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ICT用語ガイド
GUIDE 024 デジタルサイネージ(Digital Signage)
〜ネットワークが創り出す新しいメディアの可能性〜

パート1 新しいメディアとして注目されるデジタルサイネージ

1-1:デジタルサイネージとは何か

デジタルサイネージ(電子看板)とは、液晶、プラズマ、LEDなどを利用し、広告やプロモーション映像などを放映するツールです。従来の紙媒体と比べ、動画や音を利用できるため情報の訴求・アピール度が高く、インターネットなどのネットワークを利用して簡単にコンテンツの更新ができることが特長です。

デジタルサイネージ登場の背景

デジタルサイネージが実現した背景には、フラットディスプレイの低価格化、ブロードバンドの普及と低価格化など、さまざまな技術の進歩があります。しかし、それだけではありません。企業の広告ニーズが変化していることも原因のひとつに挙げられます。

また、ライフスタイルやビジネススタイルの変化もあり、従来のラジオ、テレビ、新聞、雑誌などの屋内型広告媒体を補完する、効果的な屋外でのメディアが必要となってきました。さらに、インターネットや携帯電話の普及で人々が情報を得るソースが変わり、不特定多数をターゲットにしたマス広告ではなくターゲットを絞った広告展開やきめ細かな広告展開が注目されてきています。その一例として、地域をターゲットとした広告はすでにCATVなどが行っており、またアメリカではユーザーのIPアドレスや郵便番号から地域を特定し、検索サイトなどに地域に合わせた広告を表示するサービスが提供されています。

また、マーケティングの観点からは、購入決定に一番近いタイミングでの広告やプロモーションにより、売り上げにつながることが確認されています。A社の商品を購入する予定で店舗を訪れた消費者が、店頭で他の商品を見たり他の情報を見ることでB社の商品を購入するケースがあるため、より消費行動に近い場面での販促ツールとしてデジタルサイネージが注目されているのです。

デジタルサイネージの利用例

このような特長をもつデジタルサイネージは今や街中のいたるところで目にすることができます。

百貨店、量販店、コンビニエンスストアなどの店内ではプロモーション映像を放映していますし、電車内の動画広告や、公共施設や商業施設などでの情報発信にも利用されています。大きさも3インチ程度のものから100インチ以上の大型画面、また画面の種類も液晶、プラズマ、LEDなどがあり、電子ペーパーによる実験なども行われています。

これまでにもビデオやDVDを利用して、店頭でプロモーション映像を放映することが行われてきましたが、ただ同じコンテンツを繰り返すだけのものでした。しかしデジタルサイネージは、場所や時間、天候などに合わせ自由にコンテンツを組み替えて放映でき、さらに急な対応が必要となった場合はテロップを流すこともできます。また、タッチパネル方式のディスプレイを操作することでユーザーが必要な情報を見たり、携帯電話をかざすことで独自の情報やショッピングモールのクーポンを取り込むなどインタラクティブな機能を搭載しているものもあります。これらはビデオやDVDによるプロモーション映像では実現できなかった機能であり、不特定多数をターゲットとしながらもニーズによっては個人対応が可能といったデジタルサイネージの特長のひとつといえます。

海外におけるデジタルサイネージの活用状況

デジタルサイネージの利用は特にアメリカ(北米)で多く、次いでヨーロッパやアジアで利用されています。

アメリカでは、レストランやカフェ、ショッピングモール、地下鉄などに多く設置されており、ニューヨークではビルの壁面全体に設置されていたり、ビルの窓以外の部分に設置された多数のデジタルサイネージでひとつの映像を表示する例などもあります。また、広告を放映するだけでなく、カフェに設置されたデジタルサイネージを利用してオンラインで商品を見たり、広告や企業情報などに利用されていない時間帯に行方不明者情報を放映するなど、さまざまな目的に利用されています。アメリカでデジタルサイネージは「Out-of-Home Video」広告と呼ばれており、デジタルサイネージの普及促進のために、大手メディア関連企業17社が参加する団体OVAB(Out-of-home Video Advertising Bureau)が活動しています。
一方、ヨーロッパでもデジタルサイネージは活用されています。2007年11月にロンドンでオープンした日本ブランドのアパレルショップでは、店内に24面のデジタルサイネージが設置され、さまざまな映像や企業ロゴを使ったプロモーション映像とリンクされています。このロゴは、ユーザーがオンラインで自由に加工して遊べるようになっており、店頭プロモーションのひとつに利用されています。特に北欧ではデジタルサイネージが多く利用されているようで、アムステルダムでは、タッチパネルを操作してWebカメラで自分と背景を撮影し、メールで転送できるデジタルサイネージなどもあります。また、ポスターかと思っていると突然映像が動き出すものなど、さまざまなアイディアで利用されているようです。

1-2:期待されるデジタルサイネージ

インタラクティブ性を活用したデジタルサイネージの出現

国内のショッピングモールでは、センサーカメラと連動させたデジタルサイネージが見られます。天井から吊り下げられたプロジェクタから床に投影された、花火やポップコーンの映像の範囲に人が入ると、センサーが感知して花火が上がる映像が投影されたり、ポップコーンがはじけ飛ぶ映像が投影されます。また、枯葉が投影された場所を歩くと、枯葉の中からソフトドリンクのロゴが現れるなどインタラクティブな動作が楽しめます。また、双方向だけではなく、振動を利用したコンテンツや、香りを生成するコンテンツなども登場しており、広告やプロモーション映像を放映するだけではない、新しい仕掛けを組み込んだコンテンツが模索されています。表示用モニタの域を超えた広告展開の可能性が見え始めています。

ネットワーク化されたデジタルサイネージの可能性

デジタルサイネージが低コストで提供されるようになり、路面だけでなくさまざまな業種の小売店舗や、飲食店、サービス業の店舗に設置されるようになると状況が一変します。店舗ごとに単独で映像を表示するのではなく、あたかもクライアント/サーバーシステムの表示端末として、自由に遠隔地の店舗に設置されたデジタルサイネージの動作をコントロールできます。ネットワーク化されたデジタルサイネージは設置場所が特定できる新しいタイプのメディアとして機能するようになり、設置された場所や店舗の種類、閲覧する消費者数、消費者年代などがデジタルサイネージごとの属性情報として提供されるようになるでしょう。

一方で企業は、目的に合った属性を持つデジタルサイネージを選択し、時間帯や天候などを考慮して効果が上げられると思われるタイミングで適切な広告を送信します。今後NGNなどの新たなネットワークによりリアルタイムのコンテンツをマルチキャストで配信できるようになれば、夏の夕方に期間限定のビールのプロモーション映像を駅やショッピングモールなどのデジタルサイネージに放映し、同時に配信される情報を携帯電話で受信することでそのビールが飲める一番近い店舗まで誘導するといった手法も可能になるかもしれません。

このように多くの可能性を持つデジタルサイネージですが、まだまだ国内ではメディアとしての標準化が遅れているのが現状です。さまざまな技術の進歩とともにハードウェア、設置場所提供企業ネットワーク、コンテンツ、システム、ビジネスルールなどの早急な整備が求められています。

1-3:【インタビュー】デジタルサイネージの標準化を目指して

国内でデジタルサイネージの標準化を進める団体、デジタルサイネージコンソーシアムの江口靖二氏に、デジタルサイネージコンソーシアムの活動についてお話を聞きました。

Qデジタルサイネージコンソーシアムについて教えてください。

デジタルサイネージコンソーシアム 事務局長 江口 靖二 氏

デジタルサイネージを取り巻くビジネス環境を整備し、デジタルサイネージのビジネスルール確立や、メディアとしてのデジタルサイネージ市場を構築する活動を行います。デジタルサイネージの市場規模は130億(2005年現在)といわれています。テレビCM市場が2兆4,000-5,000億ですから規模としては大きくありませんが、ここ2-3年で急速に成長しています。

デジタルサイネージそのものは、過去にも何度か話題になったことがあります。しかし、ディスプレイメーカー主導だったり、コストが見合わない、数が少ないなどさまざまな理由から普及には至っていませんでした。現在はそれらがクリアになっただけでなく、メーカー、通信事業者、広告代理店、マーケティング会社、場所の提供を行うグループ企業や商社、不動産デベロッパー、鉄道会社、コンテンツホルダーなどデジタルサイネージに関わるすべての業種が参入しており、メディアとして成立できるValue Chainができています。このタイミングにメディアとして必要と思われるルールを確立し、デジタルサイネージの価値を高めることを目的として設立されたのが、私どもデジタルサイネージコンソーシアムなのです。

Q具体的には、どのような活動をされているのですか?

デジタルサイネージがメディアとして確立するために必要と思われる、さまざまな標準化を行っています。デジタルサイネージにおいても他のメディア同様のルールが必要です。

1)技術的なルール
デジタルサイネージで再生するファイルフォーマットや伝送方式が統一されていないため、それらを統一する必要があります。また、テレビでは15秒と30秒など決まっているCMの秒数も、デジタルサイネージにより異なっておりそれぞれの仕様にあわせなければならないため、市場として広がりにくい状況です。これらを標準化という意味で統一するべきと考えています。
2)媒体としての指標
既存のメディアは、販売部数や視聴者数、読者層や視聴者層など、媒体としての規模や広告展開における効果などが指標として存在します。企業はこれをベースに広告展開を行うわけですが、デジタルサイネージではこれにあたる評価の物差しがありません。これはデジタルサイネージの普及にむけて早急に策定する必要があります。
3)著作権などの権利処理ルール
たとえば音楽著作権についてはJASRACが管理しており、番組内で使用される音楽はJASRACと放送局との取り決めで処理されています。しかしデジタルサイネージにはこれまでのところルールがないため、それを団体間で作っていく必要があると考えています。
4)放送倫理
テレビの場合、時間帯により放映するCMを規制するルールがありますが、デジタルサイネージにはこのようなルールがありません。さらにデジタルサイネージは設置場所が固定されているため、映像だけでなく音量なども問題になる可能性があります。事実、上海市では船上に設置されたディスプレイで放映される広告が海上交通の妨害になり、さらに景観上よくないとして、市当局が規制を始めた例もあります。こういった点も改善しなければデジタルサイネージ発展の阻害要因となります。

JASRAC
音楽関係の著作権を管理する社団法人「日本音楽著作権協会」

Q現在のコンソーシアムの状況について教えてください。

コンソーシアムには2008年1月10日現在で50社の企業が参加しており、標準化について配信部会、指標部会、広報部会、の各ワーキンググループで検討を進めているところで、2008年中にはデジタルサイネージの標準モデルを策定する予定です。さらに、配信サーバーやクライアントの標準的な仕様、インターフェース仕様、広告メタデータなどについてガイドラインを策定したいと思っています。

デジタルサイネージが新しいメディアとして成立するためには、ハードウェアやネットワークなどインフラの策定だけでなく、デジタルサイネージの場所、放映時間帯、映像の長さ、広告内容などのメタデータを持たせなければなりません。ネットワーク化されたデジタルサイネージと広告メタデータにより、TV、携帯電話など同様の映像を放映する他メディアとの連動を最適化することができます。さらにデジタルサイネージの広告マーケットプレイスの構築が必要です。これにより、すべてのネットワーク化されたデジタルサイネージに対し、広告メタデータをキーにした自由な広告展開が可能となり、駅張りポスターなど他の広告との連動もできるようになります。

従来の広告メディアは室内が中心でしたが、デジタルサイネージは屋外や施設など、より消費行動に近いタイミングで展開できる広告メディアです。また、携帯電話などとのインタラクティブな連携など、ICTでなければ実現できないようなプロモーションも可能になります。デジタルサイネージの利用環境が整備されることにより、新しいマーケティングツールとして今後さらに活用が進むでしょう。

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