
前回は「情報システム化」すれば「情報化」ができると思ってしまう誤解が、IT導入の失敗のもとであるという話をしました。言い換えれば、IT導入の前には情報の利用に関する人間が行う仕事の仕組みを改善しなければならない、ということです。そしてそれには、現在の仕事のあり方を徹底的に見直すこと、および情報の利用度を高めることが大切です。
ただし、その具体的な方法は業務のやり方や組織のあり方によってさまざまであり、一概にこうであるとは言えません。そこで、ここでは事例を挙げて説明しましょう。
まず、仕事のあり方の見直しに成功した、ある精密加工の中小企業の事例です。この企業では、顧客の注文を受けてから出荷までに20以上の工程があるのですが、それぞれの工程ごとに担当者が自己改善案を作成しました。
その改善の基準は「後工程はお客さま」というもので、後工程を顧客と考え、その顧客満足度を向上させるためには何をしたらいいか、を考えたのです。
例えば営業部の部員であれば、組み立てに必要な部品を確実に手配するために部品発注の管理用シートの作成を提案するなど、ほぼ全員が自己改善案を出しました。そして社内における業務の流れをフローチャートとして書き、そこに改善案を貼り付けていったのですが、これにより仕事の流れの全体像が可視化され、それを全従業員が共有することができました。
次に、これらの改善案について経営者がランク付けし、改善効果の高いもの、すぐに改善できるものから、着手していきました。このように業務のフローが明確になり、全従業員が情報を共有することができた段階で、各工程における管理情報をシステム化したのです。これにより工程間の在庫が減り、全体のリードタイムも短縮するという成果をあげられました。