気がつけば我が家もEメールのヘビーユーザーになっていた。携帯を除けば、一日にやりとりするコミュニケーションの類(たぐい)を手段別に分けると、Eメールがほぼ七割に達する。次が電話で、最後がファクスの順になる。手紙とハガキは一か月に一通出すかどうかで、一パーセントにも満たなくなった。
Eメールは、早い、安い。海外への連絡には、もはやEメール以外に他の手段を考えられない。一年間に三千通以上のEメールを海外からいただく。しかし困った問題もあるのだ。最近は一日に三十通を越えるEメールがある。危いウイルス付きのメールをプロバイダーに除去してもらっても、着信したメールを覗くと、聞いたことのない相手から来たものがかならず混じっている。ふつうは、ウイルスが怖いから見知らぬメールはすぐにゴミ箱へ捨てるのだが、「件名」のところに気になる文言が書いてある場合、そうはいかなくなる。最近は、この文言が実に巧妙になりつつあるのだ。
たとえば、「アラマタ、至急!」だの、「ヘイ、アラマタ」だのと、こちらの名を書いてくる「知り合い」タイプ。誰かと思って開けば、「バイアグラ安いよ」だの「私のいい写真送るわ」など怪しいDMだったりする。「ヘイ!」などと親しげに呼びかけるのや、「私のこと憶えてる?」などの「思わせぶり」タイプも、みなこの手のメールだ。その他、「返金手続きをお忘れです」とか「あと一日であなたの権利が消えますから、更新を」とかという「忠告」タイプも多い。最近の傑作は「忘れ物を取得」「ご自宅へ小包み急送しました」などという「親切」タイプまで出てきた。そう書かれては、怪しげなDMを開かないわけにいかなくなる。
変なメールが来るのも困りものだが、もっと困るのは、自分のアドレスが漏れていることのほうだ。巧みな件名の文句に引っかかりDMを開いてしまったとき、「やられた!」と苦笑いしながらも、不安になる。この先、自分の情報をどうやって守ればいいのだろうか、と。
※「荒俣宏のITコラム」は、今回をもって終了させていただきます。ご愛読いただき、ありがとうございました。 |