法人のお客さま総合 > Business ADVANCE > ICT用語ガイド > GUIDE 018 仮想世界
パート1 仮想世界の概要
今回のテーマとなる仮想世界とは、ネットワーク上のサーバによって構築された三次元空間のことです。ユーザは、その空間をアバター※1という自身の分身を使って自由に動き回ることができます。アバターには様々な種類がありますが、そのほとんどは人間を模したキャラクターです。このアバターを使って、他ユーザとコミュニケーションを取ったり、仮想通貨で買い物をしたりすることで、仮想世界を現実世界の延長のようにして楽しむことができます。
仮想世界がどのようなものかを理解するには、ビデオゲームを想像すると分かりやすいかもしれません。それまで「インベーダーゲーム」のように画面の左右しか平面移動できなかった二次元のビデオゲームが次第に三次元化され、上下左右はもちろんのこと前後にまで移動できるようになりました。ゲームセンターにあるレースゲームでは実際の車に乗ってサーキットやコースを走っているかのように、フライトシミュレーターでは実際の飛行機を操縦しているような雰囲気を楽しむことができます。また、中には廃墟の中を動き回って敵と戦うゲームもあります。室内から出る時はドアを開け、エレベーターに乗って別の階に移動するなど実際の空間を動いているのと同じです。
このようなゲームなどで表現される、三次元空間を自由気ままに動くことができる世界が仮想世界といえます。
しかし、仮想世界は三次元空間だけでは成り立ちません。大勢のユーザが同時にひとつの三次元空間を共有できることも重要です。これまでのビデオゲームはその場にいるユーザ1人、または数人で同じゲームを楽しむものでしたが、ネットワークを利用して、遠くに離れたユーザとも楽しめるオンラインゲームが登場しました。オンラインゲームではネットワーク上に存在する、離れた場所にいる大勢のユーザと一緒に同じゲームを楽しむことができます。
仮想世界を楽しむオンラインゲームにはジャンボジェット機や戦闘機の操縦を疑似体験できるフライトシミュレーターやMMORPG※2などがあり、数百人から数千人が同時にサーバにアクセスし、仮想世界の中でゲームをプレイできます。ユーザは、自分が操作するキャラクターをアバターのように使って他のユーザと仲間を組んで行動したり、チャットを楽しんだり、所有するアイテムを交換することも可能になっています。
オンラインゲームや仮想世界では、独自の通貨が利用され、アイテムなどをユーザ間で売買できるようになっています。そして、この売買が現実の通貨でも行われるようになり、このような行為をRMT(Real Money Trade)※3と呼びます。
MMORPGの場合、貴重なアイテムや手に入りにくいアイテムを手に入れるためには、長時間プレイや、特別な操作を必要とします。またプレーヤーの技術により取得できるアイテムが限られているため、プレーヤー達によってゲーム内の仮想通貨を使って、武器や道具などが高額で売買されるようになりました。さらには、ネットのオークションや個人売買で現実の通貨で取引されるようになったのです。RMTそのものは問題ありませんが、アイテムを入手するためにサーバへ不正にアクセスしたり、またはゲームそのものを改造したりする行為が増えたため問題視されている面もあります。
ほとんどのオンラインゲームは、運営会社にてRMT行為を規制していますが、一方でRMTを公認しているMMORPGがあります。MMORPG内の仮想通貨は規定のレートで米1$として、現金への換金が可能です。自分のアカウントで貯めた通貨をATMでドルに換金し、引き出すことができるキャッシュカードも登場しています。このMMORPGでは、米10万ドルでゲーム内の宇宙ステーションを購入したユーザのニュースが話題になりました。このユーザは購入した宇宙ステーションをリゾートにして他のユーザを誘致し、サービスを提供して利益を上げようとしています。このように仮想世界の中で行われるアイテム売買やサービス提供によって、現実世界で利益を得られることに価値を見いだすユーザが増えたため、仮想世界の経済と現実の経済の垣根があいまいになりつつあり、徐々に仮想世界への投資が行なわれるようになってきています。
これまでの仮想世界は主にゲームの世界で存在するものでしたが、ゲームではない三次元仮想世界「Second Life(セカンドライフ):米リンデンラボ社」、が2003年に登場しました。
セカンドライフは、米国カリフォルニア州にあるリンデンラボ社が開発した三次元仮想世界です。予め設定されたシナリオはなく、ユーザは自由に仮想世界を楽しむことができます。現実の世界を模した高層ビルから喫茶店、飛行機や空想の乗り物、ネックレスからTシャツと、ありとあらゆるものが三次元のオブジェクトで作られています。ユーザはアバターを使ってセカンドライフの世界を自由に歩き回り、仮想世界の中で作ったグッズを売買し、空を飛んだりスノーボードをしたりすることもできます。セカンドライフ内では、ユーザが土地を購入(レンタルも可)して建物を建てたり店を出したりすることも可能です。
このセカンドライフがここ2、3年で急速に知られるようになったのは、新しい広告やプロモーションのためのソーシャルメディア※4として、また新しいビジネスのプラットフォームとしての可能性が認められたからに他なりません。ロイター、サンマイクロシステムズ、シスコシステムズなど多くの企業がセカンドライフ内にショールームや仮想店舗を出店して活動を始めています。
MMORPG内でユーザが交換できるのはゲームに依存したアイテムですが、セカンドライフではユーザが仮想世界の中で制作したグッズを売買できます。また、誰でも簡単にビジネスを立ち上げることができ、既に利益を上げたユーザもいます。
グッズなどの購入にはL$(リンデンドル以下L$)と呼ばれる仮想通貨が利用されます。仮想空間内の土地はリンデンラボ社から購入しますが、それ以外のユーザ間取引は自由で、貯まったL$は現実の通貨に換金することも可能です。交換レートは固定ではなく、実際の需給によって決まるためリンデンラボ社のサイトでは現実のドルとの交換レート情報が提供されています。
このセカンドライフの登場によって、仮想世界への関心は急速に高まっており、株式会社みずほコーポレート銀行による「仮想世界に関する調査報告書」や、株式会社野村総合研究所による「2012年までの仮想世界の進展予測レポート」などが出されています。
セカンドライフは、多くの企業が参入したことで話題になりました。では、企業はセカンドライフでどのような活動をしているのでしょう。
セカンドライフの登録アバター数は急速に増えています。全世界における登録者数は、2006年1月に10万人でしたが、2007年1月には300万人を超え、2月には416万人を記録しています。仮想世界で流通する実体通貨総取引量も2007年は1.350億円、2008年には1.25兆円に上ると予測されており、急速に成長を続けています。そのため、新たなビジネスチャンスを求めて、企業が次々と参入しています。※5
出店している企業は、実際に出店する企業と、その活動を支援する企業に分けられます。前者には、e-コマース活動、マーケティング/プロモーション活動、メデイア活動や教育機関、大使館、NPOなどさまざまな組織が参入しています。後者には、進出/出店コンサルタント、3Dオブジェクト/コンテンツ制作会社、不動産デベロッパーなどがあり、大手広告代理店なども相次いで参入しています。
セカンドライフに参入した企業のビジネスを見てみましょう。
これ以外にも多くの企業が出店していますが、上記企業などはe-コマース、マーケティング、プロモーションなど、仮想世界の特性を利用したBtoCビジネスのさまざまな可能性を探っている状態といえます。※5
企業のセカンドライフ利用は消費者向けのビジネスに留まらず、新たなコミュニケーション・ツールとしての利用も始まっています。
マイクロソフトなどは社員採用の一次面接をセカンドライフ内のアバターで行なったり、IBMでは多くの社員がアバターを持っていて、社内のビジネス・ミーティングやコラボレーションに利用していたりします。また、顧客に対するサポートデスクを設置する例や、アバター向け貸会議室をオープンする企業もあります。また、プロモーションの一環として、自社ロゴの入ったTシャツを着たアバターがセカンドライフ内を歩き回り、ユーザの質問に答えるという活動を行なっている企業もあります。
セカンドライフなどの仮想世界は、個人ユーザのエンターテインメントとして捉えられがちですが、視点を変えると新しいコミュニケーションのためのプラットフォームであり、大きな可能性を持っていることが分かります。
仮想世界が持つこれらの特徴により、現在のインターネットが持つ制約を超えたソーシャルネット・ワーキングが実現します。そしてさらに仮想と現実の垣根がなくなり始めた今、新たなビジネスチャンスが訪れようとしています。
ただし、このセカンドライフが誰でもが参入できるビジネスチャンスとなる為には、さらなるネットワークインフラの強化が必要でしょう。冒頭で仮想世界をビデオゲームの例を元にご説明しましたが、高度な画面描画機能と大勢のユーザが同時にアクセスするのが仮想世界です。実際に仮想世界にコンテンツを提供する側になるのであれば、作成データの受け渡しや、実際に検証作業を実施するにしても高速で安定した回線が必要になるでしょう。
