このようにA社は少しずつ段階的にITを導入していきました。しかし、A社にとってこのIT導入はIT化そのものが目的だったのではなく、あくまでもいらない仕事を減らすために導入したのです。
例えば、iモードでのメールの受信は緊急時の連絡に役に立ちますし、また電子手帳と各種携帯ツールを利用することで、細切れの時間の有効活用が可能になりました。これにより報告・連絡・相談のための長い残業が減ったのです。
さらに、同社のIT化は顧客満足度の向上にも寄与しています。コールセンターでは、センターで受けた顧客からの電話に顧客データベースの情報を加えて、担当者のiモード携帯電話に送信します。これにより、担当者が外出中であっても顧客への連絡が圧倒的に速くできるようになりました。
もっとも、同社のIT化は初めから順調だったわけではありません。当初は否定的な社員もいました。しかし社長自らが率先してIT機器を使いこなしていたことと、IT化により業務がどんどん効率化していった事実から、順調にITが浸透していったのです。
このように、同社は無理なく段階的にIT化をすすめることによって、現在はトップクラスのIT活用企業に成長しました。
IT化自体が目的ではなく、「情報の共有」と「スピード化」という業務目的を達成するための道具として、ITを導入したことが成功の秘訣だったと言えます。その経営への貢献度は、IT化を始めてから10年間で売上高が3倍になったのに対し、内勤者は半分以下になっているという事実からも明白でしょう。