法人のお客さま総合 > ビジネスアドバンス > ICT用語ガイド > GUIDE 017 テレワーク(Telework)

ICT用語ガイド

GUIDE 017 テレワーク(Telework)

2007年06月25日公開

パート1 導入が期待されるテレワーク

1-1:テレワークとは?

テレワークとは、「遠距離の」という意味の「Tele」と「働く」という意味の「Work」を組み合わせた言葉で、「会社から離れた場所で働く」ことを意味しています。日本においてはe-Japan戦略IIの中で「テレワークとは、週8時間以上情報通信手段を活用して、時間や場所に制約されない柔軟な働き方」と定義されており、オフィスコストの削減、交通渋滞の解消、少子化対策など、さまざまな効果が期待されています。テレワークには、サテライト・オフィスなどを利用する「施設利用型」と、在宅勤務などの「自宅利用型」、施設に依存しない「モバイル型」があります。

テレワークの歴史

「テレワーク」という言葉が生まれたのは1970年代のアメリカです。エネルギー危機とマイカー通勤による交通渋滞緩和や空気汚染対策として、ロサンゼルス周辺で始まったといわれています。アメリカは個人の職務が明確で、成果を上げれば評価されるため、比較的簡単にテレワークが導入されたようです。さらに1994年のロサンゼルス大地震(ノースリッジ大地震)で都市部が大被害を受けたことなどからも、企業の事業継続対策としての役割も見直されています。テレワークは、アメリカだけではなくカナダやEU諸国などでも導入が進んでいますが、経済効率で捉えられることの多いアメリカに対し、EU諸国では完全競争原理によらない雇用ガイドラインの策定など、社会保障や雇用保障が進んでいることから従業員のワーク・ライフ・バランスがより重視される傾向にあるようです。日本の場合は、また少し事情が違っています。

日本にテレワークが導入されたのは1980年代初頭で、当時は「在宅勤務」と呼ばれていました。普及し始めたのは1980年代終わりです。バブルで地価が高騰し、都心のオフィスにかかるコストが無視できなくなったことから、郊外にオフィスを置き近隣に住む従業員などが通うサテライト・オフィスが登場します。サテライト・オフィスに設置された情報通信設備で本社同様の仕事ができ、これによりテレワークが進みました。

しかし、サテライト・オフィスを導入しても、従業員によっては本社とサテライト・オフィス両方に席を持つことになり、それほどコストダウンにつながらなかったことやバブル崩壊などの影響から、1990年代に入るとややトーンダウンしていきます。

1990年代後半になると、ノート型PCを活用したモバイル・コンピューティングが広がり始め、営業マンはノート型PCを利用して社内システムにアクセスするようになります。

ノート型PCが普及したことで、2000年代にはテレワークの導入が進みましたが、この1-2年は個人情報保護法の施行などセキュリティの問題から、モバイルの利用を控える傾向にあります。それでもテレワークは増加しています。

2002年度には全就労人口の6.1%だったテレワーク人口も、2005年度の調査では雇用者で506万人、自営業者で168万人と増えており、全就労人口の10.4%にまで伸びています。

テレワーク導入例

テレワークの導入が早かった企業の多くは情報関連企業で、主にプログラマやワープロ入力など、コンピュータで集中作業を行なうような仕事に利用されていました。それに次いで外資系企業が取り入れ、PCやネットワーク環境の普及などICTがビジネス基盤となるに連れて、情報サービス業、卸売り業、機械製造業、専門サービス業、食料品製造業など、さまざまな業種の企業がテレワークを導入するようになっています。また職種も営業だけではなく、設計、デザイン、コールセンターなど多岐に渡っています。

実際にテレワークはどのような形態で利用されているのでしょうか。例を見てみましょう。

外資系製造業A社では、フレックスタイムや柔軟な勤務形態、ICTを積極的に取り入れることにで、週2日までのテレワークができる制度を導入しています。そのために必要な「PC」、「カラーレーザープリンタ」、「携帯電話」、「FAXシステム」、「電話会議用のツール」などは会社側が従業員に提供しています。これにより営業マンは自宅より得意先への直行直帰ができ、電話会議やPCによるネットミーティングを活用し、移動時間を削減することで本来の業務である得意先訪問に、より多くの時間をかけることができるようになりました。

食品関連製造業B社では、遠距離通勤をしている女性が妊娠や育児などでフルタイムでの就業が困難になったことから、退職せずに仕事を続けるためにテレワークを検討するプロジェクトが発足しました。そしてリモートアクセス環境とPCが用意され、就業時間を所属部門と同一、またはフレックスタイムとして、営業管理・企画・人事企画業務などを中心に、完全テレワークと部分的テレワークがスタートしました。B社では今後も優秀な従業員の退職による損失削減や、代替要員の補充が困難なケースの対応としてテレワークを拡大する予定でいるようです。

海外はどうでしょうか。

ドイツの自動車メーカーC社では、1995年州政府のテレワーク・プロジェクトの支援を受けて試験的にテレワークを実施し、それを継続する形で導入しました。テレワークを希望する従業員は、テレワークのための研修を受ける必要があり、仕事をする時間帯を会社と個人の事情に応じて決定します。これにより平均して週2日間、PCを使ったテレワークができるようになります。C社では、高度で複雑な研究開発業務はテレワークに適しており、さらにほとんどの業務を自宅で行なうことが可能であると考えていて、すでにほとんどの部門でテレワークが行なわれており、年間約500人のペースで増加しているそうです。

オランダの保険業D社では、本社ビル建設に合わせて企業の構造改革を実施、このときに働き方の改革も取り入れ、いつでもどこでも働ける環境としてテレワークを導入しました。テレワーク実施にあたり、まずその部門の業務がテレワークに向いているかどうかを判断し、向いていると判断されれば、週2日までテレワークを行なうことができるようになります。テレワークが実施されても週2日以上は組織の一体感が損なわれるという理由で認められていません。また、育児と仕事を区別するために、幼児などのいる家庭ではテレワークを行なうことができません。テレワークによってコストの削減に成功し、さらに従業員の満足度が向上した結果、欠勤率や退職率の減少にもつながっているようです。

僅か4例で判断することはできませんが、日本のテレワーク導入理由のひとつとして遠距離通勤が多い労働環境を挙げることができるでしょう。この状況は、サテライト・オフィスが登場した頃と変わっておらず、都心の本社に近隣府県から従業員が通勤する、都心集中型企業が多くを占めているからであるといえます。

1-2:テレワークの現状と問題

セキュリティがポイントとなるテレワーク

テレワークは今後どのようになっていくのでしょうか。

これまで私たちの仕事の仕方はグループでの作業が中心で、一人で作業を行なうことは少ないため、企業によっては在宅勤務という制度を持っていてもあまり活用されていませんでした。しかし最近ではプロジェクト単位で仕事をすることが増えており、仕事のスタイルが変化したことから、メンバーそれぞれが自分の担当する部分の作業を行ない、結果を持ち寄って(あるいはサーバにアップロードする)プロジェクトを推進していくことでテレワークを導入しやすくなり、またメリットが感じられるようになってきています。環境がテレワークを受け入れやすくなってきているのです。

しかし、問題もあります。

ここ数年厳しくなっている情報セキュリティ問題です。テレワークは在宅で行なうことが多いことから、どのように情報セキュリティを確保するかが鍵となります。会社で利用するデータなどを自宅で扱うため、ローカルPCへのデータ保存、ウイルス対策、プリンタ出力などによる情報漏えいの危険に対して、適切な対策を講じる必要があります。会社のシステムにリモートアクセスするためのインフラや、利用規定なども整備しなければなりません。

また、一般の住宅はテレワークを想定して設計されたものではないため、物理的セキュリティも考慮する必要があります。企業によっては、鍵のかかる部屋がないとテレワークを許可しないケースもあるようです。とはいえ、ネットワーク環境やコミュニケーション・ツールなどは日々進化しています。企業や従業員のためだけではなく、通勤が困難な障がい者の就労、育児や介護を抱えた女性の就労など社会的に見てもテレワークにはさまざまなメリットがあるため、多くの企業で導入されていくことと考えられます。また、遠隔地で就業できることから地域活性化につながり、通勤や物流が抑制されるために、環境負荷が削減できることなども期待されています。

1-3:社団法人日本テレワーク協会へのインタビュー

主席研究員:今泉 千明氏
テレワーク専門相談員:安積 直道氏

Qこれからテレワークを導入したいと考えている企業に、アドバイスなどをいただけますか?

社団法人 日本テレワーク協会 専門相談員 安積 直道 氏

社団法人 日本テレワーク協会 主席研究員 今泉 千明 氏

大手企業ばかりではなく、中小企業もテレワークを導入するようになってきました。協会への導入のための相談も倍増しており、平均して月20件にも上ります。企業側がテレワークを導入する場合問題とするのは、利益に結びつくような導入対効果が分かりにくいことです。セキュリティのインフラ整備が必要なのに対し、生産性が向上しているのかどうか判断しにくいのです。日本的経営の特徴といえますが、仕事を評価する制度が徹底していないことに原因があるように思われます。

Qテレワークを実際に導入した従業員や管理者などは、どのような反応なのでしょうか?

2005年から2006年にかけてテレワークの実証実験を行ない、17の企業128名の従業員が参加しました。参加者や上司、同僚などへのアンケート調査、健康や生活面の調査、企業のテレワーク推進部門へのヒアリング調査などを行なっています。週1日から2日のテレワークを4ヶ月行ないましたが、参加者のほとんどはテレワークを継続したいと答えています。通勤がなくなることなどからストレスが減り、健康面や生活面では大きくプラスであると答えています。問題となったのは中間管理職です。テレワークの経験がない上司の場合、顧客への対応ができているか、本当に仕事をしているか、緊急時の対応などに不安をいだいています。自分でテレワークをした経験を持つ上司の場合は高い評価をしていることから、中間管理職にテレワークを経験してもらうことが、テレワーク普及の近道かもしれません。

このページのトップへ

人気ICTキーワード
アクセスランキング

メールマガジン登録でNTT Comオリジナル市場調査レポートをプレゼント
経営課題とICT(ITトレンド) 経営課題を解決する最新ICTを具体的に解説