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インターネット法制度を知る!電子商取引等に関する準則改訂!

2007年01月22日

前回のおさらい

 前回は、「これも不正アクセス?」についてリポートした。不正アクセス禁止法の対象はハッキングに類するものだと思っていたが、親しい友人・知人同士が意見交換するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でも他人のID・PWを知得等して侵入し不正アクセス禁止法違反に問われた事例をご紹介した。さて今回は経済産業省が取りまとめている電子商取引等に関する準則の改訂(平成18年度)についてリポートしたい。

電子商取引等に関する準則って?

 そもそもこの電子商取引等に関する準則だが、経済産業省が、平成14年3月に「電子商取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのか、その解釈を示し、取引当事者の予見可能性を高め、取引の円滑化に資することを目的」(出典 経済産業省サイト以下同: http://www.meti.go.jp/feedback/ 公示日18.12.25「電子商取引等に関する準則改訂案」に対する意見公募)に策定するものだ。

 電子商取引はインターネットを介して商品の売買やサービスの提供を行うものだが、ご存知のように関係する多数の法令はインターネットなど全くない頃にその多くが制定されている。故に電子商取引の進展に支障をきたす場合がある。もちろんそうした法令の多くは電子商取引の進展に併せて改正されていくべきであるが、法改正には時間がかかるうえに法改正のスピード以上に電子商取引が進展する場合もある。ついては法令を改正するより又はその前にその解釈を示すことで電子商取引の進展に対応しようとするのが電子商取引等に関する準則のコンセプトだ。それ為に電子商取引等に関する準則は正式な法令ではなく法的な拘束力はもたないが、対応は迅速という長所をもつ。また法的な拘束力はなくともその策定には経済産業省が関係有識者の意見を聞きながら作成するものであることから、訴訟においては一定の判断材料にされるものと見込まれている。さてこうした電子商取引等に関する準則であるが、電子商取引の進展に併せ毎年改訂されており、今回は平成18年度の主な改訂についてご紹介したい。

電子商取引等に関する準則、主な改訂点

 改訂の第一は、「価格誤表示と表意者の法的責任」(新設)(出典、経済産業省サイト)だ。最近では少なくなったが「10万円」の商品を「1万円」など桁間違い等による価格誤表示事件が相次いだ。実際の店舗では価格を誤表示しても精算時に直ちに判明するが、サイトで自動売買を行う電子商取引においては管理者が知らない間にどんどんと売買を行ってしまうケースがある。しかも掲示板への書き込みやメーリングリストにより本来なら数人から数十人の被害で収まるものが何百人もの被害が拡大することもざらでない。こうした事象について、民法第九十五条(錯誤)では、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」という法令に基づき、一般的な販売行為であれば商売のプロである販売者が価格の誤表示を犯してもそれは売主の責任というのが通例だ。これは相手方保護の観念である。しかし「表意者(売主)に価格誤表示があることを相手方が知っていた場合には相手方を保護する必要がないから」(出典、経済産業省サイト)としてサイトの利用者(買主)の殆どが誤表示を認識している場合には利用者(買主)を保護する根拠もなく、「売主に重過失がある場合にも錯誤無効を主張できる場合がありうる」(出典、経済産業省サイト)としている。なお法令や準則は別として、自らの信用を守る為に誤表示価格で商品を販売するということもひとつの選択肢であるし、「無効」と主張して売買の無効をかけて訴訟に出ることも可能性としては残されていることは付記しておく。

 改訂の第二は、「ワンクリック請求と契約の履行義務」(新設)(出典、経済産業省サイト)だ。「ワンクリック請求と契約の履行義務」とは、いわゆるワンクリックしただけで「契約成立」となり、代金を請求する詐欺事件に対し、代金の支払い義務がないことを例示したものだ。具体的には「契約が不成立の場合」、「錯誤により契約の無効を主張しうる場合」、「消費者契約法違反の条項があり無効となる場合」、「 契約の内容が公序良俗に違反するとして無効の主張をなしうる場合」、「申込者が未成年であることにより取消しの主張が可能な場合」(出典、経済産業省サイト)と類型化したうえで、「『動画が見放題!今すぐクリック!』など単なる宣伝メールを装い、特定のURLを表示しているケース」(出典、経済産業省サイト)など事例を沿えてワンクリック請求に対する契約の履行義務がないことを解説している。

 改訂の第三は、「ホスティングを伴う電子商取引事業者の違法情報媒介責任」(新設)(出典、経済産業省サイト)だ。標題からみると何のことだがおわかりにくいと思うが、要はオークションサイトの評価欄などに出品者の名誉毀損にあたる書き込みがあった場合、どうすることができるかというものだ。この点についてプロバイダー責任制限法ガイドラインに基づきISPが当該書き込みを放置又は削除した場合の責任などを解説している。

 改訂の第四は、「インターネットを通じた個人情報の取得」(出典、経済産業省サイト)だ。平成17年4月より全面施行された個人情報保護法に基づいたものであるが、電子商取引において特に関係の深い個人情報の取得について、「インターネットを通じて利用者から個人情報を取得する場合、法的にどのような問題があるか」(出典、経済産業省サイト)という論点に対し、「個人情報の取得が違法とされる可能性がある例」(出典、経済産業省サイト)など取得していた個人情報をサイトのクッキーなどを利用しサイトの利用履歴と照合することを利用者に明示していない例など解説している。

 改訂の第五は、「越境取引」だ。電子商取引の強みのひとつは海外からの買い物や販売が容易ということ。ただ言語と法令の制約もありその強みは十分に生かせていないというのが現状である。しかし、米国の書籍サイト「アマゾン」で洋書を購入された方も多いと思うが国境をこえた電子商取引のニーズは高いはず。こうした課題に対し、今回の電子商取引等に関する準則改訂では「当事者選択が無い場合の準拠法」、「越境取引における消費者保護法規」、「インターネット上の不法行為と準拠法」(新設)(出典、経済産業省サイト)が設けられた。これは平成19年1月に施行された「法の適用に関する通則法に基づいたものであるが、各々「国境を越えて事業者間でインターネットを介して取引がなされた場合、当事者による準拠法の選択があれば、その国の法が適用されるが、準拠法の選択がなされていなかったときには、どのように準拠法が決定されるか」、「我が国の消費者が海外の事業者との間でインターネットを介して取引を行う場合、我が国の消費者保護法規の適用を受けることができるか」、「インターネット上の掲示板に自己の名誉や信用を毀損する書き込みがなされ、様々な国々において被害が発生した場合、そのことに基づいて差止や損害賠償を請求するとき、いずれの国の準拠法に従えばよいのか」(出典、経済産業省サイト)という論点に対し、端的にいえば準拠法の規定がなければ取引の関係度によって決定される、日本の消費者保護規定が適用される、被害者の居住地の法令が適用される旨の解説がなされている。
まとめ
 今回の電子商取引等に関する準則改訂(平成18年度)の概要だが、紙面の都合もあり詳細は全文をご高覧いただきたい。最後にインターネットは日々進化している。それに伴い電子商取引も進展していくが、時には価格誤表示に対する大量注文など社会問題を産むこともある。訴訟が費用や時間の点から有効な紛争処理手段ではない現状からみて電子商取引等に関する準則は電子商取引を営む方にとっても利用する方にとっても有効な法的拠り所。機会をみて是非ご一読をすすめたい。
■参考、引用文献
新六法(三省堂)
■参考、引用URL
経済産業省サイト
http://www.meti.go.jp/feedback/
■お断り
本リポートは、ITビジネス起業者等へ法制度面のアドバイスをさせていただくことを趣旨としております。つきましては、内容の公正性を期するために公的機関等を除き、企業名、個人名等は原則として割愛しております。
なお本リポートの内容については、お客さまご自身その内容を判断するものとし、上田英雅又は本リポート掲載先サイトの管理者であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社はいかなる保証も行わず、いかなる責任も負担いたしません。
上田 英雅(うえだ ひでまさ)
ECリーガルアドバイザー
所属:NTTコミュニケーションズ(株) 経営企画部
専門:EC(電子商取引)、EC法制度
所属:情報ネットワーク法学会
出身:京都府