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インターネット法制度を知る!電子商取引、契約の成立時期!

2007年02月13日

前回のおさらい

 前回は、「電子商取引等に関する準則改訂!」についてリポートした。この準則はいわば電子商取引に関する法令の解釈集だが、法令に比べ具体的でかつ毎年改訂されるので最新の課題にも対応している。さて今回はご好評にお応えして「電子商取引等に関する準則」においてとりあげている「契約の成立時期」についてリポートしたい。

電子契約の成立時期って?

 何かの商品について売主、買主双方が「売りたい」、「買いたい」という意思の合致があればめでたく「売買成立」となることに誰しも疑問はないと思う。しかし、仮に不意の訪問などにより意思に反し購入させられたものであれば特定商取引法第九条(訪問販売における契約の申込みの撤回等)では「販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において指定商品は、(中略)書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(中略)を行うことができる。」として購入から8日以内などの条件であれば売買契約を解除することが可能である。また購入しようとしたものに何か思い違いがあれば民法第九十五条(錯誤)「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」として、売買契約の「無効」を主張することができる。更に売買が騙されたものであれば、民法第九十六条(詐欺又は強迫)「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」として、売買契約の「取消し」を主張することができるということもご存知だろう。(因みにその後、代金を支払わない、商品を引き渡さない、商品に欠陥があるなどすれば債務不履行、損害賠償請求、契約解除、履行の強制などとなる。)

 しかし、上記は売主、買主の「意思の合致」を前提としているが、非対面が原則の電子商取引において「意思の合致」とは何時の時点をいうのであろうか?これについて民法第五百二十六条第一項(隔地者間の契約の成立時期)では「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。」と定めている。つまり相手が承諾通知を発信した時点を「意思の合致」としている。しかし、配達に時間を要するという郵便を前提とすればこうした規定は有益であるが、数秒で伝達される電子メールやWebに対し「意思の合致」というのは何時の時点ということかは、頻発した価格誤表示事件も有り大きな社会問題になったことは記憶に新しいところである。

 そこで問題の電子商取引において「(売買の)意思の合致」となる契約の成立時期であるが、上記の課題から平成十三年六月二十九日に「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」(通称、「電子契約法」以下同じ。)という法令が制定されている。この電子契約法第四条(電子承諾通知に関する民法 の特例)では「民法第五百二十六条第一項及び第五百二十七条の規定は、隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合については、適用しない。」(注)として、電子契約における契約の成立時期は承諾通知が到達した時点と規定された。


民法第五百二十六条第一項(隔地者間の契約の成立時期)「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。」 (以下略)
民法第五百二十七条(申込みの撤回の通知の延着)「申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。 2 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。」

承諾通知の到達時点は具体的に何時?

 電子契約時代の契約は、承諾通知が相手に到達された時点というのはとりあえずご理解いただけたと思う。しかし、そもそも到達された時点とはいつのことか?これについて経済産業省がとりまとめる前回取り上げた「電子商取引等に関する準則」では「契約の成立時期(電子承諾通知の到達)」(出典、電子商取引等に関する準則。以下同じ)の項に「電子契約の成立時期である承諾通知が到達した時点(電子契約法第4条)とは、具体的にいつか。」(出典、同じ)という論点を設定。具体的には、「電子商取引等に関する準則」の「考え方」として「(1)電子メールの場合」と「(2)ウェブ画面の場合」(出典、同じ)を想定。前者の場合では「承諾通知の受信者(申込者)が指定した通常使用するメールサーバ内のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点」、後者の場合では「申込者のモニター画面上に承諾通知が表示された時点」としている。つまり相手のメールサーバに受信された若しくはモニターに表示された時点が「承諾通知が到達した時点」となる。但し、これには例外もあり「メールボックスに記録された場合」でも、「承諾通知が一旦メールボックスに記録された後にシステム障害等により消失した場合」は「該当する例(契約成立)」(出典、同じ)だが、「申込者のメールサーバが故障していたために承諾の通知が記録されなかった場合」(出典、同じ)は「該当しない例(契約不成立)」(出典、同じ)としている。また「読み取り可能な状態で記録された場合」(出典、同じ)でも「送信された承諾通知が文字化けにより解読できなかった場合、添付ファイルによって通知がなされた場合に申込者が復号して見読できない場合(申込者が有していないアプリケーションソフトによって作成されたため、復号して見読できない場合など)」(出典、同じ)として相手が読み取ることが可能な状態までを含むとしている。

 なお数量が限られるなど在庫確認のうえ改めて契約成立としたい場合は、「電子商取引等に関する準則」に『お申込みありがとうございました。在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送ります。』など断り文をいれれば到達=契約成立ではないとされた。
まとめ
 価格誤表示事件の際でも在庫に関係なく承諾の自動返信を行う設定していたことが被害を拡大させたふしがあった。電子商取引サイトが在庫システムと連携していれば仮に価格誤表示をおこしても被害は在庫数に限定されるはずである。この点、新しく改訂された平成18年度の「電子商取引等に関する準則」では価格誤表示に対し「錯誤無効を主張できる場合がありうる。」とされたが、あくまで「場合がありうる」だけなので全てではない。また仮に無効主張が認められても失った信用は被害以上に深刻となる可能性もある。電子商取引サイトを運営される方は承諾通知送信=契約成立ということを再度にご認識され、承諾通知メール設定内容の再確認をされることをお勧めしたい。
■参考、引用文献
新六法(三省堂)
電子商取引等に関する準則
■参考、引用URL
経済産業省
http://www.meti.go.jp/
■お断り
本リポートは、ITビジネス起業者等へ法制度面のアドバイスをさせていただくことを趣旨としております。つきましては、内容の公正性を期するために公的機関等を除き、企業名、個人名等は原則として割愛しております。
なお本リポートの内容については、お客さまご自身その内容を判断するものとし、上田英雅又は本リポート掲載先サイトの管理者であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社はいかなる保証も行わず、いかなる責任も負担いたしません。
上田 英雅(うえだ ひでまさ)
ECリーガルアドバイザー
所属:NTTコミュニケーションズ(株) 経営企画部
専門:EC(電子商取引)、EC法制度
所属:情報ネットワーク法学会
出身:京都府