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2011年11月10日公開

G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長 橘・フクシマ・咲江 氏

グローバル“人財”育成法

G&S Global Advisors Inc.
代表取締役社長
橘・フクシマ・咲江 氏

混迷する世界経済、留まるところを知らない円高…。グローバルへの進出を加速させる日本企業にとってしかし、その人材不足は深刻である。人材を「企業の財(たから)」として捉え、多くの国際的なエグゼクティブをヘッド・ハンティングした経験を持つ橘・フクシマ・咲江氏に、グローバル時代に求められる人財について伺った。

橘・フクシマ・咲江(たちばな・ふくしま・さきえ)

清泉女子大学卒。ハーバード大学教育学修士、スタンフォード大学修士(MBA)修了。1991年世界最大手の人材コンサルティング会社コーン・フェリー・インターナショナルに入社し、日本法人の代表として活躍する傍ら、コーン・フェリー米国本社の取締役も12年間務めた。2010年にアジア・パシフィック地域最高顧問に就任すると同時にG&S Global Advisors Inc.を設立し、代表取締役社長に就任。ソニー、花王、ベネッセなどで初の女性社外取締役を務め、現在は味の素、ブリヂストンの社外取締役を務めながら、政府の諮問委員や経済同友会の副代表幹事として、人財のグローバル化に力を尽くす。著書に『人財革命』『売れる人材』『自信のなさは努力で埋められます』『40歳までの売れるキャリアの作り方』など多数。人財のグローバル化、ガバナンスに関する講演多数。

10年以上遅れている人財のグローバル化

――グローバルで通用する人財の育成が、日本は20年遅れているとおっしゃっています。

私は昨年までコーン・フェリー・インターナショナルで約20年間、管理職や重役クラスを対象とした「エグゼクティブ・サーチ」に携わってきました。いわゆるヘッド・ハンティングです。海外のクライアント企業のニーズを満たすべく、リサーチをかけ候補を絞り、時には1日に7人もの候補者と面談することもありました。それでもクライアントから「なぜ、1億人以上もいる日本で我々の要件を満たす人財がいないのか!?探し足りないのではないか」と問われる日々でした。

私はこれらの経験から、日本にはグローバルに活躍できる人財が決定的に不足していると強く感じ、2000年に拙著『売れる人材』の中でこのことを散々嘆いて、警告を発したつもりでした。ところが、2007年に7冊目の『人財革命』を著すにあたって改めて振り返ってみると、その状況が全く変わっていないことに気づき、愕然としました。

実は他のアジアの国々も、10年前は日本と同じようにグローバルな人財の不足に悩んでいました。当時、韓国や中国の同僚と「英語の話せる国際的なエグゼクティブがいなくて大変だね」とよくこぼし合っていたものです。しかし、その後の10年間に韓国や中国は国家を挙げてこの課題に取り組み、一気に日本との差を広げてしまった。それに対して日本におけるグローバルな人財不足は相変わらずで、結果的にアジアにおいても10年、欧米諸国と比べると、それ以上の遅れを取ってしまったといっていいのではないでしょうか。

いま日本は、グローバルな人財の育成に一刻の猶予も許されない状況に追い詰められていると思っています。昨年、コーン・フェリー社のアジア・パシフィック地域最高顧問に就任したのを機に、G&S Global Advisors Inc.という会社を設立しましたが、私はこの会社をベースに、これからの日本に欠かせないグローバルな人財の早急な育成を、企業や社会に訴えかけていきたいと考えています。

――人財のグローバル化で最も大事なことは何でしょうか。

ひと言でいうと、人をカテゴライズして見ないということです。

国でも企業でも総体として見た場合、その特性みたいなものをそれぞれにまとめることはできると思います。たとえば「日本人は大人しい」というような国民性や、「あの会社は冒険心に富んでいる」といった企業風土がそれです。しかし、多様な文化がせめぎ合うところで長年、人と企業をマッチングさせてきてたどり着いた結論は、そんなカテゴライズは無意味で「その人は、その人」でしかないということです。

私がソニーの社外取締役の時、一緒に仕事をしたハワード・ストリンガーというCEOがいますが、彼はウェールズ出身のイギリス人です。後にアメリカに移り、長年放送局などのメディアで経営者として、エンターテインメント業界の仕事に携わっていました。そしてソニーの出井元会長と出会い説得され、給料を前職より落として入社。アメリカのトップを務めた後、グローバルのCEOとなりました。当たり前のことですが、こういった彼のキャリア一つひとつが、ハワードという人柄を形作っているのです。ですから「イギリス人だから」とか、「エンターテインメントのエグゼクティブだから」という一面だけで、彼を括れるわけではありません。結局、そういう経験や個性はすべてその人の一部であり、構成要素だということです。つまり「Aさんは、そういう全てを持った人」であるというのが、私が長年人財コンサルティングに関わって得たシンプルな結論でした。

――「イギリス人」や「エンタテインメント・エグゼクティブ」はハワードさんの数ある個性のうちの一つに過ぎないというわけですね。

その通りです。ですから「アメリカ人だから」とか、「中国人だから」と最初から決めつけることなく、まずひとりの人間としてコミュニケーションを取る。そうすれば、グローバル化のハードルは意外と簡単に越えられるものなのです。逆にいうと「あの人はアメリカ人の割には…」という“発見”がたくさんできれば、“カテゴライズする”呪縛から解き放たれると思います。これは、最初にステレオタイプの期待をしていたものが徐々に良い意味で裏切られることによって、「その人」の個性が見えてきた証拠といえるからです。

日本人は同じ言語、同質の文化で育った人が大多数なので、異なった資質を持った人を「あの人は○○だから」と分類してしまいがちですが、私は人財のグローバル化を進めるためには、まず「どの国の人財も個人として見よう」と皆さんにいつも語っています。

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