
一人一台が当たり前になってきている携帯電話。固定電話と携帯電話ではその生い立ちや仕組みに大きな違いがあります。今回から3回に分けて携帯電話にスポットライトを当てて紹介します。
2008年7月11日
携帯電話と固定電話の大きな違いは電話線があるかないか、という点です。固定電話では、音を電気信号に変え、電話線を使って相手に送り、再び電話機で声の形に戻します。携帯電話も基本的な仕組みは同じですが、電話線の代わりに「電波(電磁波の一部分)」を使うことで、電話線のない状態で通話ができるようになっています。
電磁波には1秒間に行なわれる電波の振動数「周波数」による分類が行なわれています。このうちの通信に適した周波数のものを一般に電波と呼んでいます。1888年、ドイツの物理学者「ハインリヒ・ヘルツ」が独自に開発した電磁波検出器を使って離れた場所で同時に火花を散らすという実験により、電磁波の存在を実証しました。このことから、周波数の単位は彼の名を取ってヘルツ(Hz)と名付けられました。

その後、この電磁波を使って、無線通信を行なう研究が盛んになります。これは、当時の有線ケーブル敷設の権利が米国のウエスタン・ユニオン電信会社に独占されていたこと、戦争によってケーブルが切断されることが頻発したこと、船舶では有線通信が使えないことなどが背景にありました。
無線通信を発明したのは、「ニコラ・テスラ」です。1893年に大気の上層部に存在する導電性の周波数帯域を使って電力を送信するという「無線電力送電実験」を実施します。しかし、ニコラ・テスラは論文をまとめず研究に没頭していたため、実験結果の発表が遅れたことから、このことは長い間認められず、後述するグリエルモ・マルコーニが無線通信の発明者とされてきました。
現在の無線通信の基礎を作ったのはイタリア人のグリエルモ・マルコーニです。1895年にはモールス信号を伝える電信を無線化し、約800メートルの距離の通信に成功、1896年にはアンテナとアースという仕組みを組み合わせることで2400メートルという長距離の通信を成功させています。1897年には無線通信会社(のちのマルコーニ無線会社)を設立、同年にはイギリスのブリストル海峡を横断する通信を、1899年にはドーバー海峡横断通信を成功させ、長距離通信の立役者となったのです。
1912年4月、タイタニック号沈没事故が発生し、世界で初めて緊急遭難信号(SOS)が発信されました。多くの犠牲者を出したこの事故により、無線通信の実用性が証明され、無線電信が広がるきっかけとなりました。

声を直接送る「無線電話」の実現には大きな壁がありました。それは音声を送っている間電波が安定して途切れないようにすることです。その解決に役立ったのが、1815年に開発された電灯「アーク灯」です。アーク灯は持続的に電波が発信されていると考えられ、さまざまな研究が行われ、1902年、オランダのヴァルデマール・パウルゼンにより実用的なアーク式無線電話が完成され、その後の発展が進められることになります。
前述したように音声を伝達する、という点では固定電話も携帯電話も同じ技術が使われていますが、携帯電話は受信機がさまざまな場所に移動することから、固定電話にない技術が多く使用されています。
おおまかに携帯電話の仕組みを紹介すると、携帯電話から発信・受信のための電波は、各携帯電話の端末のアンテナからビルの屋上などに設置されている「無線基地局」に集められます。無線基地局は電波の届く範囲(「セル」といいます)ごとに管理され、可能な限りつながらない場所がないよう隙間なく、また移動中にとぎれないよう若干重複するように配置されています。
そして基地局同士をつなぐ「交換局」(詳細はこちら)を経由して、各端末の位置を把握している「移動通信制御局」でまとめられ、分類されるようになっています。個々の携帯電話は常に電波を出し続けています。この電波には、個々の携帯電話の名前となる「機体番号」が含まれます。この機体番号を移動通信制御局が整理し、それぞれの携帯電話がどこにいるかが分かる「位置情報」をデータベースとしてまとめ管理しているのです。携帯電話のGPSサービスはこの位置情報を応用したものです。
携帯電話から電話をかけると、まず一番近くの無線基地局につながり、相手が固定電話であれば交換局を経由して接続、相手が携帯電話であれば、移動通信制御局が相手の携帯電話の位置情報から一番近い無線基地局を見付け出し、交換局と無線基地局を通じて会話ができるようになります。

携帯電話には、もう一つ特徴的な技術があります。それは、車や電車などで高速移動しても電話が切れないためのハンドオーバーと呼ばれる技術です。移動通信制御局は位置情報とともに、電波の強弱も判別しています。この電波の強弱から、携帯電話の移動先を予測し、隣接する無線基地局とスムーズにつながるよう調整しているのです。
ナガハタ トシヒロ
フリーライター兼編集者として、主にパソコン関連のレビューおよびテスト記事のライティングおよび雑誌編集を手がけるフリーライター。
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