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ICT用語ガイド

GUIDE 018 仮想世界

〜セカンドライフに見る仮想世界ビジネスの将来性〜
2007年07月25日公開

パート2 【インタビュー】仮想店舗を出店した老舗百貨店「三越」

2-1:株式会社三越様へのインタビュー

それでは、実際にセカンドライフの仮想空間でサービスを提供している企業の方にお話をお聞きしてみましょう。
株式会社三越(以下、三越)は、セカンドライフ内に仮想店舗を出店しました。オープンは2007年7月19日午前10時。老舗百貨店の代表ともいえる三越が仮想世界に同業他社に先駆けて出店するというニュースは、強いインパクトを与えています。ここでは出店を担当された、株式会社三越 クロスメディア推進部 森 玲治氏にお話を伺いました。

Q出店された店舗概要、出店コンセプトについて教えてください

株式会社三越 通信販売事業部 クロスメディア推進部 e-ビジネス担当課長 森 玲治 氏

店舗は、三越の前身である越後屋呉服店をイメージした伝統的な建物風の歴史ゾーンと、空中都市風の未来ゾーンに分かれています。歴史ゾーンは集客を狙い、同時に三越の歴史と伝統をプレゼンテーションしたいと考えています。若い方の中には越後屋呉服店が三越の前身であることをご存知ない方も多いですし、昔の売り方をご存知ありませんから、番頭や座売りを逆に新しく感じていただけるのではないかと思います。ここでは三越のロゴがデザインされた扇子やはっぴをアバター用に無料で配布します。

そして、実際のショッピングに結びつくコンテンツは未来ゾーンで用意しています。ここでは三越オンラインショッピングサイトへの誘導看板を設置してe-コマースへ誘導します。

出店コンセプトは4つあります。

越後屋呉服店イメージ1

1) 出店による宣伝広告効果
老舗百貨店として古い伝統的なイメージを持つ三越が、他の百貨店に先駆けて仮想店舗を出店することで、市場に対してインパクトがあるだろうと予想していました。実際、かなりの反響があり宣伝効果はあったと考えています。
2) e-コマースの実証実験
3Dでなくては表現できないプレゼンテーション手法を使って、オンラインショッピングサイトへの誘導に効果があるかどうかを検証したいと思います。商品の裏側を見せることもできますし、動きや音なども表現できます。またアバターにその商品を手に取ってもらうことでよりリアルに見せられます。

越後屋呉服店イメージ2

3) 催し物の展開
三越が提供している、カルチャーセンターの講座案内などの宣伝を計画しています。実際の店頭に設置された大型モニタと同じように、セカンドライフ内の店頭にモニタを設置して映像を流すことで得られる効果を検証します。他社の広告を流すことも考えています。
4) アバター向け小売
将来的にはアバター向けに、ファッションやグッズの販売を考えています。2007年2月現在、セカンドライフ内の仮想通貨総取引量は、月額29億円で、アバター数の増加に伴って加速度的に増加しています。L$によるグッズ販売がビジネスとして成り立つのか、その市場規模を知りたいと考えています。

現在のセカンドライフ内でのアバター向け商品の単価はそれほど高くないため、ビジネスとして成立させるためには販売量が問題となりますが、キャラクターグッズや著名デザイナーがデザインしたグッズなど、キラーアイテムが登場すれば一気に単価が上がる可能性もあります。

Q現実の商品だけではなく、仮想世界のアバター向け小売まで考えていらっしゃるのですか?

現在はL$の換金の問題や国ごとの税制の問題があり様子を見ている段階です。色々クリアしなければならない問題はありますが、仮想世界での商売が当たり前になる時代がくると考えています。

例えば、ファッションデザイナーがデザインしたアバター向けのファッションと、それと同じファッションを店頭で展開すれば、アバターとペアルックが実現するわけで、単なるオンラインショッピングサイトへの誘導ではないセカンドライフならではの新しい付加価値ビジネスが創出できます。

Q出店にいたるきっかけやプロセス、出店の苦労などをお話いただけますか?

クロスメディア推進部は、TVやインターネットなどのメディアを販路として扱っています。三越がオンラインショッピングサイトを立ち上げたのは1996年です。その時点で売上にそれほど貢献しませんでしたが、2006年には売上高が当時の1,000倍に成長しています。セカンドライフもすぐに結果がでるとは考えていませんが、数年後には大きな売上につながると期待しています。
2006年末から私どもの部署では、セカンドライフを新しい販路として注目していました。誰よりも先に参入することによって得られる先行者利益も重要ですし、ドメイン名と同じようにセカンドライフの場所名(地名)は早い者勝ちなので、場所名「mitsukoshi」を早めに取得したかったこともあります。

苦労したのは、ほとんどの社員がセカンドライフを知らなかったため、役員や社員に仮想世界やアバターといった概念を理解して貰うためのプレゼンテーションに時間がかかったことです。また、新しいビジネスであるため、実際の参入を手助けしてくれる代理店がほとんどありませんでした。他の業務において個人が楽しむレベルでオブジェクトの作成依頼などを行なうケースはありましたが、本格的なビジネスとして対応できるノウハウを持った制作会社について私どもが知りうる範囲ではありません。そんな中、2007年1月末に株式会社DAC、株式会社スパイスボックスのニュースリリースを知り、仮想店舗の構築をお願いすることになりました。

Qビジネスとして、仮想世界をどう捉えられますか?またその将来性についてどのような期待をされていますか?

広告宣伝のようなプロモーションや、物販だけではなく、現実の世界においてもさまざまな面でビジネスの可能性があると考えています。実際にセカンドライフをストレスなく楽しむためには、高性能なPCが必要ですし、ストレスなく画面を表示するためには高速な回線が必要となるでしょう。少なくとも(NTT東日本が提供している)Bフレッツのような光回線は必要ですし、NGNの登場によってさらに快適になるでしょう。

Qセカンドライフ内に出店を検討している企業へのアドバイスなど、いただけませんか

セカンドライフに出店する場合、店舗企画は自社で行なうとしても、土地取得や出店支援などの代理店機能、3Dオブジェクト作成などにはコンテンツ制作が必要となります。現在はセカンドライフに対応できる制作会社が限られているため、ノウハウを持っている企業と組まないと望む通りの形での出店は難しいでしょう。制作コストについても標準的なコストは存在せず、制作会社によって開きがあります。また、新しいビジネスであるため、出店して1年程度で売上を期待するのではなく、長い眼で育てるつもりがなければ、すぐに撤退することになるでしょう。しかし、セカンドライフは多くの可能性を秘めた魅力的なプラットフォームであり、世界中のユーザや企業が参入し始めています。企業は、セカンドライフ内の日本人コミュニティ育成に貢献する意識で参加しなければならないのではないかと思います。日本人コミュニティを育てて、よりよいビジネスにつなげたいですね。

2-2:株式会社スパイスボックスへのインタビュー

三越の仮想店舗を制作した株式会社スパイスボックスは、セカンドライフへの出店支援や3D構築サービスを提供しています。今回は株式会社スパイスボックス ビジネスプロデュース局チームリーダー 飯野正樹氏に、仮想世界の構築支援に参入した経緯などについて伺いました。

Qセカンドライフでの支援ビジネスを始められるきっかけ、また仮想世界における御社のビジネスなどを教えてください

株式会社スパイスボックス ビジネスプロデュース局チームリーダー 飯野 正樹 氏

株式会社スパイスボックス(以下、スパイスボックス)は、株式会社DAC(デジタル・アドヴァタイジング・コンソーシアム:以下、DAC)の子会社です。DACは広告配信システムやターゲット広告システムなどの新しい技術を国内外問わず取り入れて、企業に導入するビジネスを行なっています。スパイスボックスはグループとしてキャンペーン展開、プロモーション展開、Webサイト構築などのクリエイティブを担当しています。

セカンドライフには2006年10月頃からDACの役員が注目しており、検討の結果DACとスパイスボックスで参入を決めました。当初はWebサイトの延長程度に捉えていたのですが、付加価値を持たせることによって、企業がセカンドライフ内でキャンペーンやプロモーションを行なうためのプラットフォームとして利用できることに気づきました。
現在スパイスボックスでは、セカンドライフで企業が出店する場合の企画から、3D構築、建物やオブジェクトの制作、キャンペーンやパブリシティなどのサービスを提供しています。

Q日本人コミュニティとして「Japan Islands」を公開され、一部無料で土地を提供されていますね?

現在のセカンドライフは黎明期です。ユーザは自分の土地がないと購入したアイテムを置いておけないため、現在のセカンドライフでのBtoCビジネスは土地を分割して貸すビジネスがほとんどです。スパイスボックスでは企業ユーザサポートのために土地を購入しましたが、日本人の個人ユーザが集まる場所も必要だと考えるようになりました。

また、今は無料のホームページやブログなどが提供され、ユーザがコンテンツを作ることでさらにユーザが増えていきました。セカンドライフでもユーザの利用は無料であるべきだと考えており、土地を提供することにしました。6月20日から26日までWebで第1次として232区画の募集を行なったところ、多数の応募をいただき、あっという間に埋まってしまいました。まだ日本人ユーザが少ない中、コアなユーザに集まってもらうことはJapan Islandsの活性化につながると考えています。

さらに、人が人を呼ぶ効果でJapan Islandsが日本人の入り口となれば、次はメディアとしての意味を持ってきます。屋外広告や看板を立てるなどプロモーションのプラットフォームとして価値がでてきます。インターネットも環境が整って初めて企業のビジネスにつながったように、今はインフラ作りが中心になると考えています。

Q仮想世界ビジネスにおける現状での問題点と今後の見通しなどをお聞かせください

現段階では、仮想世界で流通するマネーに関する法整備が為されていないことや、セカンドライフ内の物価が現実世界に換算すると1/10〜1/100程度であることから、仮想マネーを利用したビジネスは個人のアフィリエイトレベルと考えています。しかしセカンドライフ内でクレジット決済が可能になり、外部DBなどとの連携が可能になると一気に進む可能性があります。

セカンドライフに問題があるとすれば、リンデンラボ社のみが提供しているサービスであり、すべてをリンデンラボ社に依存していることでしょう。所有地データのバックアップや復旧、プログラムのバグ修正やアップデート、新しいサービスの追加、セキュリティなど、すべてリンデンラボ社任せです。安全な仮想経済ビジネス環境の整備を考えたら、ネットワークやサーバなどのインフラ、セキュリティ、ユーザへの保証などを充実させる必要があります。

しかしプラットフォームとしてみればあらゆる面での自由度も高く、思い通りのサービスを提供することができる理想的な環境です。Webに代わる新しい存在になりつつあると言っても過言ではないと思います。

仮想世界は、e-コマース、マーケティング、プロモーションなどBtoCのプラットフォームだけではなく、現実世界の物理的制約を補う形での会議やコラボレーションなどビジネスプラットフォームとしての利用も予想されています。例えば製品の3Dモデル評価のために、遠隔地の担当者のアバターが仮想世界の支店 に集まってミーティングを行なうなど、仮想世界がビジネスツールのひとつとして利用することも考えられます。
仮想世界がビジネス基盤として利用されるようになると、アバターもメールアドレス同様に個人を表すため、より高度なセキュリティ対策が必要となります。不正アクセスにより他人が所有するL$を盗んだり、他人のアバターになりすまして会議に参加し、重要情報を盗み出すなどの犯罪も気をつけなければならなくなるでしょう。アバターの所有するオブジェクトを盗むCopyBotというプログラムも登場しており、CopyBotへの対応策を協議するためにセカンドライフ内で集会が開かれたほどです。
既にセカンドライフ以外の仮想世界も登場しており、2008年には仮想世界が一般化すると見る向きもありますが、個人ユーザがセカンドライフを楽しむにも、企業がサービスを提供するにも、高性能のPCと高速回線が必要となります。三越のご担当者もお話しのように、高速かつ安定した光回線のようなネットワークインフラが必要です。また仮想世界でのクレジット決済などが可能になれば、セキュリティの問題がクローズアップされてくるでしょう。高度なセキュリティのソリューションの必然性が高まるはずです。仮想世界が安全なコミュニケーションの基盤となるためには、NGNなどの高速で安全なネットワーク環境やセキュアなビジネス基盤の整備が求められています。 新たなビジネスチャンスとして期待されている仮想世界ですが、このような環境基盤が整備されることで気軽に楽しめ、またビジネス参入の機会もさらに広がるでしょう。

出典:みずほコーポレート銀行 産業調査部
「セカンドライフにみる仮想世界・仮想経済の可能性」より

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