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e-Japanはビジネスをこう変える第1回 e-Japanの目指すもの

2004年06月21日

効率化や顧客満足に切り込む電子政府

 どこの国に行っても大抵「お役所仕事」を意味する言葉が存在します。それが正式な単語として認知されているか、スラングか、といった違いはありますが、お役所で行われている仕事は形式的で非効率だという思いは世界的に共有されているようです。

  そしてそうした認識があれば、それを是正してやりたいと思うのが人情です。
 そのために、今までにも役所へのコンピュータシステムの導入などがなされてきました。しかし、これらの努力は非常に個別的だったのです。公務員一人ひとりにパソコンを与えれば飛躍的に効率が上がるほど業務は甘くありません。そもそも手作業で効率的な作業手順と、パソコンを使ったときに効率的な作業手順は異なります。単純に手作業をコンピュータで置き換えただけでは役所の仕事の体質は変えられません。

 そこで、どうせやるのなら行政の仕事のほとんどを電子化してしまおう、それも個別にちょこちょこやるのではなくて、ある一部分を見ると非効率なようでも全体を見渡したときに一番効率がよくなるように設計図を引き直そう、という取り組みが行われるようになってきました。これが「電子政府」と呼ばれるものの基本的なアイデアです。

 電子政府というと、役所がWebサイトを作って情報公開をするとか、住民票の申請がそこでできるとかいうイメージが先行しています。もちろん、そうした要素もあるのですが、一番の肝はお役所仕事の中核(民間企業で言うバックエンド、基幹システムです)を効率的なプロセスで業務再構築しよう、そしてそれを透明性のあるわかりやすいものにして、評価の尺度として民間企業でいうところの顧客満足度なども入れていこうということなのです。こう考えると、「電子政府」が少し身近なものに感じられるのではないでしょうか。

日本の電子政府

 そして、この「電子政府」構想を日本の中で具体的に推し進めていくためのプロジェクトがe-Japanです。これは突然出てきた用語ではなくて、平成6年の「行政情報化推進基本計画」から、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」→「ミレニアム・プロジェクト」→「IT基本戦略」→「e-Japan戦略」→「e-Japan戦略II」と脈々と受け継がれてきたものです。

 e-Japan戦略では当初から、日本を5年以内(平成13年の話です)に世界最先端のIT国家にするという目標が掲げられていましたし、そのための指標として5年以内に1000万世帯を超高速インターネットアクセス網(この時点では光ファイバ網を指しています)に常時接続させる、といった具体的な数値が出てきていました。これは国民生活をも巻き込んだ目標ですから、e-Japanは狭義の電子政府を包括したもう少し広い概念だということもできます。

 電子政府というのが顧客としての国民の満足度を上げる手法だとすれば、お客側にもサービスを享受するための準備が必要なわけで、電子政府はそれらも含めたものであると考えれば、ほぼe-Japan=電子政府と捉えてもよいでしょう。
 例えば、携帯電話サービスがどんなに素晴らしいと思っても、それを利用するためには顧客側が携帯電話を買って用意する必要があります。サービスを享受するためには顧客もそれなりの準備をしなければならない、というのは一般的なビジネスの世界にも当てはまることです。ここで肝心なのは準備のために費やす労力やコストが適正な範囲内を超えないようにコントロールすることです。

国民は何をすればよいのか

 それでは電子政府のお客(国民)は何をすればよいのでしょうか。日本政府はe-Japanの中で次のようなことをしようとしています。
行政部内の情報化
官民接点の情報化
共通的基盤の整備

 “行政部内の情報化”は狭義の電子政府の話でした。“官民接点の情報化”がいわゆる行政ポータルサイトなどで、届出手続の電子化やワンストップサービスで注目されているところです。お客としての立場にも色々ありますが、個人ならいざ知らず、事業者としては役所のホームページで住民票が取れてもあまり嬉しくありません。
 しかし、この“官民接点の情報化”には電子調達などの条項も盛り込まれており、例えば行政府案件の入札などは事業者側の業務も電子化されていないと参加できなくなってしまうかもしれません。同時に入札プロセスの透明化なども行われますから、これを好機と捉えればビジネスチャンスが大きく開けることになります。

 “共通的基盤の整備”としては中小企業の売掛金回収リスク軽減システムや電子手形サービス、テレワークの環境整備などが提案されており、従来コストなどの点で中小企業が独自には導入しにくかった業務環境が適切な価格で利用できる可能性があります。また、位置情報サービスなどのサービスをうまく組み合わせれば、ここでも新たなビジネスチャンスが開ける可能性があるでしょう。中小企業を活性化して日本を元気にしようというのは、e-Japanの重要な目標の一つなのです。

 では次回から、e-Japanが中堅企業にどのような影響を与えるのか、どのようなビジネスチャンスが生じるのか、見ていくことにしましょう。

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岡嶋 裕史 (おかじま ゆうし)
中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。 富士総合研究所勤務を経て、関東学院大学専任講師。 Webサービス・イニシアティブ技術部会副部会長。