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割烹旅館清都は、南房総の保養地・安房白浜の割烹旅館。旅館業が軒並み苦戦をする時代のなか、1996年創業のハンディを見事に克服している。心と身体を癒す「隠れ家」をめざす「清都」の広告宣伝は、あくまでホームページ中心。その決断の理由とは。そして、成功の秘訣とは。
風格を感じさせる割烹旅館清都の看板。女将さんの人柄とあいまってリピーター率は5割近くにもなる。
--- 房総半島の南端に位置する安房白浜は、温暖な気候と新鮮な海の幸で昔から知られた保養地である。この白浜に「割烹旅館清都」がオープンしたのは1996年。土地になじみと客商売の経験はあったものの旅館経営は初めて、ご夫婦二人での決断だった。
「最盛期には芸者さんが180人もいる賑わいだったけれども今はいなくなってしまい、50軒位あった民宿も半減してしまっていました。こんな時期に新規開店なんて何を考えているの、と言われました(笑)」
--- 他から進出してきた大規模ホテルの売り物は、「1泊2食付6800円」の低料金。ホテルや旅館業界は、女性客をターゲットに低価格と女性向けサービスの充実で集客を図る時代だった。「清都」は海に面した好立地にあるし、安房白浜では地元産の新鮮な魚介類が豊富に提供できる。女性客向けにグルメ路線でいけば、そこそこの集客は可能だった。だが、女将の清都みちるさんはあえて差別化を選択した。
「割烹旅館ですから、素材や鮮度、季節感のある板盛り、身体にいい食材など、料理にはとてもこだわっています。でも、いまは流通の発達で大都市ならおいしいものや新鮮なもの、珍しいものが、いつでも食べられます。料理だけはなく、清都独自のコンセプトが必要だと思いました。8部屋の小さな宿という特色を活かして、お客様が心と身体を癒せる隠れ家にしたい。男性が、女性を連れて来たくなる、親しい友だちを誘いたくなる、そんな宿をめざそうと思ったのです」
事務所にはパソコンが3台。女将さんの一日は、メールチェックから始まる。
--- 「隠れ家」をめざすなら、目立つ宣伝は逆効果になる。だが、広告をうたなければ、旅館の存在をお客様に知らせることはできない。矛盾する要素に悩みながらも、清都さんは旅行雑誌や新聞での広告というオーソドックスな手法を採ることにした。
「結果としては、失敗でした。有名な旅行雑誌では客層がコンセプトとずれていましたし、連絡なしのキャンセルといったマイナスもでました。新聞広告は、費用の割に成果なし。本当は口コミを期待していましたが、効果が出るまでには時間がかかるんです」
--- この当時が経営的には一番辛い時期、加えてご主人の他界もあり、一時は倒産寸前に追い込まれた。そんな「清都」を支えたのが、オープン当時からコツコツとつづけていたホームページと、新たに導入した「死海風呂」だった。
「夫が凝り性で、フィルムスキャナーまで揃えて独学でホームページをつくりました。やりたいことを全部やった、ハチャメチャなページだったことが、お客様にはかえって新鮮に見えたのかもしれません(笑)。ホームページを通じて予約客が徐々に増え、来られた方がリピーターになったり、口コミの窓口になってくださいました」
--- 「死海風呂」は、イスラエル・ヨルダンから輸入した死海の塩を100%使用した風呂。最初は町おこし策として町ぐるみでの導入が計画されたが、まとまらず「清都」単独での導入になったという。
「近しい人には反対されましたが、思い切って決断して良かったと思います。ミネラル成分が豊富なことから入浴効果も高いんです。浮くという話題性もあって、お客様の関心を高めるキッカケになりました」
地元の良質で新鮮な素材にこだわった料理。見事な盛りつけと美味で、食べる楽しさを満喫させてくれる。
--- 「清都」は一昨年、建物をリニューアル。同時にホームページとパンフレットを一新した。初めて来るお客様は、90%以上がホームページから。「ホームページは、清都の生命線」と、清都さんは言い切る。
「今日いくからと、おなじみのお客様からメールが入ることもよくあります。年配のお客様はITが苦手といわれますが、活用されている方も意外にいらっしゃる。若い方は、ケータイからアクセスされる人も多いですね」
--- 同様に、6年前から本格的に活用しはじめたインターネットは、女将としての清都さんになくてはならないものになっている。
「全旅連のメールでの呼びかけをきっかけに、ホテル・旅館の女将さんの集まり『女性経営者の会』が誕生しました。この会では、メールをできる事が入会条件になっていて、メールやチャットでの話し合いが多いです。旅館業はこれまで経営は旦那さん、接客業務は女将さんという分担でした。でも、少子化でお婿さんをとったり、旅館を継いだ上でお嫁にいく人も増えています。これからは女将さんも経営を考えなくてはいけなくなってきています。全旅連の全国大会のときに分科会を開いたり、経営についての勉強、工事の見積りの取り方・DM戦略、お客様の心をつかむ絵手紙の書き方など、幅広いテーマで勉強会を行っています。」
--- 時間と空間の壁をなくしたインターネットは、多忙な女将さんたちにとって便利かつ強力なツールである。清都さんは、朝一番にメールチェック。たまたまパソコンの前にいるときにフォーラムに書き込みをし、時間があいたときに返事を見る、お互いに余裕がある時間にチャットで会話をする、といった使い方をしている。むろんITは、ビジネスツール。スケジュールや顧客の管理、経理など多方面に活用中だ。
「ホームページを含めて、もう一度、広告宣伝のあり方を考えようと思っています。清都の看板は地味ですし、有名人が泊まったことを宣伝に使ったこともない。ハッキリいって宣伝下手だと思います。気取っていては、集客はできません。清都らしい型にはまらない良さを活かしながら、お客様の気持ちに届く情報をもっと積極的に出していくことが、いまの課題です」
IT活用度を自己採点してもらいました。
2005年にリニューアルしたホームページ。見やすく格調のあるデザインや最近始めた「女将さんのブログ」も好評だが、現在見直しを検討中。「お客様の気持ちに届く情報をもっと提供したい」が、その理由。
経営をサポートするツールとして活用中。毎朝一番にスイッチを入れる。
旅館の内外を飛びまわることも多いから、ケータイは必需品。お子さんとのコミュニケーションにも活用している。いまや「命のケータイ」と呼ぶほど大事。
お客様からの予約や問い合わせに、同業者との連絡などに、お互いの時間のムダを省くメールは不可欠。
和風旅館のイメージとは逆に、ITの活用度はほぼ満点。館内無線LANもOK。名刺管理システムの導入やホームページのリニューアル等々、今後さらに活用度を高める計画も進行中だ。スキルや知識は実践で習得という、女将さんの努力にも敬意を払いたい。
割烹旅館清都
代表者 清都みちる
創業 1996年
事業内容 割烹旅館の経営
本社 千葉県南房総市白浜町滝口6241
http://www.kiyoto.ecnet.jp/
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