゼミ
2012年のICTトレンド(前編)

3. ソーシャルメディアが企業システムを変える

――2つ目のキーワードとして「ソーシャルメディア」は、企業がどのように向き合い、活用していくべきでしょうか。

 ソーシャルメディアはコンシューマ分野の大きなICTトレンドとして、日本でも急速に広がってきています。企業利用も進みつつあり、TwitterやFacebookをビジネスで利用することが珍しくなくなりました。従業員がビジネス規範上許されない内容をソーシャルメディアに書き込み、それが炎上といわれるトラブルに発展するといったケースもありますが、これは利用自体を禁止するのではなく、何らかの社内規程を設けることなどによって解消すべきと思います。

 こうした従業員個人としての利用のコントロールだけでなく、事業活動という観点からもソーシャルメディアへの対応は非常に重要なポイントになりつつあります。なぜならば、ソーシャルメディアでの情報のやりとりが、顧客との接点として大きな影響力を持ち始めているからです。

 特にコンシューマ向けに事業を展開している企業は、ソーシャルメディアに対応していくことはもちろん、有効活用できるかどうかが今後の事業拡大の大きなカギを握っているといっても過言ではないでしょう。

 私は企業と従業員個人の両方において、ソーシャルメディアを積極的に活用していくべきだと考えています。その理由は、ソーシャルメディアの活用は、もっと大きなトレンドである「企業システムのコンシューマ化」の一部と見ているからです。

 これまで企業システムにコンシューマ分野の仕組みが入り込んでくることは、メールなど一部の仕組みを除けばほとんどありませんでした。企業システムは財務管理や販売・在庫管理など業務に直接結び付く基幹系と、従業員間の情報共有や顧客情報などを扱う情報系に大別できますが、特に情報系については今後コンシューマ分野の技術との連携・融合が進むのではないでしょうか。たとえばビジネスでのインスタントメッセージの利用や社内SNS(Social Network Service)の普及、商品開発やプロモーションにおけるソーシャルメディアの利用 などは、まさにその代表例と言えるでしょう。企業システムのコンシューマ化というのは、そうした動きのことを意味しています。

 実際に既存システムにコンシューマ分野のテクノロジーを融合する際には、特にセキュリティ上の懸念が残るケースが少なくありません。しかし、「企業システムのコンシューマ化」という大きなトレンドを理解するならば、そうしたリスクに過敏になり規制する方向に動くのではなく、実際にどんどん使ってリスクにも臨機応変に対応しながら、 活用範囲をスピーディに広げていくことを優先するべきだと思います。

編集コラム

メールに代わる新たなコミュニケーションツールの普及

 先日、欧州最大のICT企業が、業務の効率化・生産性向上を図るため今後社内メールを全面的に禁止し、インスタントメッセージをはじめとする別のコミュニケーションツールを利用するというニュースが流れました。社内LANやインターネットが普及した当初とは異なり、現在ではインスタントメッセージやTwitter/Facebookに代表されるソーシャルメディア、さらには社内向けのSNSなど、さまざまなコミュニケーションツールが存在しています。
 これらはもともとコンシューマ向けに開発されたサービスですが、ビジネスでも便利に使えることから業務で積極的に活用するケースが増えつつあります。メール以外のコミュニケーションツールのビジネス利用は、今後広がっていくのではないでしょうか。

後編では、「ゲーミフィケーション」や「BYOD(Bring Your Own Device)」、「ビッグデータ」といったキーワードについて解説していただきます。

2012年1月25日公開 2012年のICTトレンド(後編)根来龍之氏

早稲田大学ビジネススクール教授
早稲田大学IT戦略研究所所長

根来龍之氏(ねごろたつゆき)

三重県生まれ。京都大学卒業(社会学専攻)。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年度より早稲田大学教授。早稲田大学ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)および同大学IT戦略研究所所長。著書に、「CIOのための情報・経営戦略」(中央経済社)など。