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2011年12月21日公開

ICT用語ガイド
GUIDE 066 テレワーク

テレワーク導入に向けて考慮すべきポイント

実際にテレワークを導入する際、どういったことを考える必要があるのか、また社内制度をどのように整えるべきかについて、株式会社ワイズスタッフ/株式会社テレワークマネジメント代表取締役の田澤由利氏に解説していただきました。

テレワークは「働き方」の改革

 2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、BCP(事業継続計画)や社員の安全確保、あるいは節電の観点から、テレワーク(在宅勤務)に大きな注目が集まりました。テレワーク導入を検討する企業が増え、すでに導入している企業は対象者や日数を拡大する傾向にあります。

 しかし、「明日からテレワークを実施しよう」といって、簡単にできることではありません。システムの導入に加え、社内ルール、仕事の仕方、働く人の意識も含め、適切な形で時間をかけて導入する必要があります。逆に言えば、中途半端にテレワークを導入すると、目的である災害時の事業継続や社員のワークライフバランスを達することができないばかりではなく、企業の生産性を低下させてしまう危険性もあります。

 ここでは、テレワークを適切に導入して効果を出すためのポイントとして、「セキュリティ」「コミュニケーション」「マネジメント」について説明しましょう。

安全に仕事をするための「セキュリティ」

 オフィスに集まって仕事をする大きな理由のひとつとして、企業の重要な情報を守ることがあります。企業の情報が外部に流出しないよう、オフィスには物理的なセキュリティシステムが設置されています。

 これに対してテレワークでの業務には、移動中のパソコンの紛失や盗難、自宅のネットワークでのウイルス感染など、情報漏えいのリスクが高まります。

 しかし最近は、リモートアクセスやデスクトップ仮想化などのテレワークに対応したサービスが多数提供されています。これらを使うことで、自宅のネットワークとPCを使って、オフィスと同様に安全に仕事をすることができます。コストと機能についても、さまざまな選択肢が用意されていますので、自社にあった製品を選択することによりセキュリティ対策を実施することが可能になるでしょう。

チームで仕事をするための「コミュニケーション」

 セキュリティを確保しても、すべての仕事をテレワークで完結できるわけではありません。日本の多くの企業は、仕事をチームで遂行しています。オフィスで仕事をする社員と、テレワークで仕事をする社員のコミュニケーションに支障が出ると、チーム全体の仕事の効率が低下しかねません。

 社員同士のコミュニケーションとして、もっともわかりやすいのが「会議」です。時間を決め、関係者が会議室に集まり、特定の課題を集中的に議論します。このため、テレワークで働いている社員がいると日程調整が必要になるのですが、「Web会議システム」を導入することで、離れていても会議に出席することができます。

 一方で見落とされがちなコミュニケーションが、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」です。「これ、お願いね。」「あの件、どうなっている?」「ここ、どうしたらいい?」といった、上司や同僚との日常的に交わされる会話が、チーム業務において重要な役割を担っているのです。「メールや電話でいいのでは?」と思われるかもしれませんが、従来、オフィスにおいて「口頭」で行われていたこれらのコミュニケーションは、そこにいるほかの人たちの「耳に入る」ため、特に意識しない形でチームに共有され、仕事の効率化に寄与していたのです。

 オフィス勤務者とテレワーカーの間でも、ホウレンソウを共有するには、メーリングリストやグループウェアなどを活用して、ホウレンソウを共有することから始まります。今まで口頭で行ってきたことを、あえて共有するのは手間がかかる、と思われるかもしれません。しかし、これがテレワーク導入のメリットにつながります。業務のためのコミュニケーションを見える化することで、従来はその場で消えていた仕事の仕方を記録できるからです。企業にとって、これまで社員の机や頭の中にしかなかった業務のノウハウを、企業の共有財産として形として残すことができるようになります。

離れているからこそ重要な「マネジメント」

 テレワーク導入にあたり、企業として重要になるのが、労務管理です。従来と異なる働き方をするのですから、社員の管理におけるルールや考え方も変更しなくてはいけません。就労場所や光熱費、交通費、労災の範囲などを決めていく必要があります。本来の「就業規則」に加え、これらを「在宅勤務規定」として、別の規定を設ける企業もあります。

 労務管理の中でももっとも課題となるのが労働時間管理です。時間の管理を徹底して実施しないと、上司がテレワークをしている部下に対し「ちゃんと仕事をしているのだろうか」という不安を、またテレワークをしている社員は「仕事をしていることを認めてくれているのだろうか」という不安を抱くことになります。

 その結果、上司と社員関係がぎくしゃくして、「出社して、目の前で仕事をするほうがよい」とテレワークがしにくくなることもあります。テレワーク時の始業と就業時のみ上司にメール連絡するという企業がありますが、それでは不十分です。テレワークでも労働時間をしっかり管理できる在席管理ツールの利用や、業務において頻繁にコミュニケーションすることなどをおすすめします。

 このような状況を生み出す原因は、長時間働いている社員が評価されやすい、という日本独特の意識にあります。アウトプットにも重きを置いて評価することで、テレワークをする社員だけでなく、勤務社員の残業削減という効果が出たケースもあります。テレワークの導入は、従来のマネジメントの改革にもつながっていくのです。

テレワークは、企業強化のチャンス

 ここまで読んで「大変そうだから、テレワークの導入は見合わせよう」という判断をするのは大変もったいないことです。なぜなら、企業を強くするチャンスを逃すことになるからです。

 テレワークは、BCPの策定や社員のワークライフバランスに大きく寄与します。そしてテレワークを適切に導入する過程で、これまで当たり前としていた仕事の仕方を見直すことになり、結果としてコスト削減や業務の見える化、作業効率の向上といった大きな副産物を企業にもたらします。

 経済の低迷、自然災害の頻発、少子化による労働力不足など、先の見えにくい社会において、テレワークを適切に導入することができれば、魅力ある企業として人材の確保が容易になり、大きく成長することにもつながるでしょう。

田澤 由利(たざわ ゆり)氏

田澤 由利(たざわ ゆり)氏

株式会社ワイズスタッフ
株式会社テレワークマネジメント
代表取締役
1962年奈良県生まれ。1998年、インターネット上で会社を運営する「ネットオフィス」を実践するためワイズスタッフを設立。2008年9月株式会社テレワークマネジメント設立。女性はもちろん、地方在住者、高齢者、障がい者も「ネットで働ける社会」を実現することをライフワークとして取り組んでいる。

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