このページの本文へジャンプ

文字の大きさ

ここから本文です
読んですぐ分かる!カンタン経済教室

「1円株式会社」で事業を拡大しよう!

2004年03月22日
もしかして新聞などですでに目にしている人もいるかもしれない、「1円起業」制度。

これってどういうこと?と思った人も、すでにリサーチを始めている事業主も、個人事業との違いは何なのか、そしてどのような人に向いている制度なのか、この機会におさらいしておきましょう!

 

「1円起業」で企業巣立つ
一円しか元手がなくても会社をつくれる最低資本金規制の特例制度を利用し発足して、短期間で特例を「卒業」する企業が増えている。(中略)昨年二月の制度施行から約一年で利用企業は八千社を超えた。同制度はベンチャー企業の「ふ化器」として定着しつつある。
(日本経済新聞 2004年2月4日)
1円で株式会社が設立できる!?
 1円で株式会社が設立できるという話を聞いたことがあるでしょうか?

 本来、会社を設立するときには、株式会社で1,000万円、有限会社で300万円の資本金が必要です。この資本金が用意できないために、会社設立をあきらめていた人も多いのではないでしょうか?

 ところが、「中小企業挑戦支援法」に定められた「最低資本金規制の特例制度」を利用すると、なんと本当に資本金が1円で会社が設立できてしまうのです。この特例によって設立された会社は「確認株式会社」「確認有限会社」と呼ばれています。

 2003年2月の施行から約1年で、利用者は8,000社を超えています。国内で設立される会社は年間約8万5,000社といわれていますから、実に全体の1割近くがこの特例を利用しているということになります。

個人事業との決定的な違いは「信用力」
 資本金が1円で設立できるといっても、ずっとそのまま放っておいていいわけではありません。この特例を利用した場合には、5年以内に増資をして、本来の最低資本金規制を満たさなければならないのです。

 また、設立の手続きには、資本金とは別に印紙代や登録免許税など、株式会社の場合で約30万円、有限会社の場合で約20万円の費用が必要になります

 それでも、確認株式会社を設立することには、これらを上回るメリットがあると考えてよいでしょう。

 個人事業との最大の違いは、なんといっても「信用力」。確認株式会社であっても、社名に「確認」という文字が入るわけではありませんので、社名の上では通常の株式会社とまったく同じ。名刺ひとつをとっても、「株式会社」の冠をつけた社名が印刷されているだけで、会社組織で事業を行っているのだという信頼感、安心感を与えることができます。

税金面でも多くのメリットがある!

 個人事業の場合、仮に負債を抱えてしまったときの責任は本人が負うことになります。一方、確認株式会社の場合、負債に対する責任は会社が負います。つまり、株主や出資者には出資額以上の責任は及ばないことになっています。

 このほか、税金の計算時に損益が通算できること、税率が累進課税でなく一定であることなど、確認株式会社には税金面でも多くのメリットがあります。

 さらに、確認株式会社は個人事業に比べ、経費として計上できる範囲も広くなっています。

 たとえば、個人事業の場合には、収入から必要経費を差し引いた額が所得となりますが、確認株式会社では、自分自身に支払った給料も会社の経費に計上することができます。そのうえで、もらった給与から給与所得控除を差し引くことができるのです。

個人事業と確認株式会社の違い
個人事業 確認株式会社
資本金 不要 必要(1円以上1,000万円未満)
商業登記 不要 必要
名称 屋号のみ 「株式会社○○」などとできる
負債の責任 本人が負う 会社が負う
税金 所得税、住民税など 法人税、事業税など
(ただしいろいろなメリットがある)
信用力 低い 比較的高い
1円だからといって安易な起業は禁物!
 「アイディアには自信があるんだけど、会社を設立するだけのお金がない」「会社を設立してとにかく一旗上げたい」。……そんな人にとって、1円で株式会社が設立できることは嬉しい特例といえるでしょう。

 ただし、この特例による最低資本金規制の免除は、あくまでも5年間という期限付き。5年以内に増資が完了しないと、合資会社や合名会社に組織変更するか、解散しなければなりません。「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、だからといって安易に制度に飛びつくのはよい結果をもたらしません。本当に5年以内に増資を終えることができるのかをじっくり考えてから、設立手続きに臨むことが大切です。

実際の設立手続きを見てみよう
 では、実際に確認株式会社を設立するには、どのような手続きが必要なのでしょうか?
 最初にするのは、会社の「顔」となる商号(社名)、本店、目的を決めること。本店が決まったら「類似商号の調査」をします。商法・商業登記法では、同一の市町村内で同一の事業を行っている他人の商号と同一または類似の商号を登記することはできないと規定されているからです。

 次に、印鑑を作成し、発起人会を開催します。定款を作成し、公証役場に持っていって定款の認証を受けます。ただし、この場合の「発起人」には創業者であることなど要件がありますので、前もって確認をしておきましょう。

 ここまでたどり着いたら、あとはもう少し。経済産業大臣の「確認」を受け、出資金を払い込み、取締役や監査役を選任します。登記申請書を提出して会社の登記が完了すれば、晴れて会社としてスタートを切ったことになります。

活かすも殺すも経営手腕次第!
 確認株式会社設立の申請をする会社には、2つのタイプがあるといわれています。

 ひとつは、あらかじめ綿密に事業戦略を立ててから会社を設立するタイプ。そしてもうひとつは、とりあえず会社を設立してからチャンスをうかがうというタイプです。

 特例の施行から1年。最低資本金規制を満たして特例から「卒業」した会社は300社近くに上ります。これらの多くは、実効性のある事業戦略と法人化による信用力強化の相乗効果によって設立直後から売上を伸ばした会社です。

 つまり、スタートが1円であれ、1,000万円であれ、明確なビジョンをもって事業を展開している会社が成長するという点には変わりがないのです。

 政府は現在、この特例制度に加えて、最低資本金規制の撤廃を盛り込んだ法案の国会提出へ向けて準備を進めているようです。政府が意欲ある起業家をバックアップするという追い風はまだしばらく続きそうですが、これらのチャンスを本当にものにできるかどうかは、起業する側の経営手腕にかかっているのです。

バックナンバー
<< 前の記事
大竹のり子
(AFP・2級FP技能士)

1975年6月14日生まれ。
大学卒業後、社会科学系の出版社で書籍の編集に携わる。2000年10月、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会にファイナンシャル・プランナー(AFP)として会員登録。退職後、フリーのエディター&ライターとして活動を開始。現在、FPとしての技能向上に努める傍ら、幅広いFPの分野にわたり書籍の編集や雑誌のディレクション、執筆を行っている。現在、ファイナンシャルプランニングの情報サイト“FPwoman”を運営中。

大竹のり子
他の連載はこちら