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2011年7月5日公開

株式会社ループス・コミュニケーションズ
代表取締役社長
斉藤 徹 氏
圧倒的な勢いで世界中に浸透するフェイスブック。
“つぶやき”がサプライズを生むツイッター。
いま、ビジネスの世界で大きな注目を集めているのがこれらソーシャルメディアだ。
今回は、その伝道師ともいわれる斉藤徹氏にソーシャルメディア時代のビジネス戦略を伺った。
斉藤 徹(さいとう とおる)
ソーシャルメディアにいち早く注目し、ビジネスにおけるその活用を実践・研究する第一人者として知られる。1985年慶應義塾大学理工学部卒業後、日本IBM株式会社に入社。システム開発などに携わるが、1991年に退職し、株式会社フレックスファームを創業。2004年に同社の株を売却し、翌2005年にソーシャルメディアのコンサルティングを広く手掛ける株式会社ループス・コミュニケーションズを創業した。現在同社は日本国内での企業向けSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)分野でトップシェアを誇っている。著書に『新ソーシャルメディア完全読本』、『ソーシャルメディア・ダイナミクス』などがある。
「フェイスブック(Facebook)」は2004年にアメリカで誕生しました。最初は学生向けのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)だったのですが、それが2006年に一般に開放されて以来、わずか5年でアクティブな会員数は全世界で7億人にのぼっています。現在、世界100ヵ国以上でSNSのトップシェアを誇っており、主要国の中でフェイスブックがトップSNSではない国は、日本をはじめ、中国、韓国など、わずか7ヵ国しかありません。最近は毎年2億人ずつ増えている勘定ですから、来年末には創始者のマーク・ザッカーバーグ氏が目標とした10億人に手が届くでしょう。インドや中国の総人口に匹敵するほど膨大な人々が参加するソーシャルメディアは、フェイスブック以外、他にはもちろんありませんし、毎日フェイスブックを訪れるヘビーユーザーは、現在約3.5億人といわれています。その意味では、まさに人種や国家を超えたバーチャルな巨大社会がWeb上に厳然と存在しているのです。
ICTメディアにおける時代の寵児はグーグルからフェイスブックに移りつつあるというのは、もはや否定しがたい事実でしょう。数字もそれを如実に証明しています。たとえば、現在アメリカのバナー広告の31%をフェイスブックが占めていますし、企業のホームページにどこから流入してきたかという数字でも、フェイスブックが軒並み1位に輝く時代になりました。つまりフェイスブック抜きにはビジネスは考えられない。それがアメリカだけでなく、世界におけるフェイスブックの実情です。
昨年10月期のニールセン調査データ(PCベースの訪問者を対象)では、日本で最大のSNSは「ツイッター(Twitter)」で利用者数1,178万人、次いでミクシィ(mixi)の974万人。フェイスブックはこの2者に大きく離されて282万人という数字でした。ところが今年4月に発表された数字では、フェイスブックの利用者数は何と一気に694万人と2.5倍増。ツイッターは1,549万人、ミクシィも1,251万人とそれぞれ増えていますが、フェイスブック・ユーザーの増加がひと際目立っています。
当初、実名が基本のフェイスブックなどは、匿名が主流の日本のSNS事情に合わないのではないかという意見もあったのですが、ここにきてその魅力に目覚めたファンが一気に増えてきました。実名のメリットは突き詰めると「人脈の創造」に集約できると思っています。実名コミュニティでは、社会人としてリアル社会と同様の感覚でネット上での交流が可能です。しかも、実名のために相手の情報を検索することも容易です。このようにリアルとネットが自然に交差して、ビジネスや趣味の人脈が創造されていく。これが最大のメリットだと感じていますし、特にビジネスの世界でSNSを利用しようとするならば、実名は必須だと考えています。
フェイスブックの魅力は一度実際に自分で試さないと、なかなか伝わるものではありません。いま日本ではその魅力がまさに社会の隅々まで伝播するように、急速に広がりつつあると私は感じています。
今後フェイスブックは日本でも普及するのはほぼ間違いないと思いますし、SNSのグローバルスタンダードとしてこれから長く世界で君臨するはずです。
ソーシャルメディアを従来のWebにあった検索エンジンや、仲間内で集まって楽しむコミュニティの延長線上にあるメディアだと考えると大きな間違いを犯すことになります。ひとつ例を挙げれば、ここでは現実の社会と同じようにいろいろな噂話が囁かれています。そして、その口コミで伝わる情報は現実の社会と違ってすさまじいスピードで全世界へ広がっていきます。もし自社の悪い噂がここで広まり、その対応を誤れば、場合によっては企業存亡の危機に至る場合さえあるのです。
実際、2008年にアメリカで起こった2つの航空機事故は、ソーシャルメディアの対応を巡って大きく明暗を分けることとなりました。その一方の主役であるコンチネンタル航空は12月20日にデンバー空港で離陸に失敗し、滑走路をオーバーランする事故を起こしてしまいました。乗客のマイク・ウィルソンさんはツイッターでこの事故の模様を実況し、生々しい事故写真をリアルタイムで発信します。これを見たメディアはコンチネンタル航空が正式に事故を発表するより前に、ウィルソンさんに取材を始めました。ところが、コンチネンタル航空はこのツイッターの情報を一切無視。自身の公式発表で都合のよい情報を流そうとしましたが、記者たちに信用されず、結局メディアはウィルソンさんの情報や写真をもとにニュースを報道しました。
一方、事故を起こしたにも関わらず、その波紋を最小限に留めたのはサウスウエスト航空でした。同じ年の7月、フライト時にバスケットボール大の穴が機体に開いていることが発見され、サウスウエスト機は緊急着陸。乗客たちはその穴の様子をツイートでつぶやき、動画をYouTubeに投稿し始めます。しかし、ツイッターを利用した顧客サポートに業界でいち早く取り組んでいた同社は、ツイッター責任者のクリスティ・デイ氏が直ちに企業プレスリリースへのリンクをツイート。そこには「すべての航空機を今晩中に検査する」ことと「すべての乗客に運賃を払い戻す」ということが宣言されていました。当時このツイッターを追いかけていたフォロワーは約3万人。同社は朝のニュースでこの事件がメディアで詳しく報道される前に、自らその事実関係を発表。その対応策まで乗客に素早く伝えることができたのです。
その通りです。ソーシャルメディアに消極的だったコンチネンタル航空は人々からの非難を食い止めることができず、いわゆる“炎上”する事態になってしまいました。一方、それをうまく活用したサウスウエスト航空は企業ダメージを最小限に留めることに成功したわけです。
インターネットの発達で誰もが情報発信者となれる“ソーシャル革命”の時代に、どんな大企業でも隠し事はできませんし、その結果に頬かむりすることもできません。しかし、事故や不祥事はどの企業でも起こり得ます。その際大事になるのは、日常からいかに顧客と良好なコミュニケーションを築けているかという点だと思います。その意味では、ソーシャルメディアは後ほど紹介するように、使い方を間違わなければ顧客と信頼関係を構築するための“最高の道具”となる可能性を秘めているのです。
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