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SOHO人紹介第28回 火入れから5時間、薪窯で美味しいパンを焼きつづける
渡辺芳子さん。石の窯と薪で5時間かけて焼き上げる「薪窯パン・麦(muji)」を経営。12年の経験が生んだ手作りの美味しいパンと有機農素材の味を生かしたしっとりケーキで、リピーターも多い。年に数回、クラシックやジャズなど音楽イベントも開催している。
渡辺芳子さん
2005年10月31日

自分の楽しみから、必要に迫られてプロへ

太い薪で3時間、熱した窯は800度にもなる。パンから焼き初めて最後はラスク。自然に流れができている。

 薪窯パンとの出会いは12年前、八ヶ岳に遊びに行った時に窯と出会いました。もともと料理も食べることも好き。初めて味わったその美味しさと、石の窯と薪で焼きあげる面白さに惹かれ、自分でもやってみようと思ったのです。造形家の夫も面白がって、早速、庭に窯を作ってくれました。失敗を繰り返しながらある程度、焼けるようになるまで半年間、これならという焼き上がりができるまで2年ぐらいかかったと思います。当時は、純粋に自分の楽しみのために焼いていました。自宅の小さなホールで時々開いていた音楽会に集まってくれた方々にお出ししたり、ときには余熱で魚を焼いたり、鍋ごと窯に入れてシチューをを作ったりといった具合。「今日の焼き上がりはちょっと硬い。でも美味しいからいいかな」と笑っていられたのは、素人の強みだったと思います。

10年かけてつかんだ発酵と窯入れのタイミング

 薪窯パンは、パン生地が一番いい状態に発酵したときに窯に入れる、そのタイミングが決め手です。もちろん、パン生地の発酵時間も、窯がちょうどいい温度になるまでの時間も、季節や気温によって変化します。パン生地の発酵状態がちゃんとわかるようになり、窯にちょっと入れた手や投げ込んだフスマの焦げ具合で温度がつかめるようになるまでには、丸10年かかりました。窯に火を入れ、パンが焼き上がるまでの7時間はひとときも目が放せません。冬は3時、夏は4時に起きて窯に火を入れる。火を入れたらパン生地をこね始める、まず2回パンを焼き、次にケーキを3〜4回、最後にクッキーとラスクを焼く、とこれも6〜7年かかって自然に流れができてきました。この流れに添って自然体でやるのが、美味しいパンやケーキを焼きつづけるコツといえるかもしれません。それでもふっと気を抜いたり、うっかり油断してしまうと、発酵状態が微妙に行き過ぎるといったことも。奥が深いなとつくづく思います。

香ばしい、ミネラルたっぷりのパン。リンゴやバナナなど果肉入りのパンも人気。

 薪窯パンを焼くのは、火・木・土の週3回。スタッフはそれに合わせて来てくれる男性の他、「ときどき」のボランティアが3人手伝ってくれています。今度は煮炊きのできるカマドを作り、おいしいご飯や汁物など誰でも体験できるようなプランを考えています。

ホームページ開設のキッカケは、「雨の日対策」

静かな里山にある「麦」では、定期的に音楽イベントも開催。毎年、夏はここをステージに沖縄音楽の夕べが催されます。

 口コミなどで買いに来てくださるお客様も増え、数年前から始めた通販で販路も広がりました。それでもいつも完売できるとは限りません。不便な所ですから一番の悩みは、雪や雨の日です。アナログ世代なのでインターネットは何となく近づきがたい(笑)。二の足を踏んでいたのですが昨年、娘がホームページを作ってくれました。従来の通販は近距離中心でしたが、インターネットはやはり全国レベル。鹿児島や北海道から注文がくるようになったり、ホームページを見た方が自分のページで紹介してくださったりと、インターネットの力には正直、驚きました。「美味しかった」というメールをいただくのは、快心のパンが焼けたときと同じくらい嬉しいというのも新しい発見です。でも、手作りのパンですから生産量は限られています。お店に来てくださる方の分も確保しておかなければいけませんし、もっと注文が増えたらどうしようというのが、いまの嬉しい悩みです。

渡辺さんのある一日
タイムテーブル
3:30
起床
4:00
窯に火をいれる
9:00
パンを焼きはじめる
夕方まで、パンやケーキを焼いたり、接客
19:00
夕食の支度
23:00
就寝
SOHOスタート費用
最初は自分の楽しみでやっていたので、設備費はゼロ。自宅の一部を店に改装した費用程度。
サイト名
薪窯パン&ケーキ 麦 (muji)
店舗のある里山と薪窯パンのおいしさが伝わってくるホームページ。「麦」で開かれるコンサートなどの情報も掲載されている。ちなみに「麦=muji」は、渡辺さんの故郷・沖縄の言葉。
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