法人のお客さまビジネスアドバンスコンテンツメニューリーダー戦略考リーダーズ・チョイスSlow Time取材の舞台裏知っ得キーワードコムこむ国物語ICT用語ガイドほっとこむ通信導入事例ビジネスアドバンスに関するお問い合わせ/お申し込み

ビジネスアドバンス ココロとアタマを知的にほぐすWebマガジン

Slow Time - 時代を疾走するビジネスパーソンを癒す、上質な大人のためのトレンド情報


このコーナーはBusiness ADVANCEの本誌に掲載された内容を拡大・再編集してお届けしています。

フライフィッシングに魅せられる

映画がきっかけだった
那珂川水系にてフライ開始

 『リバー・ランズ・スルー・イット』という映画がある。監督はロバート・レッドフォード、主演はブラッド・ピットで家族愛や兄弟愛を綴った映画だが、何よりフライフィッシングの醍醐味を余すところなく描いた作品として知られている。
 老人がフライ(毛鉤:けばり)に糸を結んでいるファーストシーンを覚えている人も多いはずだ。そして緑に囲まれ、光り輝く川面で自然と一体となり、自在にフライラインを操るシーンときたら…この映画に魅せられて、フライフィッシングを始めたというフライフィッシャーが数多いというのもうなづける。



釣りは食料獲得の手段

レインボートラウト(吾妻川)

 フライフィッシングとは、昆虫や小魚を模したフライ(毛鉤)を使う西洋式毛鉤釣りのことである。日本の毛鉤を使った釣りと大きく異なるのは、フライロッドと呼ばれる専用の竿と、フライラインと呼ばれる特殊なライン(糸)を使い、至近距離から離れたポイントにまで自在にフライを投げ入れることができる点だ。
 そもそも釣りの起源は、食料獲得のための狩猟として紀元前7,500年頃に遡り、フライを使っての釣りが現れるのは紀元前2世紀頃だとされている。「古代マケドニア人が赤い糸を巻いた毛鉤で鱒を釣っていた」というローマ人の記録があり、これがフライフィッシングの嚆矢(こうし)ともされる。
 フライフィッシングを「紳士の嗜(たしな)み」とするイギリスへ伝わるのは14〜15世紀まで待たねばならない。交通や情報手段が乏しかったせいもあってか、伝播には実に1,500年以上もの年月を要した。
 1496年にはイギリスの修道院副院長ジュリアナ・バーナーズがフライフィッシングを体系的にまとめた本を出版した。内容はロッド(竿)、馬のしっぽで編んだライン(糸)、釣り鉤(ばり)の作り方、釣り方などのほか、その心得やマナーにまでおよぶ。その歴史の古さもさることながら、世界最初のフライフィッシング入門書が女性によって書かれているとは驚きだ。
 魚の博物誌や生態、釣りの技術、調理法にまで言及し、「釣りのバイブル」といわれるアイザック・ウォルトンの『釣魚大全』が出版されるのは1653年。餌釣りによる釣りの本だが、1673年にチャールス・コットンによって「清流で鱒とグレイリングを釣る方法を教えます」という第2部が付け足されると、その名声はさらに高まった。釣りは、それまでの職業漁師の釣りからゲーム性を帯びたゲームフィッシングへと移行すると、フェアプレイが重んじられ、貴族の嗜みとして生活の一部に組み入れられていった。
 イギリス流のフライフィッシングがさらに飛躍し、貴族ばかりでなく誰もが楽しめるスポーツフィッシングとして開花するのは19世紀末にアメリカに渡ってから。ちなみに日本でフライフィッシングが本格的に始まるのは1960〜70年代に入ってからで、まだ半世紀ほどの歴史でしかない。

それは中禅寺湖で始まった

ヤマメ

 現在、日本の釣り人口は1,000万人といわれ、ルアーが120万〜130万人、フライフィッシャーは6万人を超える。今でこそスポーツフィッシング全盛の時代だが、かつての日本では魚を効率よく釣るための“職漁師的な釣り”しか行われていなかった。餌釣りか、日本伝統の毛鉤を使った「テンカラ」と呼ばれる脈釣りである。
 日本に最初にスポーツフィッシングをもたらしたのは誰なのか定かではない。しかし、明治時代後半に、奥日光でフライフィッシングを楽しんでいた外国人がいた。幕末から明治元年にかけ、薩長側の武器弾薬を取り扱って巨万の富を築き、長崎港を見下ろす高台に「グラバー邸」と呼ばれる邸宅を構えていた、トーマス・B・グラバーである。
 零落し、老境を迎えていたグラバーは当時、国際的な避暑地として知られていた日光の中禅寺湖畔に別荘を建て、夏は鱒釣り三昧の生活を送った。日光とその周辺の川や湖が故郷スコットランドに似ていたこともあり、望郷の想いとともにフライフィッシングに興じていたそうだ。英国大使館員のハロルド・パーレットとともにアメリカのコロラド州から川鱒(ブルックトラウト)の卵を取り寄せ、戦場ヶ原を縫い中禅寺湖へと注ぐ湯川に放流した。明治35年のことで、その100年後にあたる2002年には「ブルック放流100周年」の記念式典も行われた。
 いま中禅寺湖とその周辺の川は、ブルックトラウトの生息地として知られ、解禁とともに多くのルアーフィッシャーやフライフィッシャーがスポーツフィッシングを楽しむ。しかし、100年以上も前に、グラバーがフライフィッシングに興じ、ブルックトラウトを移入放流し、鱒釣りの聖地としたことを知る者は多くはない。
 フライフィッシングは川を読み、テクニックを駆使し、疑似餌を作る(タイイング)など、非常にハードルの多いスポーツともいえる。しかし、先人が捧げた情熱や歴史を知り、自然への畏敬が加われば、極めて奥深い趣味となる。この夏、フライフィッシングはさまざまな愉しみを提供してくれるに違いない。

【監修・写真協力】
フライフィッシングショップ『ハーミット』
http://www.hermit-jp.com/index.html

知っ得データベース

<フライフィッシング情報ページ>
■渓流のドライ フライフィッシング
http://www001.upp.so-net.ne.jp/dryfly/

■フライフィッシング・リバーサイド フライのサイト
http://www.flyfishing.jp/

■フライフィッシングマニア
http://royalwolf.xsrv.jp/

■Flyfishing My Life /私のフライフィッシング
http://freestone.jpn.org/fml/

■フライフィッシングに使う水生昆虫
http://www.h2.dion.ne.jp/~aqinsect/

<釣りに関する総合サイト>
■釣りの検索エンジン『Anglers Net』
http://www.anglers-net.com/

■全国管理釣場データベース『管理釣り場ドットコム』
http://www.kanritsuriba.com/


バックナンバー