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ITで失敗しないケーススタディ
頭のよいIT導入法 第2回 業務改善なくしてIT導入なし
2005年4月25日再掲載
「人間のする仕事」の改善のコツ
 前回は「情報システム化」すれば「情報化」ができると思ってしまう誤解が、IT導入の失敗のもとであるという話をしました。言い換えれば、IT導入の前には情報の利用に関する人間が行う仕事の仕組みを改善しなければならない、ということです。そしてそれには、現在の仕事のあり方を徹底的に見直すこと、および情報の利用度を高めることが大切です。
ただし、その具体的な方法は業務のやり方や組織のあり方によってさまざまであり、一概にこうであるとは言えません。そこで、ここでは事例を挙げて説明しましょう。

 まず、仕事のあり方の見直しに成功した、ある精密加工の中小企業の事例です。この企業では、顧客の注文を受けてから出荷までに20以上の工程があるのですが、それぞれの工程ごとに担当者が自己改善案を作成しました。
 その改善の基準は「後工程はお客さま」というもので、後工程を顧客と考え、その顧客満足度を向上させるためには何をしたらいいか、を考えたのです。
 例えば営業部の部員であれば、組み立てに必要な部品を確実に手配するために部品発注の管理用シートの作成を提案するなど、ほぼ全員が自己改善案を出しました。そして社内における業務の流れをフローチャートとして書き、そこに改善案を貼り付けていったのですが、これにより仕事の流れの全体像が可視化され、それを全従業員が共有することができました。

 次に、これらの改善案について経営者がランク付けし、改善効果の高いもの、すぐに改善できるものから、着手していきました。このように業務のフローが明確になり、全従業員が情報を共有することができた段階で、各工程における管理情報をシステム化したのです。これにより工程間の在庫が減り、全体のリードタイムも短縮するという成果をあげられました。

システム化のタイミングはどこではかるか
 二番目は、情報の利用度を高めるのに成功した、あるリゾート地のレジャー施設の事例です。この施設では、全ての従業員がお客さまの声の窓口となっています。どのようなことかというと、遊具の貸し出し、案内、レストラン、清掃などの担当者が業務を通じて聞いたお客さまの生の声を情報カードに記入していくのです。そしてそのカードは、「苦情や不満」、「お褒めの言葉」、「要望や希望」の3つに分類され、その日のうちに責任者に届いて、緊急に対応が必要な案件はすぐに実行されるようになっているのです。
 このカードはファイリングされて誰でも閲覧できるようになっているのですが、このような仕組みは一朝一夕にできたものではなく、いくつかの試行錯誤や改善の末に完成したのです。そしてこの仕組みが全従業員に受け入れられ順調に運用された段階で、情報カードのファイリングをシステム化したというわけです。

 上記の2つの事例はいずれも情報システム化を急ぐことなく、まず業務の改善を行なってからシステム化を行なっています。精密加工のメーカーにしてもレジャー施設にしても、最初に情報システムを導入していたら、結果として誰も使わないものになっていたことでしょう。
 これらの事例を見ると、正しい計画性のあるIT導入こそが成功への近道であることをお分かりいただけると思います。

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柄沢 明久 (からさわ あきひさ)
・有限会社マネジメントクリエーション代表
・中小企業診断士、ITコーディネータ、1級販売士など
・東京工業大学 工学部経営工学科卒業

・主な実績
消費生活アドバイザー・コンサルタント協会会員活動委員副委員長、中小企業診断協会東京支部正会員、東京販売士協会常任理事、NPOサンフラワー21理事、中小企業総合事業団登録情報化推進アドバイザー。著書に『経営のヒント(埼玉新聞コラム)』、『SE/CTO/経営者のための戦略的IT経営(共著:カットシステム社)』多数。

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