和菓子屋が一番、時間の余裕のある8月を利用して、本郷三原堂では「創作菓子コンテスト」を開いている。応募資格は、同社で働いていること。パート社員もOKである。
「15年ほど前から始めました。創作に必要な材料は無償で提供、150個つくります。ネーミングまで考えることが条件で、一等賞には賞金も出します」
昨年エントリーしたのは15人。毎年楽しみにしている社員も多い。
「もっと楽しみにしているのは、地元のお客様かもしれませんね。昼休み一時間限定で、来店されるお客様にも審査に参加していただいています」
だが、むろん狙いは一過性のお祭りでもないし、お客様へのサービスだけでもない。社員のやる気を刺激し、参加意識を向上させたいとの期待もあった。「優れた作品は商品化する」と明言したことにも、経営者としての意思と願いが込められている。
「残念ながら15年間で商品化できたのは三つだけ。それも、短い間しか売れませんでした。味や品質、製造しやすさ、原価とのバランスなど、『商品』のレベルをクリアするのは、それだけ難しいということなんでしょうね」
茗荷谷店を含む三つの店舗を光回線で結んだように、新しいことにどんどん挑戦していくことも、大森流。同時に、成果は求めるが結果を焦らないことも、大森社長の経営方針といえそうである。
「いや、経営を安定させることが経営者の責任ですから、気持ちのなかでは焦りに似たものはつねにありますね。伝統を次の時代にキチンと伝えていくことと、お客様と従業員にとって『いい店』にすることが社長としての目標ですから。それに和菓子も洋菓子も業界全体を考えれば、まだやるべきことはあると思う。自己採点では、まだまだ合格点はつけられません」
現状に満足してしまったら、進化は止まる。世界に認められる業界へ、「いい店」づくりへ、本郷三原堂の挑戦は今日もつづいている。 |
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代表取締役・大森弘之
東京和生菓子工業共同組合技術部副部長、全日本洋菓子工業会常任理事として和菓子・洋菓子両業界に貢献。洋菓子の世界大会は可能なかぎり観戦するほか、地元本郷商店会の会長も務めている。 |
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菓子技術者は一人前になるのに10年かかる。若い技術者の成長も楽しみ。 |
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岩鼻専務がパソコンで作成したパッケージ。店舗間はオンラインで結ぶなど
ITをうまく活用している点にも注目したい。 |
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