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インターネット法制度を知る!第21回 音楽配信、その法律とは。

2005年09月05日

盛り上がる音楽配信ビジネス

 前回、「預金者保護法(偽造カード法)と電子商取引へのインパクト!」についてリポートした。不正キャッシュカードによる引き出しの立証責任が金融機関側に課せられたというのは大きい。ただインターネットバンキングや盗難預金は対象外ということから今後も検討が必要だ。さて今回は音楽配信ビジネスについてその背景や法律についてリポートしたい。

平成17年8月4日(木)、「iTunes Music Store」日本上陸

 平成17年8月4日(木)は、日本にとって歴史的な日となった。東京千代田区、東京国際フォーラムにおいて、猛暑を上回る熱気の中、米国アップル・コンピュータのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、「ITMSが今日、この瞬間から日本でもスタートする」と発表。早速「iTunes Music Store」(日本向け)がインターネット上に「開店」した。
 平成13年のサービス開始以来、累計5億曲以上もダウンロードされた「iTunes Music Store」。「iTunes Music Store」サイト(http://www.apple.com/jp/itunes/store/)によると、「試聴、購入、ダウンロード曲数は100万曲以上。globeやウルフルズによるiTunesオリジナル曲や、Def Tech、CRAZY KEN BAND、Chara、LITTLE CREATURES、綾戸智絵、そしてThe Complete B'z限定版ボックスセットを含む日本で人気のアーティストの曲を数々揃えています。この他の曲には、U2、Jack Johnson、Bjorkなどの海外のアーティストの曲など充実のコレクションから楽しめます。」という。しかも価格は、わずか1曲150円又は200円。まさにこの「iTunes Music Store」は、日本の音楽シーンを大きく変える可能性を秘めている。しかし、こんなに素晴らしい「iTunes Music Store」だが、日本上陸を果たす為には著作権をクリアする必要があった。

音楽配信ビジネスと著作権

 この「iTunes Music Store」だが、米国では1曲99セント(100円程度)で好きな曲をパソコンへダウンロード。また携帯音楽プレーヤー「iPod」に転送すれば屋外でもその曲を楽しむことができる。以前にソニーがポータブルカセットプレーヤー「ウォークマン」を世に出したときもセンセーショナルであったが、今回の衝撃はそれを大きく上回る。
 しかし、こうした仕組みがこれまで(国内に)なかったのか?といえば実はそうでない。携帯音楽プレーヤー「iPod」の端末自体は、既に販売されていた。また東芝など他の電機メーカーも同様の機種を販売している。また肝心の音楽コンテンツもレーベルゲート、ヤフー、オリコン、マイクロソフト、NTTコミュニケーションズなどが既に提供している。なおau社の「着うた(ふる)」やその他、着メロ配信も携帯端末向けだが音楽配信ビジネスの一つである。しかし、これほど「iTunes Music Store」が注目されるのは、やはりその収容曲数、価格の安さ、携帯音楽プレーヤー「iPod」端末等との連携であろう。
 さて本題に入るが、「iTunes Music Store」の様な音楽配信ビジネスにはどのような法令が関与するのであろうか?第十五回「著作権侵害しない為のキーポイント!」をおさらいしながらリポートしたい。
 まず基本となる著作権だが、著作権法第二条第一項(定義)において「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」ということは周知の通り。そしてその著作権は、著作権法第十条(著作物の例示)「一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 、二 音楽の著作物、三 舞踊又は無言劇の著作物、四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物、五 建築の著作物、六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物、七 映画の著作物、八 写真の著作物、九 プログラムの著作物及び著作権法第十二条で規定する(創作性のある)編集著作物、データベース」と細分化され、音楽は当然「二 音楽の著作物」となる。しかし、実はこの権利は、複数のいくつかの権利に細分されている。

著作権法(抜粋)
権利の種類(音楽配信ビジネス関係)
条文 権利名 条文本文
第二十一条 複製権 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
第二十二条 上演権及び
演奏権
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(中略)上演し、又は演奏する権利を専有する。
第二十三条
第一項、第二項
公衆送信権等 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
第二十六条の二 譲渡権 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。(後略)
著作隣接権
条文 権利名 条文本文
第九十一条 録音権及び
録画権
実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。(後略)
第九十二条の二 送信可能化権 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。(後略)
第九十五条の二 譲渡権 実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。(後略)
第九十五条の三 貸与権等 実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。(後略)
第九十六条 複製権 レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。
第九十六条の二 送信可能化権 レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する。
 音楽配信に関する権利をあげたが、これを具体的にビジネスにあてはめると配信する楽曲を配信用のファイルであるMP3ファイルにエンコード(変換)するために音声データをパソコンに取り組むには著作権者及びレコード(コンパクトディスク)制作者の複製権(著作権法第二十一条、第九十六条)、実演家の録音権(著作権法第九十一条一項)取得が必要となる。またこれを配信できるように公衆回線経由でサーバへアップロードする行為は、著作権者の公衆送信権(著作権法第二十三条第一項)とレコード(コンパクトディスク)制作者、実演家の送信可能化権(著作権法第二十三条第一項、第九十六条の二)の権利取得が必要となる。
 従って音楽配信ビジネスは、曲ごとに上記の権利許諾、使用料の調整を行わなければならないが、通常は社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)などの管理団体に管理が委託されていることが多いことからそことの交渉となる。しかし相応の規模でのビジネスとなれば多数の楽曲の権利を保有する音楽出版社等との交渉となるだろう。
まとめ
 日本に音楽配信ビジネスが登場してはや数年、誰もが簡単に好きな楽曲をダウンロードするだけで音楽を楽しめる音楽配信は日本の音楽シーンを確実にかえている。
 これまでミュージシャンがプロデビューするにはオーディションに応募し上位入賞するか、地道なバンド活動を積み重ねて注目を得るくらいしか手段はなかったが、音楽配信を利用すれば自らインターネット経由で配信することもできるし、音楽配信サイトに委託販売することもできる。もちろん音楽がアートかマネーかという議論はあるが、誰もが自らの音楽を広めることができる「手段」を手にした意味は大きい。
■参考、引用文献
新六法(三省堂)
■参考、引用URL
ITMS(日本向け)
http://www.apple.com/jp/itunes/store/
日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)
http://www.jasrac.or.jp/
■お断り
 本リポートは、ITビジネス起業者等へ法制度面のアドバイスをさせていただくことを趣旨としております。つきましては、内容の公正性を期するために公的機関等を除き、企業名、個人名等は原則として割愛しております。
なお本リポートの内容については、お客さまご自身その内容を判断するものとし、上田英雅又は本リポート掲載先サイトの管理者であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社はいかなる保証も行わず、いかなる責任も負担いたしません。
上田 英雅(うえだ ひでまさ)
ECリーガルアドバイザー
所属:NTTコミュニケーションズ(株) 経営企画部
専門:EC(電子商取引)、EC法制度
所属:情報ネットワーク法学会
出身:京都府