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法人のお客さま総合 > ICT Business Online > ICT用語ガイド > GUIDE007 BCP(Business Continuity Plan) クラウド活用による災害対策の実現
2012年3月7日公開
BCPを策定する際、ICT環境をどのように保護するかという視点は欠かせません。ここでは、株式会社アイ・ティ・アールのシニア・アナリストである甲元宏明氏に、ICT環境の災害対策について解説していただきます。
ITRと一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は、国内企業500社のIT戦略にかかわる意思決定権者に対するアンケート調査を2011年5月下旬に共同で実施しました。自社の東日本大震災時の被災状況については、「特に影響はなかった」としたのは33%に留まり、そのほかの2/3の企業が何らかの被害を受けたことが明らかとなりました。また、部品などの調達先や商品の納入先などが被災し、自社の事業にも影響が及んだという企業が多いことも分かりました。
この調査により、国内企業の経営課題の優先度が東日本大震災後に大きく変化したことも分かっています。震災前の段階では、「災害やシステムダウンへの対応」が重要経営課題には位置付けられていませんでしたが、今回の調査では1位という結果になっています。
また、震災後の各種施策の実施状況について、「被災/停電対応を目的とした事業拠点見直し・変更」、「被災/停電対応を中心とした取引先、サプライチェーンの見直し・変更」、「事業継続計画、災害復旧計画の強化・見直し」、「ディザスタ・リカバリの対象となるシステムの拡大」、「ネットワークの災害対策強化」、「データセンターの設置場所/契約先の見直し・再検討」など、BCPや災害対策に関連する施策を「今後実施予定」とした企業の割合が高くなっています。このように、現在多くの国内企業においてBCPや災害対策が最優先課題となっているのです。
BCP/災害対策を考える際、重要になるのがRTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)です。たとえば災害が発生してもシステムを止められないのであれば、目標復旧時間は「0」となり、複数の拠点でシステムを完全二重化、あるいは冗長化するといった対策を講じる必要があります。しかし、このような構成のシステムは初期コストと運用コストが極めて高くなるため、ミッションクリティカルな領域以外で採用されることはほとんどありません。
そこで多くの企業で行われているのが、データをテープメディアにバックアップし、それを遠隔地で保管するという方法です。コストを抑えて災害対策を実現できるメリットがありますが、一方で復旧時にテープの輸送が必要であり、さらにハードウェアやその設置拠点が被災した場合には代替環境を別途用意する必要があるといった課題があります。このため、この方法でのRTOは半日以上になることが一般的で、迅速に復旧することが求められる場合には適切な手法ではなかったのです。
このように、従来はRTOを短縮するためにはコストをかけてバックアップ環境を構築する必要がありましたが、こうした課題を解決できる有効なBCP/災害対策として使えるのが、昨今話題となっているクラウドコンピューティングです。クラウドコンピューティングには、自社所有型のプライベートクラウドと、サービス事業者が提供するパブリッククラウドの2つの形態がありますが、災害対策として有効なものは言うまでもなくパブリッククラウドになります。
パブリッククラウドの長所を挙げると以下のようになります。
・サービスを迅速に使い始められる
・いつでも利用を停止することが可能
・グローバル展開が容易
・リソースの拡張や縮小を柔軟かつ俊敏に行える
・初期費用が抑えて利用できる
パブリッククラウドは、ハードウェア/ソフトウェアやシステム設置場所を用意する必要がなく、極めて迅速にシステムを立ち上げることが可能です。こうしたメリットを活かし、自社のシステム、あるいはデータをクラウド上にバックアップしておけば、災害対策として利用することが可能になります。なお、災害対策としてクラウドサービスを利用する場合には、サービスを運営しているデータセンターの場所や堅牢性などついてもチェックするとよいでしょう。
株式会社アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
大阪大学大学院工学研究科を修了後、三菱マテリアルにおいて、モデリング/アジャイル開発によるSCM構築、CRM・ECなどのシステム開発、各種ネットワーク系プロジェクト、グループ全体のIT戦略立案を主導。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州・北米・アジアのITを統括し、IT戦略立案・SAP展開を実施。2007年より現職。
・株式会社アイ・ティ・アール http://www.itr.co.jp/