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インターネット法制度を知る!第22回 国際私法の現代化と電子商取引

2005年09月12日

法務省(法制審議会私法部会)国際私法現代化を審議

 前回、「音楽配信、その法律とは。」についてリポートした。アップル社による「iTunes Music Store」日本上陸はセンセーショナルな出来事であるが、ここで重要なのが著作権の整理。ポイントだけでもご拝読いただければ皆様のお役に立てればと思う。さて今回は法務省(法制審議会私法部会)が国際私法の現代化について審議しているのだが、電子商取引に関係のある事項も含まれているという。ついては、電子商取引に関する事項を中心にポイントをリポートしたい。

国際私法の現代化?

 冒頭、「国際私法の現代化」とあげたが、まずその背景をみておきたい。またそもそも「国際私法」とは何か?それを現代化するというのはどういうことか?更にその「国際私法の現代化」と電子商取引がいかなる関係があるのか?ということもご関心があると思うので順にリポートする。
 まず経緯だが、法務省(法制審議会私法部会)が今回の現代化について補足説明した「国際私法の現代化に関する中間試案 補足説明」によると「準拠法に関する規則などを定めた我が国の国際私法の基本法である法例(明治31年法律第10号)は、明治31年に制定されて以来、渉外的身分関係事件の増加の実情などにかんがみ、平成元年に婚姻及び親子に関する部分について準拠法の指定をより適切なものとするための一部改正が行われたものの、これまで全面的な改正が行われることなく現在に至っている。しかし、この100年間、我が国を取り巻く社会経済情勢は著しく変化し、交通手段及び情報通信技術の発展等に伴って、国境を越える人・物・情報の移動が増加し、国際的な取引内容は複雑・多様化し、国際的な法律関係に基づく国際的な紛争も増加している。」ことが背景にあるという。ただこれだけでは何のことだかといったところだが、要は交通や通信の発達により国際私法も現代化を迫られたということが前提にある。
 しかし、そもそも「国際私法」とは何だろうか?この点についてフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A7%81%E6%B3%95)は、国際私法を「渉外的私法関係に適用すべき私法を指定する法規範の総体をいう。法の抵触を解決する法であるため、抵触法 (Kollisionsrecht) ともいう。英米法では、後述の準国際私法をも含む概念として把握されることもあり、法の抵触 (conflict of laws) と呼ばれることもある。」と説明している。これもまた少し分かりにくい説明だが、要は国際間での私法の管轄範囲を定めたものというのがわかりやすいと思う。以上を踏まえた上で107年前に制定された条例がいかに現代化され、それに電子商取引がいかに関与しているかについては長くなるので次節へ譲りたい。

条例と電子商取引

 条例は、「自然人の能力」、「法律行為の成立効力」、「法律行為の方式」、「物権、法定債権の成立効力」、「債権譲渡」、「国際裁判管轄」、「後見開始の審判」、「失踪宣告」などについて規定したカタカナ書きの古い法律である。しかし冒頭でも申し上げたように今回現代化が図られることになった。ただその全体像についてはボリュームがあることから、今回は電子商取引に関する事項についてリポートする。
 さてその該当事項だが、「法律行為の成立効力」が電子商取引に関係する。即ち、電子商取引の長所は遠隔地でも簡単にショッピングできるところであるが、一旦トラブルになれば場所の制約は直ちにそれがあだとなる。そしてそれが海外ともなれば絶望的ですらある。こうした課題に対して、法務省(法制審議会)は、当事者による準拠法選択に関らず消費者契約に関して消費者はその常居所地法上の強行規定により特定の効果を主張できるよう盛り込んでいる。また名誉・信用の毀損に関する不法行為も被害者の常居所地法上に連結される方向で検討しているというものだ。(なお厳密に申し上げれば後半は電子商取引そのものではないかもしれないが、関係個所を抜粋する。)

【条例(抜粋)】
■5、消費者契約に関する消費者保護規定
A案

契約の成立及び効力について当事者による準拠法選択がされた場合であっても,その契約が消費者契約であって,当該契約の成立(方式を含む。)及び効力に関して消費者がその常居所地法上の強行規定に基づく特定の効果を主張したときは,当該主張に係る強行規定が適用されるものとする。

当事者による準拠法選択がされていない場合の消費者契約の成立(方式を含む。)及び効力は,3ア及び第5にかかわらず,消費者の常居所地法によるものとする。

■7、個別的不法行為
(2)名誉又は信用の毀損に関する準拠法
A案
他人の名誉又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,被害者の常居所地法(被害者が法人その他の社団又は財団である場合にあっては,その事業所の所在地の法律(被害者が複数の事業所を有するときは,主たる事業所の所在地の法律))によるものとする。

まとめ
 今回の現代化中間試案だが、今年(平成17年)3月〜5月にパブリックコメントにより照会。その結果を踏まえて答申される予定と聞く。従って今回の現代化案がそのまま制定されるわけではないが大筋が大きく変わることもないだろう。なお率直に申して海外との電子商取引トラブルやそもそもの費用対効果の課題もあり、今回の現代化が電子商取引にどれだけのインパクト、意味を有するかはまだ見えないというのが実情でもある。しかし海外との電子商取引トラブルにおける準拠法の課題は、のどにささった魚の骨の様に長らく指摘されていた課題でもある。電子商取引推進を希望する当方としても何らかの形でも改善に向けて前進することを望みたい。
■参考、引用文献
新六法(三省堂)
■参考、引用URL
法務省
http://www.moj.go.jp/
■お断り
 本リポートは、ITビジネス起業者等へ法制度面のアドバイスをさせていただくことを趣旨としております。つきましては、内容の公正性を期するために公的機関等を除き、企業名、個人名等は原則として割愛しております。
なお本リポートの内容については、お客さまご自身その内容を判断するものとし、上田英雅又は本リポート掲載先サイトの管理者であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社はいかなる保証も行わず、いかなる責任も負担いたしません。
上田 英雅(うえだ ひでまさ)
ECリーガルアドバイザー
所属:NTTコミュニケーションズ(株) 経営企画部
専門:EC(電子商取引)、EC法制度
所属:情報ネットワーク法学会
出身:京都府