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荒俣宏のITコラム
第6回 パーソナリティの磨き直し
2003年04月21日
 ホームページを立ち上げようとしている。
 一年前から準備にはいり、デザインをどうしようか、とか、画像をどのくらい収めようか、とか、ふだん考えもしなかった「自己アピール」の問題にぶつかっている。

 実は、IT社会に参入するということは、新しいスタイルの「自己アピール」を創りだす、ということを意味する。たとえば昔は、名刺をつくったり、スーツを着たり、あるいはヒゲを生やしたりという自己アピール法があった。「○○社の課長でございます」「××大学出身です」などの自己紹介は、その典型だ。旧来の実社会では肩書や所属が有効なアピール項目だった。

 ところが、ホームページで昔通りの自己紹介を書いていると、何だかむなしくなってしまった。IT空間では現実世界での肩書や地位など何のアピール力も持たないと、知っているからだ。現に、わたしのお気に入りサイトの主人公は、「家じゅう古玩具に埋もれた中で、栄養失調になりながらも、玩具図鑑をつくりつづける」人物とか、「ウソか本当か分からない怪情報を書きまくっている正体不明の事情通」たちなのだ。本人の経歴だの地位だのではなく、本人だけが持っているスタイルやこだわりがアピール力となる。しかもそれが「IT内だけのつくり話」であっても、一向にかまわない。

 地位や経歴がつくりだす自分を「キャラクター」と呼ぶ。キャラクターを偽れば詐欺になる。これに対し、自分自身の持ち味やイメージを「パーソナリティー」という。個性だから、悪質なものでもかまわないし、偽ったものでもよい。役者やTVタレントのアピール力がこれに近い。だが、演技はいつか見抜かれる。ただし、地の自分がそうであれば、破綻はない。ホームページで必要なのも、これなのだ。

 さて、地の自分は至って真面目で遊びのない世代が、ネット社会で輝くには、軽薄なパーソナリティーを磨くしかないのだろうか。

荒俣 宏
1947年、東京都生まれ、慶応大学法学部卒業。
コンピュータ・プログラマーを経て執筆活動に入る。代表作である「帝都物語」シリーズは350万部のベストセラーとなり、87年に日本SF大賞を受賞。知識と興味は幅広く、博物学からITまで、古今東西の事象に対する博覧強記ぶりで知られる。2000年に行なわれた「インパク」では、総合案内などを担当する編集長をつとめた。
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2003年04月21日 第6回パーソナリティーの磨き直し