業務を行う上で、ミスを起こしてしまうことは誰にでもあることです。しかし、ミスをした分、その修正には手間も時間もかけなければなりません。自分の仕事の中でミスを減らすことは、業務効率を上げるためにも必要なことですね。今回は、「オフィス事務の上手なすすめ方」の著者である、事務効率化コンサルタントのオダギリ展子先生に、効率的に日常業務を行うためのコツなどについてお話を伺いました。
「事務業務の効率化を進める」というと、会社全体をシステム化しなくてはならないようなイメージがありますが、私が考える事務業務の効率化は、決してそんな大掛かりなものではありません。日常で行っている細かい業務からミスにつながる問題点を見つけて、ひとつひとつ改善していく。その集大成が「オフィス事務の効率学」です。
ミスをしてしまうと、それを訂正するためのムダな時間が発生します。そうしたムダな時間が少なくなれば、その分だけ他の仕事も早く進み、結果として「効率的な業務運営」を可能にすることができます。これが私の「効率化」に対する考え方の基本です。
業務を行う上で、まず自分が今どんな仕事を抱えているのか、状況を正しく理解することが大切です。その中で基本となるもののひとつにスケジュール管理があります。私が日頃から実践しているおすすめのスケジュール管理は、ひとつの作業を「案件ごと」と「時間ごと」の二重の方法で見ていくことです。
案件ごとの管理とは、例えば「案件書類に処理の期限日を書いた付箋を貼り、見えるところに保管する」という方法。そして、時間ごとの管理とは「一日の作業予定を日ごとにまとめたメモを作る」という方法です。こうすれば、案件書類に貼った付箋と、手元のメモを照らし合わせることで、その日にやるべき仕事を目で見て再確認できますし、万が一どちらかに見落としがあったとしても、もう一方の情報でフォローすることが可能となります。また、急に誰かに作業を代わってもらう場合でも、すぐに状況を把握してもらうことができます。
このように二重で業務を管理すれば、ミスの起きる可能性をぐっと減らすことができるのです。
そして、書類作成や入力などの作業が終わったときは、忙しくても自分がしたことを必ずもう一度見直す習慣をつけましょう。この確認作業は、ミスを防ぐために最も重要なことのひとつだと思います。
何も新たに道具を揃えたり、特別な技術を身につけたりする必要はありません。皆さんが普段から行っている作業にひと工夫するだけで、ミスを減らし、業務を効率化することが可能です。そのひと工夫とは、道具の使い方をちょっと変えたり、ルールをちょっと設けるというような簡単なこと。少し発想を転換させるだけで、うっかりミスの可能性を減らすことができます。
例えば、「書類を切る」という発想の転換はいかがでしょうか。伝票類の場合、「注文済み」「出荷済み」といった進行状況に沿って、紙の四隅を順番に切り取っていきます。このとき、伝票のどの角を切り取るか決めて情報共有しておけば、ほかの人もその伝票について、どの段階まで終わっているかが一目で確認できますね。伝票へハサミを入れることに抵抗があるのでしたら、蛍光ペンで色をつけるのもよい方法です。中でも黄色の蛍光ペンは、コピーをしたときに跡が残りません。この黄色の蛍光ペンの特性は、アイデア次第でいろいろなところに使えるのでおすすめです。このほかにも、テクニックはたくさんあるのですがここでは紹介しきれませんので、ご興味のある方は、私のサイトか著書をご覧になってみてください。
【オフィス事務の効率学】
http://www.office-jimu.com/
忙しいときほど、情報の伝達ミスは起こりがちですね。不在の人に用件などを伝えるためによく使うのがメモ書きですが、このメモの取り方にもひと工夫してみましょう。例えば長い時間、席を外している人のためには、1枚に複数の件数を記入することができる専用のメモを用意します。こうすれば読む人、書く人、両方の手間を省くことができ、小さなメモを何枚も渡すことがないので紛失も防げます。
社内の伝達事項については、パソコンを使って「共有フォルダ」や「メーリングリスト」などを活用している方もいらっしゃるかと思います。しかし、パソコンを見る機会が限られている人がいる場合は、誰もが使える「回覧板」のほうが便利ですね。回覧板をまわすときには押印欄のある用紙を添付し、目を通した人は自分の欄にハンコを押すようにすると便利です。その際、押印欄の順序を座席の配置と同じにすれば、どの席の、誰がまだ見ていないのかが一目瞭然となるので、さらに効果的です。
【長時間席を離れる人への電話メモ】
【座席表付きの回覧版】
今まで私が申し上げてきたことも含め、自分が担当する業務について作業ごとのノウハウをマニュアルとしてまとめておくことをおすすめします。複数の人数で行う作業の場合には、共通でひとつのマニュアルを用意しましょう。状況の変化にあわせて更新していけば、常に最新版が手元にあることになりますから、困ったときにすぐ参照することができます。また、担当が代わったときにも、次の人にマニュアルを渡してあげれば、引き継ぎもスムーズにできますね。
年度末は忙しいですが、行う業務は毎年決まっているものがほとんどです。基本的なことですが、予測がつく内容の業務は早めに準備をしておきましょう。作業全体を管理する方は、現場が混乱しないようスケジュールを調整し、可能ならば社内だけでなく、お取引先にもご協力をお願いできるとベストですね。
忙しいときほど、人と人とのコミュニケーションがポイントになることがあるように思います。社内外に関わらず、仕事でお世話になる方とは常に良好な関係を築いておくことも大切ですね。
年度末に発生する業務をうまく処理するためにも、やはり日頃から行っている業務の効率化は大切です。ご自分に合った方法を見つけて、小さなところから業務の効率化をはかり、時間的にも気持ち的にも余裕のある年度末を迎えてください。
私が事務の仕事について15年以上になりますが、その間、特許事務所をはじめ、さまざまな職場で働いてきました。その経験から感じることなのですが、上司や経営者の皆さんにもっと現場を知っていただくことで、さらに業務は効率化できるのではないかと思います。
私の経験では、課長さんまでは実際の作業を把握されていらっしゃる方は多いのですが、それ以上の役職の方になると、それはなかなか難しいようです。現場の空気に触れる機会が減ってしまうのも事実ですので、仕方のないことだとは思いますが、それでもできるだけ部下の方とコミュニケーションをとる機会を作り、今行われている仕事への理解を深めていただければと思います。そして、現場の監督となっている方は「それぞれの作業にどれだけの時間と労力が必要なのか」「特定の人にだけ仕事(量)が偏ってないか」「何か不都合はないか」などといったことも把握していただいた上で、それを分析し業務に反映するだけでも現場はもっと働きやすくなり、また、業務をぐっと効率化することができるようになると思います。
現場を理解してくれる上司の存在はうれしいものです。以前、一緒にお仕事をした上司で、「会社にいる時間が一番長いのだから、楽しく働きたい」という考えをお持ちの方がいらっしゃいました。何をどうすれば現場がやりやすくなるか、そして皆は楽しく働けているのか、常に気を配ってくださっていたのです。このことで実際の業務を効率化できたことはもちろん、私自身もモチベーションを高く保ったままお仕事をさせていただいた経験があります。
また、日々の業務の中で、自分では分からないことや、判断しかねることをお伺いした際に的確な判断と指示をされる上司の存在というのは本当にありがたいものです。緊急時や有事の際は特にそう思います。
「企業は人なり」とはよく言われることですが、その一人ひとりである上司や経営者、そして部下である私たちが、互いにコミュニケーションを取り合って業務を遂行していける職場というのは理想の職場です。そのためにも、上司や経営者の皆さんには、ポジティブかつ柔軟な姿勢で対処していただけると、部下としては本当にありがたいですね。
オダギリ展子:事務効率アップのヒント満載のサイトと著書
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ITパワーマガジン好評連載中!
今月のテーマは「業務効率化」
年度末に備えろ!電子納税で経理処理も超簡単に
「プロに聞く!先生教えて!」バックナンバー
2006年5月号 第1回
「新会社法」って、なんですか?(中小企業診断士 山本哲史先生)
2006年6月号 第2回
これだけは知っておきたい著作権(行政書士 名倉喜一先生)
2006年7月号 第3回
ネットでできる人材募集(キャリアコンサルタント 木内紀子先生)
2006年8月号 第4回
知ってお得、行政による支援策(長官官房広報相談室 室長 白川一雄先生)
2006年9月号 第5回
今すぐ始める情報セキュリティ対策(セキュリティ・コンサルタント/中小企業診断士 井上きよみ先生)
2006年10月号 第6回
企業のIT化でコスト削減を目指すには(特定非営利活動法人 OCP総合研究所 理事長 桑山義明先生)
2006年11月号 第7回
日常業務の効率化で年末を乗り切る(経営コンサルタント 田村健二先生)
2006年12月号 第8回
ネット犯罪から会社を守るために(IPAセキュリティセンター 研究員 加賀谷伸一郎先生)
2007年1月号 第9回
中小企業が取り組む広告宣伝(PRコンサルタント 伊藤雄一郎先生)
2007年2月号 第10回
ミスを減らして業務を効率化〜オフィス事務の効率学〜(事務効率化コンサルタント オダギリ展子先生)
2007年3月号 最終回
経営自己診断のポイント(中小企業診断士 福島正人先生)