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ビジネスのツボ

患者データベースとグループウェアで業務を効率化 本業への集中度アップと「カスタマイズされた情報提供」をめざす
超多忙な動物病院でのIT導入の狙いは、業務効率化だけにはとどまらなかった。医療とコミュニケーションへの集中度を高める、成城こばやし動物病院のIT戦略とは。そして、その活用術のツボとは。
動物医療は、動物と人の幸せに寄与すること ニーズに応える情報提供とコミュニケーションが大切
--- 日本のペット数はイヌ・ネコあわせて約2520万匹※。5世帯に1世帯がイヌと、8世帯に1世帯がネコと暮らしている。ペットに対する意識も変化し、飼い主の8割以上の人が「家族の一員」と考えており、「子どものようなもの」とする人も3割を超える。大切な「家族」だからこそ、病気の治療に健康管理に、動物病院は飼い主にとって重要な存在である。

実施した検査や使用したクスリなどはすべてデータベースに記載。ユーザーが活用できる個人情報をめざしている  
実施した検査や使用したクスリなどはすべてデータベースに記載。
ユーザーが活用できる個人情報をめざしている。
「最近の傾向として感じるのは、予防薬程度なら価格の安い病院、病気の場合は医療技術の高い病院と、動物病院を使い分ける飼い主が増えていることですね。また、自身のペットが健康なのに過度に心配される方も少なくありません。動物病院は、人間でいえば小児科のようなもの。ペットは自分で表現できませんから、飼い主とのコミュニケーションがとりわけ重要なんです」(小林院長)

--- 成城こばやし動物病院は、小林院長以下7人の医師と5人の看護士が診療にあたる大型の病院。13年の実績と確かな医療技術、院長の人柄から患者数も多く、カルテのある患者だけで1500匹を軽く超える。小林院長が「患者データベース」やグループウェアの活用に力を入れているのも、業務の効率化を図るため。それも、業務にかかる負担を軽くするとともに、小林院長がめざす一人ひとりの飼い主に届くコミュニケーションと情報提供を実現するためである。

「例えば、単に『この犬は健康です』と言うだけでは飼い主の不安は解消されません。医学的な裏づけを得て納得する人もいれば、過度の心配をほぐしてあげる事の方が効果的な場合も多々あります。最近ではインターネットで情報を調べまくる人も多いですが、結局のところ正しい情報にはなかなか行き着かないのが実状です。情報にしてもコミュニケーションにしても、その人その人のニーズにあったところに届いてこそ意味がある。情報収集にかける多大な時間と労力を、診察室で一瞬にして解消してさしあげるのがプロの腕の見せ所と考えています。そのためには日頃からの信頼関係が重要です。私は、動物の幸せを通して人の幸せに寄与することができればと、いつも考えています」
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カスタマイズされた情報を提供するためには 場・人・ツールの3つが不可欠
--- 小林院長が電子カルテを含む患者データベースづくりに着手したのは、約3年前。だが当初、取り組みはなかなか思うようには進まなかった。

「患者さんが人間なら問診しながら必要事項を入力できますが、動物相手ではそうはいきません。診療時間が終わってからの入力作業となると、深夜までかかってしまう。ハッキリ言って一度、挫折しました(笑)」

--- それでも小林院長は諦めなかった。比較的来院患者数の少ない秋から冬の時期を利用してコツコツと作業を継続。来年度からは専任の事務スタッフを増員して、データをフル活用できる環境を整備していく計画である。

「年齢や性別、来院歴程度の情報なら簡単でしょうが、一人ひとりの飼い主に届く、カスタマイズされた情報を提供するためには、家族構成や飼育環境、経済状態などペットを取り巻く状況をキチンと把握しておくことが大事なんです。そのためには、それが可能な場と人、ツールの3つが必須条件です」

--- 患者データベースは現在進行形だが、スケジュール等を共有するグループウェアはすでにフル稼働中。院内LANで、診療室や事務室、カンファレンスルームのどこでも見られる仕組みが整備されている。

「院内LANとグループウェアは、当病院の生命線の一つ。これがないと仕事になりません」
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我が社のIT度チェック
IT活用度を
自己採点してもらいました。
パソコン度
グループウェアをフル活用中。患者データベースの充実でさらに活用度アップの見込み。
モバイル度
海外出張時も携帯電話は忘れずに持参。
メール度
業務連絡はすべてメール。全員が一日一回、必ずチェックする。
院内随所に、患者データベースとグループウェアの両方が一度にチェックできるシステムを導入。
院内随所に、患者データベースとグループウェアの両方が一度にチェックできるシステムを導入。
インタビュー後の総評
自己採点は「フツウ」の「3」だが、それも目標設定が高いため。「ユーザーが個人情報を活用できる環境」を実現するツールの一つとしてITを捉えている。単なる業務効率化にとどまらず、ビジョンを実現するためのIT活用という発想は、見習いたいもの。
ITが苦手の人への配慮も大事なポイント 双方向コミュニケーションのさらなる充実をめざす
--- 患者データベースを活用した「カスタマイズされた情報提供」の次のステップとして、小林院長は「双方向のコミュニケーションの充実」を視野に入れている。

「一昨年にアンケート調査をしたところ、当病院に来られる方の8割がwebを利用できますから、例えばワクチン接種のお知らせなどを届ける仕組みづくりを考えています。ただし、ここで気をつけなければいけないのは、ITは万能ではないこと。年配の方のなかにはITは苦手という人も多いですから、そういう方々にも届く情報提供の仕組みを考えることも忘れてはいけないと思いますね」

「一方通行の宣伝はキライ」(小林院長)と、看板は1カ所のみ。HPをあえて開設しないのも同じ理由から。
「一方通行の宣伝はキライ」(小林院長)と、看板は1カ所のみ。HPをあえて開設しないのも同じ理由から。
 
--- もう一つ、小林院長が実現したいと考えているのが、医療技術を共有できる環境づくりである。これも3年前からスタートした医師による「Net会議」もその一例。現在は多忙のためとぎれがちだが、時間をつくって活用したいと言う。

「青森と山梨、静岡の医師と私の4人でスタートし、症例の共有や意見交換などを行っていました。この仕組みを拡大し、研究会や院内セミナーの実況中継や、白内障手術などカメラマンの腕に左右されない固定型の手術の中継などを実現できればいいなと思っています」

IT活用による業務効率化の最大のメリットは、それによって人間しかできないことに集中できる環境と時間を生み出すこと。小林院長の数々の取り組みの根底にあるのは、本業に集中することによって動物医療の充実を図り、動物と飼い主の双方を幸せにしたいという願いである。

※ ペットフード工業協会調べ(2005年)
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掲載企業概要 Company Profile
成城こばやし動物病院
院長 小林元郎
設立 1993年9月
事業内容 イヌ・ネコの診療・治療
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