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社員が増えると事務負担も倍増?

事業の拡大には優れた人材の雇用が不可欠です。といっても小さな企業で人を増やすのはなかなか大変なこと。今回はそんな人材雇用に伴う悩みと問題点を考えてみました。
社員が増えると準備もいろいろ
 「ようやく景気がよくなって来たぁ!」100円ショップなどに流通させる雑貨の企画や輸入を手がける「駒々商事」を営む川村社長は最近の売り上げの伸び率や顧客の反応から、景気回復の感触に自信が出てきました。
 100円ショップでは定番商品の売り上げもさることながら、こんなものが100円で買えるの?という意外性のある商品をおいて衝動買いを起こさせるのがポイント。そのため入れ替える商品の目利き、とくに意外性のある商品をいかに安く仕入れるかが重要なポイントなのです。
 いい商品を探す目利きには、いろいろな視点を持った人材の強化が必要不可欠。とくに流行や話題に敏感な若い世代の意見を取り入れることは重要です。川村社長は景気の動向とこれからの商売と将来に向けて人材育成を考え、新入社員を2人採用することにしました。
 2人というと少なく感じますが、駒々商事はもともと9人の小さな会社なので、2人の増員はこれまで例のないチャレンジだったりします。
 しかし、社員を増やすといっても実際はそう簡単なことではありません。ざっと必要なものを考えても、
(1) 社員のデスクスペース
(2) 机やロッカーなどの什器の補充
(3) パソコンとそれに伴うメールアドレスの取得
(4) 名刺や携帯電話などの営業ツールの準備
(5) 社員教育のためのスタッフと規則
……と、想像するだけでなかなかたいへんです。
 デスクスペースや什器を増やすとなると、引っ越しなども考えなければなりませんし、IT関連機器の導入コストも意外にかかります。とくに教育のための手間がかかりすぎると、今までの業務に支障が出てしまうため、効率のよい手法を考えなければなりません。
 川村社長は一つ一つ検討した結果、必要な予算は銀行から借り受け、これまで使用していたストックヤードを新たに借りた別のビルに移動することで増員用のスペースを確保して対処することにしました。
 社員の教育については、川村社長も含めた従業員がまとまった期間ごとに集中して行うことにしました。空いている社員が交代で対応する方式だと、責任意識が乏しくなり教育がいい加減になったり、一貫した教育ができないために仕事を覚えさせるのに効率が悪いということが過去の経験で分かっていたからです。しばらくは大変ですが、これも新入社員が育つまでの辛抱です。
目に見えない情報管理も大切
 しかし、社員を増やすのに必要なのはこういった目に見える問題だけではありません。事務手続き上の負荷も少人数での比ではなくなってしまうのです。とくに少人数では手間のかからなかった給与の算出、社会保険などの福利厚生の手続きといった運営上の手続きの負担は大きなものになります。
 今回の事例に挙げている駒々商事のように10人未満の小規模企業だと、労働時間や有給等を定めた就業規則や給与等の算出の元となる賃金規程を定めていない場合が多くあります。しかし、10人以上に増えると法律上も作成の必要があるほか、公平な給与体系を作るためにも規則作りは不可欠です。
 またこうした規定が用意してある場合でも、会社の運用実態に合っていない場合や、給与の算出方法といった細部まで詰めてある企業は少ないのが現状です。
 社員が増えると当然、収入・支出も増えます。会社の経営は収支が合わなければ意味がありません。どんぶり勘定で経営をしていると、いつの間にか大赤字になって会社が傾くなんてこともあり得ます。
 そうならないよう毎月の売り上げを把握し、実態にあった収支になるよう支出を調整していく必要があります。そのためには、給与算出の元となる就業時間などを明確にするためのタイムカードなどのルール規定と会社の売り上げなどを把握し、月次決算などで会社の経営状況をしっかりと理解しておく必要があります。
経理・事務負担を軽減するIT活用って?
 会計処理も人数が少ないうちは、手書き伝票でも何とか整理や把握ができますが社員が増え、取り扱う情報の分母が増えると手書き伝票で経理内容を管理するのは非常に面倒になります。
 そんなときに事務処理の負荷を軽減できるのがパソコンで利用できる会計ソフトです。会計ソフトを使用するメリットは、
(1) 帳簿作成のスピードが格段にアップ
(2) 収支や資産などの情報が素早く算出できる
(3) 帳簿類の保存スペースの削減
(4) 決算などの処理に必要な書類の出力フォーマットに対応
 といったメリットがあります。とくに収支の把握は日々ごとに細かくチェックできるので、前述のような売り上げの把握が容易にできるのが特徴です。
 こうした細かい売り上げの変化を把握することにより、対策のための経営判断などを素早く行え、小回りのきく経営につながります。
 会計ソフトはこのように便利な反面、紙とは別の弱点もあります。それはデータの安全性です。例えばパソコンを交換するとソフトの再インストールが必要であったり、そのパソコンでしか情報を扱えなかったり、パソコンのトラブルが原因でデータが消えてしまったりする可能性があるのです。
 こうしたパソコンを利用する上での欠点を解決するため、最近では企業向けの会計サービスとして、ASPと呼ばれるシステムが提供されています。ASPはApplication Service Providerの略で、月ごとの利用料を払う形で会計ソフトのようなビジネスソフトをインターネット経由でレンタルするプロバイダのこと。
 ASPによるサービスを使うメリットは、インターネットブラウザが動作する環境であれば、いつでもどこでも利用できるほか、データの保守やメンテナンスもサービス事業者が行ってくれるというメリットがあります。また、セキュリティ対策も十分に行われているため、社内で隔離するよりも安全性が高いのが特徴。どちらを使うかはニーズに合わせて選ぶとよいでしょう。
最小限のコストで最大の成果を
 駒々商事も今回の増員で社員が10人以上に増えるため、就業規則や賃金規程を作成することにしました。こうした就業規則や賃金体系の相談は契約している税理士や社会保険労務士に相談すると実態にあったものを提案してくれます。
 面倒な会計処理については、会計ソフトを導入して社内で運用することも考えましたが、手間などを考えた結果、川村社長は必要な書類を1週間ごとにまとめて税理士さんに送って、データ入力をしてもらい、集計したデータを1週ごとに送ってもらうことになりました。ソフトは税理士の使用しているものと揃えることにより、データの互換性と保全を確保しました。川村社長は会社の規模と仕事内容を考えると、週単位の集計で十分と考えたのです。杓子定規にすべてこなそうとせず、会社の規模に合った無理なくできる運営方法を考えるのがうまくいくコツです。
ポイントはここだ!
社員を増やすときは?
1
必要なモノ・カネ・教育の手段を考えよう
2
社員が10人以上に増えると就業規則や賃金規程が必要になる
3
機材などの物理コストのほかに運用コストも考えよう
4
無理せず実態にあった運営方法を考えよう
社員を雇うということは、行える仕事量が増えると同時に、事務処理も煩雑になるものです。
是非、ITの活用を検討しましょう。
四ッ柳 茂樹/有限会社OCL 取締役社長 中小企業診断士・ITコ−ディネ−タ