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SOHO人紹介第26回 立体で独自の世界をつくります
上村節夫さん。紙や粘土、金属、木、コルクなど多彩な材料を使い、独自の世界を創造する立体イラストレーター。グラフィックデザイナーの奥様と共同で「フィンズファクトリー」を設立、ホームページをショールームとして活用中。
上村節夫さん
2005年9月5日

30歳で独立、得意先ゼロからスタート

豊かな色彩と温かみのある雰囲気が持ち味。大きな作品は屋根裏にぎっしり収めてある。

 もともと空間的な広がりのあるモノが好きでした。それも学校で学んだ建築のような「スゴイ」ものより、自分自身の手で創り出す立体の世界に強く惹かれていました。卒業後は建築事務所に就職、ショップやレストランの設計は刺激があって楽しくはあったのですが、大きな組織の一部であることに限界も感じていました。そのかたわら粘土で好きな作品づくりを、いわば趣味で続けていました。趣味から仕事への切り替わりは、時間的にはゆるやかでしたが、行動では急。30歳のとき立体イラストレーション一本でいこうと決心し、いきなり会社を辞めてしまったのです。

 その時点では、取引先ゼロ。作品は友人たちに認められていた程度。コツコツ作り上げた作品の写真を収めたアルバムをもって、不慣れな営業に歩きました。ちょうど夏の盛り、汗びっしょりになりながら、電話帳から抜き出した広告会社やデザイン会社のリストに添って、一件一件訪ねました。目標は一日10件でしたが、実際は4〜5件でくたびれてしまった(笑)。それでも数週間はつづけたと思います。

 「展示会のポスター用に製品を利用したキャラクターを作ってほしい」と、大手塗装用品メーカーに依頼されたのが最初の仕事だったと思います。幸い、評判がよく、ゲーム機メーカーの雑誌広告など、ポチポチ仕事が入ってくるようになりました。初めのうちは気負いもあったのでしょう、思い切りいい素材を使ったら材料がギャラを上回ってしまったなんてこともありましたね。

締め切り前はずっと徹夜で「引きこもり」

 天井近くまである大きなモノから手のひらサイズの小品まで、この20年間、本当にいろいろな作品を作りつづけてきました。素材も粘土から紙、金属、木やコルクと、次々に新しいモノに挑戦しつづけています。同じネコというテーマにしても、素材が変わればイメージの膨らませ方も、道具や工程、技法もガラッと変わります。その都度、壁にぶつかってはまた超えていく。その面白さが、僕にとってエネルギーの一つになっていると思います。

大のネコ好き。飼ってきたネコたちや近所のネコをモデルに100匹のネコづくりに挑戦中。最もそのネコらしいポーズにこだわっている。

 どんなに気にいった作品でも、Aという仕事用につくった作品をBという仕事に使うことはまずありません。一期一会のようなものです。でも、数年前から手がけ始めたレンタル用の作品は、汎用性が前提となります。テーマからイメージを膨らませ、また絞り抜いていく通常の仕事とは、使う脳の回路もやや違うみたいです。個性を強く打ち出したとんがった作品をつくるより、ある意味難しいかもしれませんね。いろいろ場面で使われ、いろんな人に見えもらえるのは嬉しいけれど、それでも自分の感性に合わないテーマはダメ。チャレンジしたこともあるのですが、身体が拒否反応を起こし、気持ち悪くなってしまいました(笑)

 仕事も生活も、普段はマイペースののんびり屋ですが、締め切りが近づくと一遍してしまいます。大きな作品で一週間、小さなものでは3日前から仕事場にこもりきり。お腹が空くとその辺にある袋詰めの菓子を食べてごまかすという、はなはだ不健康な生活になります。仕事場からクルマで10分のところに運送業者の事務所があるので、その日の最終便が出発する15分前まで最後の仕上げに没頭してしまうのです。凝り性の上に、追い詰められと余計エネルギーが湧くタイプ。われながら困ったものだと思うこともあります。

ホームページは妻と二人のショールーム

 僕は典型的なアナログ人間ですが、妻はウェブ・デザインも得意なデジタル派。このコンビネーションのおかげで共同事務所は上手くいっているのかもしれません。自分ではITの基本的なことしかわからなくても、恩恵にはたっぷり浴しています。なかでも便利を実感しているのは、作品づくりの途中経過をクライアント(広告主)に見せられることですね。大きな作品では打合せにもっていけませんし、完成後に「ここはこうしてほしい」となるとお互いに時間の損失になってしまいます。途中経過の作品の画像をメールに添付して送れば、見ながら打合せができるので非常に効率的なんです。

奥様の千寿子さんはグラフィックデザイナー。夫婦共同の作品づくりも。

 もう一つ、便利だなと思うのは、ホームページを作品のショールームとして使えることですね。初めての仕事先やコンペに参加する場合は、自分の作品を紹介する資料を提出するのですが、一度貸し出すとまず半分は戻ってこないんです(笑)。でも、ホームページに載せておけば、気軽に見てもらうことができますし、紛失の心配もない。レンタル用の作品なら、文字通りショールームとして活用することができます。もちろん、作品を作るための資料収集にも不可欠。例えばリオのカーニバルなら、それに関した膨大な情報に加えて「今年のカーニバル」の情報が入手できる。最新の生の情報が得られることは、イメージづくりや作品づくりに大いにプラスになります。

 都会から郊外に引っ越してもう15年になりました。地域の活動に参加したり、妻や友人と自然に親しんだり、生活のゆとり度は随分あがったように思います。これからもマイペース・自分流でいくつもり。暮らしも立体イラストレーションも楽しんでいきたいと思っています。

上村さんのある一日
タイムテーブル
7:30
起床。メールチェック
8:30
家事。(締め切り前を除く)
10:30
自宅内の仕事場へ。一段落したらメールチェック。
1:30
作品の構想の考案や試作など。ネコのけんかの声が聞こえたので、水鉄砲で仲裁に。
17:30
気分転換をかねて買い物へ。
18:30
再び仕事場でメールチェック。資料調べ。
21:30
リビングで資料をチェック
26:00
就寝
SOHOスタート費用
仕事場は自宅内、道具類は以前から所有。スタートのための出費は、コピー機とファックスのレンタル代。月1万円程度
サイト名
フィンズファクトリー
立体イラストレーションとグラフィックデザインのショールーム。夫婦それぞれの作品をジャンル毎に紹介。問い合わせも受け付けている。
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