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2011年10月12日公開

ICTトレンドゼミ
グローバルでのICT基盤の最適化(前編)

グローバルでのICT基盤の最適化(前編) 内山悟志氏

 ビジネスのグローバル化は加速し続けており、海外生産や現地法人の設立、あるいは販売拠点の構築などによって、国外にICT環境を構築する企業は増加し続けています。また国内とグローバルのICT環境をどのように連携すべきか、通信環境やデータセンターをはじめとするインフラをどう構築するべきかなど、検討すべき課題も少なくありません。今回は株式会社アイ・ティ・アール代表でプリンシパルアナリストの内山悟志氏に、ICT環境のグローバル化における課題やその解決策についてお話を伺いました。

1. ICT環境の最適化に向けたガバナンススタイル

――昨今、ビジネスのグローバル化が進む一方、ICT環境のワールドワイドでの最適化は実現されていないように見受けられます。ICT環境の最適化を実現するためには、どういったことを考えていく必要があるのでしょうか。

 まず、日本企業のグローバル化におけるこれまでの状況について、私の認識をお話ししておきましょう。日本企業の海外進出は当初、「輸出型」から始まりました。「輸出型」とは、日本で製造したものを海外の販売拠点経由で売るというパターンです。そしてその後、販売だけでなく生産拠点も海外に移した「生産移転型」が登場してきました。最近では、複数の海外生産拠点から複数の国・地域へ商品を販売展開する「分散型」でビジネスを展開するケースも増えてきました。このように、多様化したグローバルスタイルに対して、ビジネスを動かす仕組みも複雑になってきています。

 ビジネスを動かす仕組みが複雑になればなるほど、ICTの有効活用が競争力の決め手にもなるため、企業にとってはICTをどううまく活用するかが重要な課題となってきています。しかし、現状ではビジネスのスピードの速さや複雑化に、ICTの仕組みづくりが追いついていないケースが少なくないようです。

 そうした状況を打開して、日本企業がグローバル市場で競争力を発揮していくためにはICTをどう活用すればよいのか。そこでキーワードとなってくるのが「最適化」です。最適化こそが競争力の決め手になると考えています。

 最近、ワールドワイドでのICT環境の最適化が求められるようになってきた背景には、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に代表される新興市場において、グローバル企業同士の競争が一層激しくなってきている状況があります。さらに新興国からも、コスト競争力を武器に飛躍的な成長を遂げた企業が続々と登場しています。

 そうした多くの競争相手に日本企業が競争力を発揮していくためには、たとえばサプライチェーンにしても他が追随できないほどの効率的な部材の調達や商材の迅速な配送などを実現していかないと勝ち目はありません。そのためにも、ICT環境の最適化を追求することが必要不可欠なのです。

 では、どのように進めるべきなのか。そこでキーポイントになってくるのが、グローバルICTガバナンスへの取り組み方です。これには日米欧それぞれに異なる3つのスタイルがあるとみています。

 たとえば、米国ではトップダウンのガバナンスを効かせる企業が多く、ICT環境においても1つのERPをワールドワイドの拠点にも統一して使用させることで、シンプルで合理的なガバナンス体制を整えるケースが多いようです。

 米国がそうした「トップダウン型」だとすると、欧州の企業のガバナンススタイルは「スタンダード駆動型」と言えます。欧州はもともと個別の文化や言語を持った複数の国々で構成されていることから、それぞれの個性を許容する傾向が強いのが特徴です。そうした土壌で育まれてきたのが、スタンダードを重視する考え方です。国や地域の違いを許容しつつも、スタンダードのラインを設けて足並みを揃えようというのが、欧州流のガバナンススタイルだと言えます。さまざまな分野の国際標準規格の多くが、欧州から誕生していることを考えるとイメージしやすいでしょう。

 日本は均一で「和」を重んじる国民性からも、「コンセンサス型」と呼ぶのがふさわしいでしょう。それがICTガバナンスの取り組みにも反映されているケースが多いと思います。欧米に比べると、もっともゆるやかなガバナンススタイルと言えます。

ICT環境におけるガバナンススタイルの日米欧の違い

ICT環境におけるガバナンススタイルの日米欧の違い

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 こうしたさまざまなガバナンススタイルがある中で、日本企業がこれからワールドワイドでのICT環境の最適化を進めていくためには、場合によっては欧米のスタイルも効果的に取り込んでいく必要があるのではないかと思います。

 ただ日本企業の場合、グローバルな経営方針やマネジメントスタイルが決まらないと、ICTガバナンスへの取り組みも進まないという話をよく聞きます。実は、日米欧で異なるガバナンススタイルはICTだけでなく、経営そのものにも当てはまる話です。その意味では、経営もICTも同じガバナンスのジレンマを抱えているのです。

 しかし、手をこまねいているわけにはいきません。そんな時、私は日本企業のICT部門の方々に、ICTが先行できるところは先行して、むしろ経営のガバナンスに対して道筋をつけるくらいの積極的なアクションを起こしてもよいのではないですか、とお話ししています。