朝8時、本郷三原堂では6人の技術者が最後の追い込みにかかっていた。「その日につくってその日に食べていただく」朝生菓子は、平均12〜15種類。桜餅やひな桜など季節に合わせた商品がメインだが、ときには「餅が余分にできたから」と、その日限定の商品が飛び出すこともある。これも型にはまらない本郷三原堂らしさだが、その反面、決して妥協しないものもある。
「アンコですね。餡は和菓子の基本ですから、材料も製造法も伝統を崩しません。餡だけほしいというお客様もいらっしゃいますが、餡を使ってどういう菓子をつくるかが、和菓子屋ですから、頑固にお断りしています」
本郷三原堂の餡は、「小豆の味を活かす」がことが鉄則。とはいえ、味の好みも時代によって変化する。甘味の度合いをどの程度にするかは、つねにつきまとう問題である。
「いまの菓子が昔より甘味が薄いのは、お客様の嗜好に応えてのことです。商品ですから時代の変化に対応していかなければならないのは、当たり前のこと。でも、一方で和菓子500年の伝統はキチンと守り、次代へ手渡さなければいけないと思うんです。伝統と変化をどう調和させていくかは、多分、永遠の課題でしょうね」
だが、決めなければ商品はつくれないし、売れなければ企業は潰れてしまう。大森社長が物差しとして選んだのは、「地元の人に受け入れられるか」どうかである。
「赤ちゃんの誕生祝いから葬式饅頭まで、和菓子はもともと地元の暮らしに密着したものだからです。本郷三原堂の餡はこの味と、思っていただける餡に徹します」
若いころはダイエーの価格破壊に「すごいなあ」と憧れたし、一個数千円もする高額和菓子路線に羨望を感じたこともある。だが、いまは本郷三原堂らしい生き方に徹しようと思っている。
「お客様が求めるものにピタッと合う商売がしたい。値打ちのあるものが売れる菓子屋になりたいですね」 |
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代表取締役・大森弘之
東京和生菓子工業共同組合技術部副部長、全日本洋菓子工業会常任理事として和菓子・洋菓子両業界に貢献。洋菓子の世界大会は可能なかぎり観戦するほか、地元本郷商店会の会長も務めている。 |
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餡は和菓子の基本。本郷三原堂では「小豆の味」を活かした餡にこだわっている。 |
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落ち着いた雰囲気の店内。飾られたレトロなレジスターなどが、さりげなく伝統を伝えている。 |
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