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ICT用語ガイド
GUIDE 020 減災
〜企業が緊急地震速報を有効利用するには〜

パート1 阪神淡路大震災の教訓が生み出した「減災」

1-1:減災について

「減災(げんさい)」とは、大地震などの災害において、発生する被害をできる限り抑えようとする対策です。「減災」よりよく知られた言葉である「防災」は被害を防ぐための対策でしたが、被害をすべて防ぐことは不可能であり、ある程度の被害は発生するものとした上で、それをどう減らすかという対策が考えられるようになりました。この概念は、阪神淡路大震災がきっかけとなって生まれました。

阪神淡路大震災の教訓から生まれた「減災」

1995年1月17日に起きたマグニチュード7.3の「阪神淡路大震災」は、兵庫県を中心として阪神地方に多くの被害をもたらし、神戸の都市機能は事実上麻痺状態となりました。電気・ガス・水道などのライフラインがストップし、高速道路や鉄道は分断され、多くの構造物が倒壊しました。また火災も発生し、死者約6,400人、負傷者約44,000人、全壊及び半壊棟数約250,000棟に及ぶ、未曾有の大災害となりました。
阪神淡路大震災による被害がこれほどまでに大きくなったのは、近年この地方では大きな地震が少なかったため、地震対策が十分ではなかったことと、都市直下型の地震による縦揺れの影響が大きく、耐震性が低かった建造物の倒壊や、それに伴う火災発生などが原因と言われています。

阪神淡路大震災はわが国の災害対策に大きな影響を与えました。それにより災害対策の法整備が急がれ、同年6月には、地震防災対策の強化を図るため施行された地震防災対策特別措置法に基づいて、地震防災緊急事業五箇年計画が作成されました。
そして建造物の耐震性強化、都市計画や再開発にあたって防災の見直し、ライフラインの強化、避難地や避難路の確保、消防設備増強、防災用行政無線設備の充実、飲料水および電源を確保するための施設の増強、防災アセスメントの実施などが行われています。また、各都道府県間では新たな防災協定が締結され、全国規模での広域連携による危機管理が行われるようになりました。

それまでの対策は規模を想定し、被害を出さないための「防災」対策が中心でしたが、予測できない大災害では被害を避けることはできないことが認識され、事前の準備で被害を最小限に食い止める「減災」という概念が生まれたのです。

企業の災害に対する意識

また、阪神淡路大震災後、企業の災害に対する意識も変わりました。それまでの企業が考える地震対策は、従業員の安全確保や資産保全などが中心であり、事業継続の観点からの対策ではありませんでした。そのため、被害を抑える対策はとられていたものの、被災後どのように事業を再開するかまでは考えられていることは少なく、多くの企業において、災害復旧まで事業はストップせざるを得ませんでした。大きな災害は事業そのものに影響を与え、廃業に至る場合もあることが改めて認識される機会となったのです。

こののち、企業の危機管理はBCPとして普及していきました。災害による事業停止は当該企業だけではなく、取引先企業やステークホルダー、そして一般消費者にも大きな影響を及ぼすため、企業の危機管理対策はBCPの視点からの構築が求められたのです。
このBCPを考慮した災害対策を構築していたことで、ビジネスに影響を与えずに済んだ例も報告されています。それは2007年新潟県中越沖地震のケースです。あるサプライヤは万が一の災害発生に備え、事業継続を可能にするためのBCPを作成していました。そのため、新潟県中越沖地震が発生し、いつもの納品ルートが利用できなくなっても、ビジネスに大きな影響を与えることはなかったそうです。
この例のように、企業には危機管理対策を資産保全だけでなく、事業継続の意識を持って取り組むことが求められており、そのために減災は有効な対策となります。

1-2:ICTの進化により高度化する減災への取り組み

減災対策の現在

コンピュータの高速化やICTの進化で情報の質が高まり、減災対策は大幅に進化しました。その例として知られるのは、独立行政法人海洋研究開発機構のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」です。スーパーコンピュータ上に仮想の「地球モデル」を構築することにより地球規模で大気の状態や海水の状態をシミュレーションでき、台風の進路や規模をかなり正確に予測することが可能になっており、台風の被害を軽減することに役立っています。
また、地震による津波のシミュレーション、高波や洪水などの3次元シミュレーションなどによる予測で、被害を受けると思われる住民に対し適切な避難勧告を発令したり迅速な救助活動を行うことができるようになっています。

一方、情報を提供する自治体の意識も変わってきています。従来は住民に不安を与えないために無闇に災害情報を流さないという考え方がありましたが、住民にとってはむしろ情報がないことの方が不安である、と認識されるようになり、適切で分かりやすい情報をタイムリーに供給するように変わっています。
そして、ICTを活用した災害情報や水位情報、河川画像などが自治体のホームページを通じて提供されるようになり、住民はこれらの情報で危険を判断し避難するなど減災への活用が進んでいます。

緊急地震速報の活用

減災のための新しい配信型情報として、気象庁により2007年10月から本格運用が開始となる「緊急地震速報」に注目が集まっています。これまでの地震に対する対策と違い、緊急地震速報は「大きな揺れがくる前」の対策であることから、被害を抑えるすなわち「減災」効果が期待されています。

緊急地震速報は、全国約1,000箇所に設置された地震計から得られたデータを気象庁がリアルタイムで解析し、地震の発生時刻や震源の深さ、マグニチュードを配信するもので、それを受けたサービス提供事業者が企業や一般ユーザに配信します。2006年から多くの事業者が参加し先行運用が行われており、2007年7月には新潟県中越沖地震が起き、その効果が実際に実証されました。
新潟市のある企業では緊急地震速報を約17秒前に受信し、従業員の作業を中断して安全な場所へ避難しています。その他にも長野県飯綱市では約20秒前に受信し、工場や市役所などでは放送を流すことで揺れる直前に地震到達を周知することができました。また、東京や神奈川の鉄道会社においても約40秒前に受信し、列車を緊急停止させるなど減災対策に効果のあることが報告されています。

2007年10月の本格運用開始時に各事業者が提供する緊急地震速報サービスには次のようなものがあります。

警報画面

1) NTTコミュニケーションズ「緊急地震速報配信サービス」
気象庁が発信する緊急地震速報をIPv6マルチキャストで配信するサービスです。NTT東日本/NTT西日本の「フレッツ」回線(閉域IPv6網)とIPv6マルチキャスト配信を利用し、専用端末、PC、IPテレビ電話に直接配信します(2007年10月現在、IPv6マルチキャスト配信を利用した地震速報サービス提供はNTTグループのみです)。また、より確実な配信を行うために、各企業に設置してある受信端末とサーバ間の通信が正常に行えるかを確認する死活確認(ヘルスチェック)を実施しています。

緊急地震速報サービスの仕組み

2) 株式会社ウェザーニューズ「The Last 10-Second」
インターネットに常時接続されたPCに、地震情報を表示させるサービスです。専用アプリケーションをインストールしたWindowsPCにデータが送信されます。
3) JFEシステムズ株式会社「MJ@lert」
三菱スペース・ソフトウエア株式会社が提供するブロードバンドサービスMBBNETと、専用の受信・警報装置「緊急箱」により地震情報を受信し知らせます。

この他にも、ドリンクの自動販売機に組み込まれた受信端末や腕時計型受信端末、ポケベル型など多くの受信端末が発表されています。さらにCATV加入者に対し専用端末を設置しサービスを提供するものや、マンションのインターホンに端末を組み込んだサービスなども登場しています。
また、各業界でも導入済みの地震対策に加え、新たに緊急地震速報を活用する動きが見られます。石油・電気・ガスなどライフラインを扱う業界では従業員の安全確保のために導入し、利用のためのマニュアル作りが進んでいます。自動車業界のある企業では従業員の安全確保と二次災害の最小化のために導入し、震度5以上の地震発生の際にはサイレンや自動放送を流すシステムを構築しています。

阪神淡路大震災から12年、ICTは大きく進化し、当時では考えられないほど質の高い情報や、先進的な情報を簡単に手に入れられるようになっています。最新のICTを利用した緊急地震速報サービスを利用することは、企業がこれまで行なってきた地震発生時への対策に加え、より効果的な減災対策を実現します。緊急地震速報サービスにより地震発生直前に到達を知ることができるため、エレベータや自動ドアの停止、全館自動放送、サイレンなどにより社員の安全確保と避難が可能になります。また、地震発生前に工場機械や重機を停止することで、さらなる被害の発生を防ぐことができます。
企業はICTの活用により、一歩進んだ減災対策を行なうことが求められています。

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