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インターネット法制度を知る!なりすましによる意思表示のなりすまされた本人への効果帰属って?

2007年05月28日

前回のおさらい

 前回は、経済産業省が定める「電子商取引等に関する準則」(以下、「準則」という)に規定の「ウェブサイトの利用規約の有効性!」についてリポートした。売り手と買い手が対面しない電子商取引において、利用規約はそのルールを定めたものとして利用規約が非常に重要な意味をもつことをあらためて再認識いただいたと思う。さて今回は、電子商取引を行う際に消費者からよく聞かれる「なりすまし」についてリポートしたい。

「なりすまし」の場合、なりすまされた本人の責任は?

 電子商取引を行うにおいてよく聞かれる質問のひとつが「なりすまし」である。準則ではこの問題について「なりすましによる意思表示のなりすまされた本人への効果帰属」(出典、「電子商取引等に関する準則」。以下同じ)として取り上げている。

 さてこの問題であるが、準則は、「いわゆる『なりすまし』が行われた場合、なりすまされた本人が責任を負う場合があるか」(出典、同じ)という論点を設けたうえで、実際に「問題となるのは、主に決済の場面」(出典、同じ)であるとしている。

 具体的には「クレジットカード決済やインターネットバンキング決済のように、消費者側から見て、商品購入と代金決済で相手側が異なる場合、複数の当事者間における法律関係がどのようになるかという複雑な問題が生じる」としている。つまり、単に売主(電子商取引事業者)と買主(消費者)だけでなく、決済事業者など第三者の存在が問題を複雑化させるということになる。

 この点について、準則では、「このような場合、(i)なりすまされた本人と販売店(売主)との法律関係、すなわち、なりすまされた本人と売主との間の契約が成立しているかどうかと」(出典、同じ)としてまずは契約成立の可否の課題をとりあげている。次に「(ii)なりすまされた本人と決済機関(カード会社・銀行)との間の法律関係、すなわち、決済機関はなりすまされた本人に代金の支払請求をすることができるか(又はなりすまされた者の指示に従ってなされた振込は有効か)がそれぞれ問題になる」(出典、同じ)として、決済機関との関係に言及している。

■なりすまされた本人と売主との間の契約
 なりすまされた本人と売主との間の契約について、準則では本人確認の方式について「事前合意がない場合(1回限りの取引)」と「事前合意がある場合(継続的取引)」をあげ、前者については「原則として本人に効果は帰属しないので、本人と売主の間で契約は成立しない」(出典、同じ)、後者については「原則として本人に効果は帰属し、本人と売主の間で契約は成立する」としている。(但し例外もあり)

■決済機関によるなりすまされた本人への代金の支払請求
 決済機関によるなりすまされた本人への代金の支払請求について、準則では「クレジットカード決済」と「インターネットバンキング決済」をあげて、前者については「なりすまされた本人に責任がある場合」は「なりすまされた本人に支払い又は賠償責任がある」とされ「「なりすまされた本人に責任がない場合」は「なりすまされた本人に支払い義務はない」(出典、同じ)とされている。また後者については「通常、約款で本人確認の方式について事前合意を結び、事前に合意された方式を利用していれば、なりすました者の指示に従った資金移動も有効とすることとしている」(出典、同じ)とされている。

帰責事由の意味

 いわゆる「なりすまし」において問題となる契約成立や決済の有効性の問題について、帰責事由が大きな意味を有していることになる。つまり事前に本人確認を行っていれば本人の帰責事由として原則として契約も成立すると解されるが、そうでなければ契約も成立しないと解されることになる。ということは誰かが勝手に自分の名前を語って契約されてもそれは本人の預かり知らぬということで免責される可能性は高いが、ID、パスワード等で本人確認する場合はID、パスワード等の管理責任は本人にあるとして免責されないと解されることになる。

 また決済の場合でも、クレジットカードの場合では、「加盟店からカード決済に必要な情報が漏えいし、使用された場合」(出典、同じ)などは当然にクレジットカード会社の責任ゆえになりすまされた本人に支払い義務はないと解されるが、「他人にクレジットカードを貸与し、そのカードが使用された場合」や「他人にクレジットカード番号や有効期限などのカード情報を教え、そのカード番号などが使用された場合」(出典、同じ)などは帰責事由からなりすまれた本人に支払い又は賠償義務があると解されるのもやむをえない。ただ同じ決済でもインターネットバンキングの場合は前項で述べたように「事前に合意された方式」が全てであるので注意を要したい。
まとめ
 「なりすまし」ということを聞いて思い起こされるのが、盗難や偽造キャッシュカード、クレジットカードの不正利用によるATMからの不正引き出し(又は借り入れ)だ。空き巣やスリなどで手に入れたキャッシュカード、クレジットカードやスキミングした偽造カード等を用いてATMから現金を引き出し(又は借り入れ)するもので、この問題自体は以前から問題になっていたが、平成17年1月に明るみになった群馬県のゴルフ場での大規模なカード情報盗難事件を契機に平成18年2月に「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」(いわゆる「預金者保護法」、以下同じ)が制定された。
 この預金者保護法ではキャッシュカード、クレジットカード(正確にはその暗証番号)の管理について過失の立証責任を金融機関が負うことから実質的にはその管理度合いにより一定額の補償がなされる。ただ現在のところ金融機関窓口やネットバンキングは対象外とされているので注意が必要だ。そういう意味では「キーロガー」等のスパイウェアを通じて暗証番号を盗まれた、自らのネットバンクの口座から預金が一斉に架空口座へ送金されてもネットバンク側で補償サービスなどがない限りどうにもならないことから、暗証番号ひとつでも手を抜けない。いずれにせよ「なりすまし」と一言でいっても、その帰責事由により大きく変わるということがポイントになるので注意したい。
■参考、引用文献
新六法(三省堂)
電子商取引等に関する準則
日本経済新聞、2005年1月20日記事
■参考、引用URL
経済産業省
http://www.meti.go.jp/
■お断り
本リポートは、ITビジネス起業者等へ法制度面のアドバイスをさせていただくことを趣旨としております。つきましては、内容の公正性を期するために公的機関等を除き、企業名、個人名等は原則として割愛しております。
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上田 英雅(うえだ ひでまさ)
ECリーガルアドバイザー
所属:NTTコミュニケーションズ(株) 経営企画部
専門:EC(電子商取引)、EC法制度
所属:情報ネットワーク法学会
出身:京都府