Biz-IT News Letter 個人事業から中堅企業のお客さまの「ビジネスIT化支援サイト」 NTT Communications
いっちょやってみる!うちのIT化
【今月の訪問先】
ITコーディネータ 野村真実さん
(千葉IT経営支援LLP 理事長)

我が社の社員同士の連絡は、未だに電話を使うケースがほとんどで、ネットワークをうまく活用しているとはいえません。IT導入の基本的な段取りと、コスト削減に関連した話を聞き、こうした業務の不効率こそITを導入することで解決していくものなのでは、と考えるようになりました。そこで今回は、ITコーディネータとして活躍中の野村真実さんに、IT導入による業務の効率化について伺うことにしました。
「IT導入で業務を効率化」とはよくいいますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
TCQというキーワードで、メリットを考えてみましょう。TCQとは、時間(Time)、品質(Quality)、コスト(Cost)の3つをいいます。例えば、スケジュール管理ソフトを導入することで社員の予定が共有できるようになれば、わざわざ居場所を電話で確認するような時間のロスがなくなります=時間(Time)。意思疎通がスムーズになったことでサービスの品質が上がります=品質(Quality)。人の流れが効率化できてコストが削減できます=コスト(Cost)。このように「TQC」を意識してITを導入することで、課題はより解決しやすくなると思います。
とはいえ、業務を効率化するために、何から手を付ければよいのかわかりません…
まずは、自社の経営課題を明確にしましょう。会社や業種によって、在庫管理、生産管理など、それぞれ抱えている課題が違ってくると思います。これらの課題を整理し、優先順位を決めてみてはいかがでしょうか。そこから、さらに具体的な課題を探り、明確なものを出してみてください。
ちなみに中小企業の経営者の方へ経営課題を聞いてみると、ほとんどの会社が「情報の共有化」を挙げていらっしゃいますね。
「情報の共有化」、ですか?
はい。多くの中小企業では、経営に関する情報を経営者だけが持っていて、トップダウン方式で部下に伝えています。ただ、このやり方ではおよそ効率的でありませんし、次の経営者を育てることが難しくなります。こういった課題を解決するためには、経営者が持っている情報や知識、方針などを他の社員と共有することが大切なんですね。
経営者が持つ情報を共有することで、何が変わるのでしょうか?
それは、社員の意識です。経営者の多くは、経営コンサルタントや知り合いの社長など独自のネットワークから情報を得て、それをもとに自社の方針を決断していることが多いようです。そのエッセンスを社長が事前・事後に公開することで、社員は「社長の真意はどこにあるか」「どうしてその方針が決まったのか」をくみ取ることができるんですね。そして、経営者の持つ「発想の源」を共有することで変わってくるのが、社員の意識というわけです。
そうしたことは、ITを使わなくてもできるような気がしますが・・・
そうですね。しかし、ITを使えばより効率のよい伝達が可能だということなんですね。経営者はなにぶん忙しい方が多いですから、全ての社員と密に連絡を取る時間はありません。しかし、ITを使えば情報の共有をより簡単に正確に行うことができます。
ある中小企業のカリスマ社長さんは、ボイスメール(メッセージを吹き込んだ音声メール)を利用して、自身の考えを随時、全社員へ発信しているそうです。シンプルな方法ですが、情報共有の面ではかなり有効ですよね。
なるほど、こうしたところからも効率化ができるんですね。ところで、経営課題を挙げる際、注意すべき点はありますか?
それは「夢」を持って取り組むことですね。これはけっこう大事です。最終的な目標は、業務の効率化のみならず、皆が利益を上げて幸せになることですから、その思いは忘れないようにしたいですね。
経営課題がはっきりした後は、どのように進めたらよいでしょうか。
実際の業務における課題の洗い出しをしてみましょう。全ての社員から、考えられる業務上の課題を漏れなく挙げてもらいます。この際に注意すべきポイントは、解決方法まで一緒に出さないことです。そこまで言い出してしまうと、現場はただ混乱してまとまらなくなることがほとんどですから。
業務上の課題が多すぎて、まとまらないときもありそうですが・・・
常に経営課題、あるいは経営者の夢と照らし合わせて考えれば、方向性が定まってうまくまとまっていくと思いますよ。
業務上の課題が出揃ったら、それがぜひともITで解決しなくてはならない重要な課題なのかどうかを見極めましょう。
対処すべき業務課題がわかったら、いよいよITの導入ですね。
実は、その前にやっておくべきことがあるんです。それは、組織のミッションと社員個人の役割を明確にしておくことです。そしてIT導入後は、それぞれがどのように変化するのかをイメージしておくとよいと思います。
業務を効率化する場合、現在の組織体系や命令系統が現状のままでいいのか、といった部分まで踏み込むことがあります。脅かすわけではないのですが、この場合、組織の見直しにまで発展する可能性もありますので、そういったことも頭に置いておくことは必要です。
ITを導入することで、社内体制まで変わってしまうんですか?
そういう場合もあるということです。例えば、今まで2人でこなしていた業務が、1人で済むようになった場合、手の空いた1人を人手が足りない部門に配置換えしたり、新しいセクションを作るといったことが必要になるかもしれません。極端な話、部署そのものが不要になる、なんていうことも考えられます。もしそうなったとき、社員に大きな不安を抱かせないように、その際の体制を新たにデザインし直すことを念頭に置いておくことが必要なんですね。
社内体制を見直すときは、社員にどう対応したらよいでしょう?
業務の効率化は、会社の成長を生み出すためのものであることを、全ての社員に意識づけることが大切ですね。今まで2時間かかっていた業務が、ITの導入により1時間30分で終わるようになったら、できた30分の余裕を次の戦略を練るための時間として活用できる、といったことを理解してもらうことが必要です。
ただ「仕事が楽になるから」だけで進めると、導入して1年か2年たてば、その状態が当たり前になってしまいます。社員の意識自体を変えることで「我が社の発展のためなら」という発想で、個々が業務に取り組むことができるのでモチベーションも維持でき、本当の意味で業務の効率化を果たすことができるのだと思います。
ITの導入時、注意することはありますか?
私が中小企業にIT導入のご相談を受けた際には、最新の技術やシステムはあまりお勧めしていません。もちろん、そのケースによって最新のものがベストということならばお勧めしますが、基本的にはある程度は古くてもよいので、信頼性があって広く使われている技術の導入をアドバイスしています。
それはなぜですか?
まず、登場から日がたっており、実績のあるシステムを導入した方が、コストが安く済むということが挙げられます。また、広く使われている技術なら、それだけ情報量が豊富ですから、現場の担当者も無理なく使いこなすことができるんですね。このように、中小企業では"使い込まれた"技術のほうが効率よく機能すると思います。
私自身、ITに詳しくないので、どのシステムが合うのかよくわかりません
確かに、いきなり大掛かりな基盤システムの導入なんていうと、大変ですよね。まずは、グループウェアなどのお試し版を利用してみてはどうでしょうか。
スケジュールの共有、社員の成功事例・失敗事例などのナレッジ(知識)の共有が実現できます。実際に使ってみることで、業務の効率化を実感することができると思いますよ。ただし、お試し版とはいえ、導入に際してはきちんとした目的を持ちましょう。なんとなくお試しで使いましたでは、最終的に「面倒なだけ」「意味がない」という意見が出るなどして、逆効果になりかねませんので。
導入後、効果はどのように見極めればよいでしょう?
最初の計画を立てる段階でチェックリストを作っておきましょう。ITを導入したら、これだけのことが実現できるという目標を可視化しておくのです。導入後はチェックリストに従って経過をモニタリングすれば、効果のほどが見えやすくなるでしょう。また、導入作業を進めていく際、何をやりたかったのか本来の目的を忘れてしまうことがしばしばあります。そのたびにチェックリストに戻れば、軌道を外れる心配も少なくなると思います。
実際のところ、ITの導入でどれだけの効率化が達成できたら成功と呼べるのでしょうか?
経営課題の50%がクリアできていれば、御の字ではないでしょうか。大切なことは、プロジェクトを正しく運営することです。新たな課題が出てきても、正しいやり方でプロジェクトに取り組んでいれば、いずれ残りの50%もクリアできるはずですから。せっかく実現した高い効率性を保つためにも、常に新しいプランを考える姿勢を保つことが大切です。
IT導入の際、社内体制を整えるために経営者がすべきことはありますか?
プロジェクトに名称を付け、ぜひ、経営者自らが社内の認知活動の先頭に立ってください。何のためのプロジェクトなのか、期間はいつまでか、誰がどの役割を担当するのかなどを広くアピールしましょう。また、IT導入の担当者は、組織体制を見直したり、社員が嫌がることをお願いしなければならないため、どうしても孤立しがちです。ですから、社長の役割は担当者をフォローしつつ、「業務を効率化すれば、これだけよいことがある」と社員に期待感を持たせながら、プロジェクトをコーディネートすることです。プロジェクト会議においては各部門長を集め、全員合意の上で進めればスムーズに運ぶと思います。何事にも根回しが大切ですね。
誰かに相談したいときは、どうしたらいいでしょうか?
あなたの会社が属する業界や業種をよく知っているITコーディネータに相談してみてはいかがでしょう。業界に詳しければ細かい話が通じやすいでしょうし、コーディネータの個人的なネットワークも活用できると思います。一口にITコーディネータといっても、中小企業が得意な人、要件定義や設計など上流工程が得意な人等々、さまざまなコーディネータがいますので、あなたの会社に合ったタイプの人を選びましょう。「ITコーディネータ協会」のホームページには検索システムが用意されていますので、ぜひご活用ください。
ITコーディネータ協会
[ http://www.itc.or.jp/ ]
ITを導入した業務効率化のイメージがつかめました。ありがとうございました。
【千葉IT経営支援LLP 理事長 野村真実】
経済産業省推進資格 ITコーディネータ・インストラクター
経営学修士(MBA/KM専攻)
中小企業大学校東京校 講師
「いっちょやってみる!」 と思った方へおすすめのサービス!
【OCNグループウェア】
http://www.ntt.com/bizit/service/internet/groupware/index.html
ITパワーマガジン好評連載中!



今月のテーマは「業務効率化」
この春から社員増、気づけば仕事倍増…
情報共有で効率UP、グループウェアで乗り切れ!
「いっちょやってみる!うちのIT化」バックナンバー
2007年4月号 第1回 「うちのIT化、何からはじめたらいいの?」(システムコンサルタント 宮本誠之さん)
2007年5月号 第2回 「コスト削減を生み出す!会社を持ち上げる攻めのIT化」 (ITシニアアナリスト 伊嶋謙二さん)
2007年6月号 第3回 「業務効率化で企業の未来を創造する時間をつくろう! 」 (ITコーディネータ 野村真実さん)
2007年7月号 第4回 「あなたのPCも狙われている?!夏期休暇前のセキュリティ対策」 (サイバー大学 IT総合学部准教授 園田道夫さん)
2007年8月号 第5回 「キーボード操作を極める!業務を効率化させるPCテクニック 」 (ITコンサルタント/Webマーケティングディレクター 後藤暁子さん)
2007年9月号 第6回 「企業の規模は関係ない!中小企業の人材確保大作戦」(人事コンサルタント 樋口弘和さん)
2007年10月号 第7回 「ビジネスブログをはじめよう!活用のポイントと運営のコツ教えます」(ビジネスブログプロデューサー 白石 崇さん)
2007年11月号 第8回 「ITコンプライアンスってなんですか?“遵守”意識の向上が会社とあなたを守ります 」(弁護士 田島 正広さん)
2007年12月号 第9回 「上手に使って売り上げアップ!中小企業が取り組むネットマーケティング」(webマーケティングコンサルタント 渥美 英紀さん)
2008年1月号 第10回 「ネットの波を乗りこなせ!今すぐ役に立つ検索テクニック 」 (テクニカルライター 水野 貴明さん)
2008年2月号 第11回 「『見えないコスト』ってなんですか?知れば回避できるIT業務のコスト・トラブル 」 (企業IT化コンサルタント・プロデューサー 宮下 徹さん)
Copyright(c) 1999 NTT Communications