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2011年11月10日公開

G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長 橘・フクシマ・咲江 氏

グローバル“人財”育成法

G&S Global Advisors Inc.
代表取締役社長
橘・フクシマ・咲江 氏

“心地よい日本”で内向化する若者たち

――企業はまだしも、個人、特に若者たちが内向きになっているという指摘があります。

残念ながら、それはその通りで、若い世代ほど「内向き化」の傾向が顕著に現われているといえます。たとえば、アメリカにおける留学生の数は、最近明らかに日本だけが大きく数を減らしています。昨年のハーバード大学学部の新入生のうち、日本人はたったの1名。MBA合格者も同様で、私が出たスタンフォード大学でも、3名しか受からなかったと聞いています。10年ほど前までは少なくとも5名から10名以上の日本人が毎年合格していましたので、すっかり様変わりしたといえるでしょう。

合格者が激減した理由は、中国や韓国からの応募者が急増しているのに反して、日本は企業からの派遣が減り、そもそも応募の数が少なくなったことが1つ。次に、アジアの中で比較しても日本の応募者の英語力が格段に劣っているというのが、その2つ目の理由です。ちなみに10年くらい前までは、韓国のTOFELのスコアは日本と同じくらいだったのに、現在ははるか上の存在となりました。それも韓国だけでなく、日本は中国などを含むアジア主要国の中でスコアが一番低くなってしまったのです。

日本人の合格者が減ったもう1つの大きな原因は、マネジメント経験の不足です。MBAに応募してくるビジネスマンの平均年齢は27.5歳くらい。韓国や中国の企業では、この年齢ならある程度仕事を任され部下もいるという、マネジメント経験者がほとんどです。一転して日本の企業では、この年齢では一人前として扱ってもらえず、まだまだ勉強中の身。ビジネススクールとしてどちらがより授業に貢献してくれるかという判断をすると、当然、マネジメント経験のある中国や韓国の応募者ということになります。新入社員を丁寧にじっくり育てるという日本企業特有の慣習が、ことMBAに関しては裏目に出た形ですね。これらの理由から、必然的に日本人の合格者がMBAでは目に見えて減ってきました。もちろんMBAだけがグローバルな人財を輩出する手段というわけではありませんが、これは日本人の国際競争力が低下しているひとつの証左といえるのではないでしょうか。

――合格者数はともかく、その背景にある事情は憂慮すべきものがありますね。

そもそも、日本ではいま『草食系』という言葉が流行っているように、自立できないひ弱な男性が多いですよね(笑)。しかし、中国や韓国にはまだまだハングリー精神があって、ことに韓国ではその是非は別として徴兵制度があるせいか、非常に自律的でしっかりした人物が多い印象を受けます。日本の若者を見ると、人間としての生命力も同様に低下しているのではないか。そんな危惧さえ抱きます。

――なぜ日本の若者たちは、それほどひ弱で、内向きになってしまったのでしょうか。

JTBの2年ほど前の調査で、20代の男女に「海外へ行きたいですか?」と訊いたものがあります。その中で44%もの若者が「行きたくない」と答えています。男性は52%とのことでした。その理由の第1位は「お金がないから」、2位が「英語ができない」。「海外に関心がない」というのが第3位。そして4番目の理由が「危険な目に遭いたくない」「伝染病にかかりたくない」という、安全面を危惧したものでした。私にとっては、20代の若者がそもそも「海外に行きたくない」というのも驚きでしたが、その理由に安全性や衛生面を心配したものがあることが大きなショックでした。

つまり若者は、何を食べてもおいしくて、何をしても安全で、どこへ行っても清潔で、電車も宅配便も時間通りにやって来る。こんなものすごく便利で住みやすい日本を離れたくないわけですね。その点では、私自身も海外から日本へ帰ってくるとほっとする部分がありますので、理解できないわけでもありません。しかし、それも程度の問題で、現在の若者はこの快適な社会にどっぷり浸かり、知らず知らずのうちに「生活を変えたくない」という、余りにもディフェンシブな性格になってしまったというのが私の分析です。

――日本の心地よさがグローバル化を阻むひとつの要因になっているわけですね。

橘・フクシマ・咲江 氏ただ、この“心地よい日本”こそが、これから私たちがグローバル競争において優位に立てる貴重な分野でもあるのです。私はここ2年程、中国で行われた経営者フォーラムに参加していますが、その際に日本から学びたいものとして、中国の経営者の誰もが口を揃えて挙げていたのは「品質」「安全性」「サービス」の3つ。これは“心地よい日本”を支える基本となっているものです。国内では若者のグローバル化を阻むひとつの要因となっているものが、海外に出ると、優れたビジネス・モデルになるわけですね。

たとえば、ヤマト運輸は中国・上海で日本と全く同じサービスを提供する『宅急便』を普及させようといま頑張っています。また、『おもてなしの心』で知られる石川県の旅館・加賀屋も、台湾で現地の人を教育して、日本と同じサービスを展開する宿泊施設を誕生させました。私はどちらもぜひ成功してほしいと強く願っています。

彼らが実践するホスピタリティは、「相手が何を望んでいるか事前に察知し、それ以上のものを提供する」というビジネスの基本にも合致しています。これは他のビジネスでもいろいろと応用が利く、日本人の持っているすばらしい資質のひとつでしょう。他にも“日本発”の世界に通用するものはたくさんあるはずです。それらのビジネス・モデルをどんどん日本から発信していくというのも、グローバル化の大きな手段だと思います。

「グローバル・スタンダード」とは、何も欧米から押し付けられるものではありません。以前、日本発の製造業の「カイゼン(改善)」活動が“Kaizen”として世界的に広まったように、日本から積極的に発信して、そのサービスや商品が高い評価を得て、世界中で共有できれば、それが「グローバル・スタンダード」足り得るわけです。それくらいの高い志と、それを実行していくたくましさがないと、なかなかグローバルで通用するビジネスは生まれないのではないでしょうか。

――その意味では、これからの日本を背負って立つ若者たちのひ弱さが、またまた心配になってきました(笑)。

残念ながら、企業だけの力ではその克服には限りがあります。重要なのは、やはり自立・自律した人間を形成する子どもの頃からの教育です。アメリカのホームステイでは、日本から来た18歳くらいの男性が一番敬遠されるそうです。なぜなら、いつもボ〜ッとしていて、出されたものを食べるだけ。何も手伝おうとしないし、コミュニケーションさえ取ろうとしないからとのことです。

このような自分で自分の面倒をみられない自立していない子が、将来グローバル化された世界でどうやって生きていけるでしょうか!?私は“草食系男子”の繁殖に、大きな危惧を抱いています。権利には責任が伴うという当たり前のことをしっかりと教え、自立・自律を養う教育を行うことが、これからの日本人が真にグローバル化するには欠かせない最低条件だと私は思っています。しかしそのような中で、今回の震災で多くの若者がボランティアで被災地に行ったというニュースには大変励まされました。

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