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2011年1月12日公開

法政大学大学院 政策創造研究科 教授 坂本 光司 氏

“大切にしたい会社”に学ぶ経営術
「景気超越型企業」のつくり方

法政大学大学院 政策創造研究科 教授
坂本 光司 氏

『日本でいちばん大切にしたい会社』が、“泣かせるビジネス書”として、多くのビジネスマンの共感を呼んでいる。
その著者・坂本光司氏は、40年間で約6,300社の中小企業に足を運んだ、筋金入りのフィールドワーカーだ。
氏が発見した“大切にしたい会社”に、リーダーが学ぶべきことを伺った。

坂本 光司(さかもと こうじ)

1947年静岡県生まれ。法政大学経営学部卒業。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授等を経て、現在、法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同大学院静岡サテライトキャンパス長などを務める。専門は中小企業経営論、地域経済論、福祉産業論。これまでの40年間で、全国各地の中小企業6,300社あまりに自ら足を運び、現場を重視した研究を行っている。そのフィールドワークの成果をまとめた『日本でいちばん大切にしたい会社』(2008年刊)は多くのビジネスマンの共感を呼んだ。他に『なぜこの会社はモチベーションが高いのか』、『選ばれる大企業・捨てられる大企業』など、著書多数。

訪ねた企業は6,300社 フィールドワークが私の原点

――『日本でいちばん大切にしたい会社』をはじめ、先生の著書が多くのビジネスマンの共感を得ています。

ありがとうございます。『日本でいちばん大切にしたい会社』では、私がこれまで40年間、自ら足を運んで調べた中小企業約6,300社のうち、長期にわたり好業績を維持している企業や、真に世のため人のためになる経営に取り組んでいる価値ある企業を紹介しました。

そこには、世の中の景気に左右されず、30年以上の長期にわたって着実に成長している企業がたくさんあるのです。そのような企業は一般的な企業といったいどこが違うのか。私は、高い理念を掲げ、使命感を果たす企業こそが社会に求められていると思っていますし、それを実現するには、社員のモチベーションや顧客の満足度が高いことが前提だと確信しています。そこに誰もが納得する理想の企業像があるからこそ、多くの方々に感動していただいたと思っています。

――そもそも、6,300社あまりの企業を訪ねるきっかけは何だったのでしょうか。

もともと私は学問として中小企業の経営論を勉強してきたわけではありません。大学で経営学は学びましたが、中小企業に関しては正直なところ「社会的な分業システムの底辺で頑張っていらっしゃる方々」という程度の認識しかなかったのです。ところが、大学を卒業してある自治体に地方公務員として就職したところ、たまたま中小企業の景気調査やその対策を考える部署に配属され、中小企業の現実と直面せざるを得ないことになったのです。

現場を訪ねて本当に驚きました。みなさん大変な努力をしていらっしゃる。ところが、ほとんど報われない。「明日、手形が落ちないけど、どうしたらいいんだ!」とか、「取引先が無理なコストダウンを強いてきたが、受けなければ仕事を回さないと脅かされている」といったことが日常茶飯事です。たまたま訪ねた私に、みなさん縋(すが)るように助けを求められる。当時、私はまだ二十歳そこそこですよ。そんな若造に、逃げ出したくなるような難問が浴びせられるわけです。そこで素直に「私にはわかりません」と断ってもよかったのですが、そのあまりの真剣さに「自分のできることで少しでもお役に立てるなら…」と思ったのが最初です。

――当時は公務員で、経営コンサルタントではなかったんですよね。それが、なぜ?

目の前に困っている人がいれば助けてあげたいというのが、人間の本能じゃないですか。ただその一心でしたね。若いですから、尚更だったのかもしれません。しかし、それからいろいろ勉強するようになって、現在の私がいるわけですから、感謝しなければならないのは、むしろ私の方かもしれませんね。

とにかく、そういう難問を知り合いの公認会計士や弁護士に尋ねたり、自ら調べたりして、業務外の時間でアドバイスするようになったわけです。すると、そのうちに私の存在が中小企業の経営者の間で知れ渡ることになりまして、いろいろな企業から相談が来るようになりました。本来の業務の合間に、1日に5社も6社も訪ねてお話をしていた時期もあります。もちろんボランティアですよ。

しかし、公務員としては本来の業務を逸脱しているわけですから、職場でいろいろな軋轢が生まれる原因にもなりました。最後は出先機関の課長を務めましたが、結局、公務員生活は15年でピリオドを打ち、いまの研究の道に入ったというわけです。

――先生の研究は、図らずも中小企業の生々しい経営の現場から始まっているわけですね。

少し大げさにいわせていただくと、それが私の存在価値であり、誇りだと思っています。現場に経営学の理論を押し付けるのではなく、現場の事実をベースに理論を構築する。つまり、「どうしたら目の前にいる困った人を助けることができるか」をずっと考えてきたのです。私の“物差し”は、すべて現場。それしかありません。

いまもその姿勢は全く変わりません。私は年間で150社あまりの中小企業を訪ねていますが、そのすべてに私自身で電話を入れ、アポを取ります。もちろん、すべての会社が取材をOKしてくれるわけではありませんが、そんな企業は本当にもったいないことをしていると思いますよ。なぜなら、私の場合は取材が3割で、あとは経営上のアドバイスです。彼らは有益なチャンスを自ら逃していることになるのですから(笑)。

いまは大学院の授業もあり講演も多く頼まれますから、企業を訪ねるのは大変です。しかし、これを止めたら私の存在意義はありません。最近は半年に1日ほどしか休みはありませんが、これも私を育ててくれた中小企業への恩返しだと思って頑張っています。

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