法人のお客さま総合 > Business ADVANCE > ICT用語ガイド > GUIDE 023 次世代VPN(Next Generation VPN)
パート1 VPNの欠点を補って進化した次世代VPN
VPNとはVirtual Private Networkの略で、仮想プライベートネットワークと呼ばれています。その名の通り、インターネットなどのオープンなネットワークを利用しながら、離れた拠点間で社内LANのようなネットワーク利用を可能にします。この時通信データは暗号化されるため、安全に通信が行えます。
今回紹介する次世代VPNとは、既存のVPNの問題点を改良し、利用ニーズに合わせてきめ細かく、そしてより柔軟で簡単に利用することができるようになった新しいVPNのことです。
次世代VPNを説明する前に、現在利用されているVPNについてあらためてみてみましょう。
インターネットが普及する前から企業は、「専用線接続」「ISDN」「フレームリレー」などさまざまな通信サービスにより離れた拠点間を結び、メインフレームやホストコンピュータによる業務システムやEDI※などを利用してきました。これらの通信サービスは高いセキュリティによる通信が可能でしたが、同時に高いコストがかかっていました。その後インターネットが普及し、さらに安価で高速なブロードバンドの普及、VPN技術の進歩、VPNサービスが安価に提供されるようになったことなどから、企業の拠点間通信や企業間通信には安全なVPNが利用されることが多くなりました。VPNにはリモートアクセスとLAN間接続があり、前者は企業内のリモート・アクセス・サーバに社外からダイヤルアップ接続などを利用して接続するもので、後者は本社と支店などサイト間を専用のVPN装置により接続するものです。
VPNはセキュリティが求められるさまざまな通信で利用されています。
企業の拠点間通信にVPNが利用されるのは、インターネットには盗聴や改ざんの危険性があることが大きな理由です。専用線を利用する場合は直接拠点間を接続するために第三者が盗聴することはあり得ず、安全に通信が行えますが、オープンなネットワークであるインターネットにおいては送信されたデータがどのようなルートを経由するのか分かりません。そのため、使用する通信プロトコルで異なる通信プロトコルをカプセル化して送信することでインターネット上に仮想的なトンネルを構築(トンネリング)し、サイト間でセキュアな通信を行います。トンネリングには、PPTP、L2TPなどデータリンク層をトンネリングするレイヤ2トンネリングと、IPSecなどネットワーク層をトンネリングするレイヤ3トンネリングがあります。レイヤ2トンネリングはSNA/IPX/Apple TalkなどIP以外のプロトコルに対応していますが、レイヤ3トンネリングはIP対応です。
現在利用されているVPNの種類には、IP-VPN、広域Ethernet、インターネットVPNなどがあります。
既存のVPNサービスは、VPNを構築する拠点間をVPNルータで接続します。拠点内PCなどの端末にはIPv4のプライベートアドレスが割り振られており、VPNを利用する場合は一旦グローバルアドレスに変換して送信し、受信側では受け取ったグローバルアドレスをプライベートアドレスに変換して接続を行います。すべての端末にグローバルアドレスを割り振ってしまえば、アドレスを変換する必要はないのですが、端末すべてがIPv4アドレスを持つためにはかなりのコストがかかるため現実的ではなく、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行うNAT(Network Address Translation)という方法を利用します。しかしNATではアプリケーションにより適切に通信できなかったり、リモートアクセスなどでは設定が難しいなどの問題があります。これらはすべて、IPv4のために起きる問題であると考えてもよいでしょう。
IPv6ならグローバルアドレスを安価に取得できるため、すべての端末にグローバルアドレスを割り振ることが可能です。さらに直接端末同士で通信することが可能なため、NATが不要となり、NATによって起きるトラブルや設定の手間などから開放されます。
IPv6を採用することで既存VPNの問題を解消すると共に、これまでサイト間接続しかできなかったVPN接続が、端末単位で可能になります。また、これまでのVPNは拠点間のセキュリティは保証するものの、拠点内でのセキュリティには対応していないため、社内でも同じ部門以外には知られたくない通信や、一部の担当者間でのみ行う通信は別途暗号化ソフトウェアなどを利用する必要がありました。しかし、IPSecを標準で利用できるIPv6に移行することで、社内LANをVPN化するのが容易なため、社内LANの他の端末からも盗聴されることのない環境を簡単に構築可能であり、すべての端末同士がセキュアなピア・ツー・ピアで通信を行うことができるようになります。
また、社外からモバイルなどでアクセスする場合でも、固有のIPv6アドレスとハードウェア・アドレスを基本情報にIDとパスワードを組み合わせ、データを暗号化することで、なりすましや情報の改ざんは事実上不可能になります。
セキュアな通信という観点で見ると、IPv6を利用したVPNはなにも企業間情報のやり取りだけに留まりません。IPv6により、PCだけでなくすべての機器にIPアドレスを割り振ることができ、インターネットを介して機器とのピア・ツー・ピアでの通信が可能となります。そのため、社内LANに接続されたプリンタや複写機などのオフィス機器だけでなく、照明、エレベータ、監視カメラ、空調設備、入退室管理システムなどのリモートでの監視メンテナンス、さらには、簡単に行くことのできない山間部に設置された機器の監視やメンテナンスなども可能になります。
同様に、家庭内の家電製品を外からコントロールすることも可能になります。この場合でも1対1での通信とセキュリティが大きなポイントとなるため、IPv6とIPSecを利用したセキュアな通信が欠かせないものとなるでしょう。
最新のオペレーティングシステムにはIPv6が標準搭載されるなど、次世代のセキュアなネットワークを利用する環境は整い始めています。次世代VPNサービスはネットワークの利用形態を変える可能性を持っているのです。
