法人のお客さま総合 > Business ADVANCE > ICT用語ガイド > GUIDE 016 インタラクティブ(ユニキャスト)通信
パート2 【インタビュー】インタラクティブ(ユニキャスト)通信の先にあるもの
NGNで通信サービスはどう変わるのか?今回はNGNフィールド・トライアルで映像配信を担当している先端IPアーキテクチャセンタ 映像コンテンツ流通プロジェクト 担当部長 福與喜弘さんに話を伺いました。
インタラクティブ(ユニキャスト)通信や、NGNのフィールド・トライアルについてお話いただけませんか?

今回のフィールド・トライアルにおけるインタラクティブ(ユニキャスト)通信の具体例というと、VoDが一番分かりやすいでしょう。フィールド・トライアルでは、コンテンツを提供してくださる企業様と共同実験として、DVDのようなチャプター選択再生、アーカイブされた番組のオンデマンド視聴、映像画面からオンラインショッピングに遷移するデモなどを行ないました。また、映像系トライアルのひとつとして、初めて地上デジタル放送のIP再送信を実現しています。
いずれの場合も、仕掛けは標準化された方式(一部独自仕様)により、テレビ端末でハイビジョン画質の映像を見せることを訴求点としています。
インターネットはベストエフォート型なので、一般道の渋滞のようにネットワークが混んでしまうと安定した送信はできません。そのため、災害など緊急情報の配信や公共の情報を伝える社会的機能を担う地上デジタル放送のIP再送信のインフラとして適切ではありませんでした。NGNのQoSによる帯域制御で初めて網内の渋滞を回避し、安定したIP再送信が可能になることから、今回のフィールド・テストでの地上デジタル放送のIP再送信を実現しています。
今回のVoDでは、テニスの試合で特定のセットを見るなど、チャプター再生により見たいところをオンデマンドで見られるようになっています。映画は最初から見るのが普通ですが、スポーツなどは全てを見ることは稀で、興味のあるところだけを見る方が多いと思います。視聴者のニーズに対応した、という感じではないでしょうか。しかし、既にDVDで実現していますから、VoDがそこまで追いついたという感覚でしょうね。もちろん、さらにメタデータを使って色々な検索をして視聴するなど、今後は、視聴者本位の視点で、見たいコンテンツに最短でたどり着き、見たい部分を見たいだけ見たいように見れることを目指します。
NGNは視聴スタイルを変える可能性を持っている、ということですね?
そう言えますね。例えば、ビデオや映画、番組は見ないと面白いかどうか分からない。映画やビデオなどは、見た人の感想を聞いた後からでも見ることができますが、テレビ番組は再放送されない限り見る方法はありません。著作権の問題はありますが、YouTubeなどは放送された番組が面白かったという反響を口コミを聞き視聴動機が生まれて、そのコンテンツを見るためにYouTubeにアクセスするユーザが多いと思います。面白そうだから見るのではなく、面白いという口コミ情報を聞いたから見る。おいしいという評判のラーメン屋さんに食べに行くことと同じで、人間の行動パターンとして自然な形です。
過去の番組がオンデマンドで見られるようになれば、放送を見た人から口コミで面白さが伝わり、その番組を見るという人間の自然な行動パターンに対応できる可能性が出てきました。e-コマースのサイトなどで見られる、「この商品を購入したユーザはこちらの商品も購入しています」というようなマーケティング手法に似ていますね。面白いコンテンツがあることに気づかせる、人のアクティビティを引き出す技術も注目されるようになっています。
また、新たなビジネスの可能性も見えています。現在SDTV、HDTVなどさまざまなビデオフォーマットがあり、媒体もテープやディスクなどさまざまです。音楽もそうですね。
コンテンツを手に入れる形態は、DVDなど物理媒体を購入・レンタルするパッケージ型と、オンラインで情報を端末にダウンロードするストレージ型、オンラインでダイレクトに映像を視聴するストリーミング型の3形態があります。シリコン・オーディオなどのMP3ファイルも、ダウンロードして購入しますから、販売形態が変わったとはいえストレージ型です。
NGN上で、まずはストリーミング型で高品質の映像や音楽がオンデマンドで利用できる形態を目指します。見たい時、聴きたい時サーバにアクセスしてストリーミングで利用するだけですから、ユーザはビデオや音楽データを手元に置いておく必要がなくなりますし、好きなときにAV視聴ができ、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性があると思います。
VoD以外に、将来どのようなアプリケーションやサービスが考えられるのでしょうか?
インタラクティブ(ユニキャスト)通信を利用して、他にも色々なアプリケーションが考えられます。高精細な映像を使ったTV会議やe-Learningコンテンツ、複数のメンバーが参加して行なうオンラインのビデオ編集なども考えられますね。シーケンシャルな特性を持ち、再送できないリアルタイム性のあるコンテンツを安定して利用することに向いています。たとえば取材現場から送信されるビデオ映像を、リアルタイムで編集するなども可能になるかもしれません。
元々、通信の代表例である電話は疎通の確保とリアルタイム性が要求される通信ですが、その逆にインターネットは必ずしも疎通が確保されていないベストエフォート型の対峙型通信です。NGNは秩序あるIP網として、これらの特性の異なる2つのサービスをひとつの仕掛けで提供できるようにする新しいIPネットワークです。
社内ネットワークで実現しているメール、社内システム、電話などがNGNというネットワークですべて実現できますので、NGNが普及すれば、今後のオフィスワーキングは集合型である必然性も薄れ、Virtualオフィスが実現する環境が整うと言えるのではないでしょうか。
これまでにもビジュアル・コミュニケーション・ツールは存在しましたが、アナログ放送以下の画質では、映像として内容は把握できますが、写っている人や物の質感のような詳細部分までは分かりにくかったんです。そのため、カメラに向かって商品などを見せても、相手に臨場感までの情報は伝わりませんでした。今後、高精細なハイビジョン映像を使ったTV会議や、同じファイルを同時に閲覧して編集しながらTV会議を行なうことができるようになれば、これらの問題が解決します。そればかりではなく、サービスフロントが遠隔でお客様に対応したり、サービスフロントをサポートするバックヤード人員が遠隔で対応するなど、会社や事務所のワーキング・スタイルが変わる可能性すら秘めています。
社会に求められる通信の役割は、物流主体の世の中を情報流主体の世の中に変え、真の情報社会を実現することと思います。これまで「情報の流れ」と呼んでいたものも実は情報が物流として伝達されていたケースが多く、情報のあるところに人が移動するなどコストと時間がかかっていました。NGNでは、インターネットや企業ネットワーク上で実現しているさまざまなIPアプリケーションと、電話や映像といったリアルタイムに人間が直接情報を授受するコミュケーション手段がひとつのネットワークで実現できるようになります。
私の考えるNGNのもたらす近未来イメージをお話します。
我々サラリーマンは、毎日会社に集合して仕事をすることがあたりまえでしたが、仕事をするための情報共有・情報交換のかなりの部分をメールなどネットワークを介してバーチャル空間で行っています。ただ、人間同士の微妙なハイタッチなコミュニケーションまでは遠隔で交わせないため、仕事のスタイルが集合型から離れられなかったと思います。もし、フェイストゥフェイスのハイタッチなコミュニケーションも遠隔で実現できるのであれば、真に遠隔でのワーキングコラボレーションが可能となり、社員は毎日定時に集合する制約から開放されます。また、ハイタッチなコミュニケーションの時間を除けばバーチャル空間で仕事をしていますので、個人個人が時間の使い方を自分の都合の良いように調整できます。上位レイヤでのセキュリティの課題をクリアすることが必要ですが、NGNのもたらすインパクトは、リアル空間の制約を取り外して、時間も空間も人間本位のスタイルで行動ができるようになりことだと思います。
このように時間的・空間的な制約がなくなれば、社会構造は一変します。どこにいてもネットワーク経由で仕事ができますから、オフィスの概念は根本的に変わり、都心に社員を全員収容できるスペースを構える必然性はなくなるでしょう。また地方雇用や女性・障害者雇用の環境改善、人間の移動に伴うエネルギー消費軽減、鉄道・道路など物流インフラの混雑・渋滞軽減など、現在日本が直面しているの課題を解決する大きな推進力になるものと期待してます。
大局的には、上記のような社会のパラダイムシフトにNGNおよびインタラクティブ(ユニキャスト)通信が寄与できるものと期待しております。
NGNフィールド・トライアルで行なわれたVoDは一見地味で、DVDなどのチャプター再生をオンデマンドで実現しただけのように思えますが、バックボーンでは大きな変化が起きているのを感じます。それは単なる技術の進化だけでなく、情報の流れや新しい仕事のスタイルを創り出す力を持っています。そしてそれを実現するのはNGNです。NGNでは、インターネットで為し得なかった高品質なインタラクティブ(ユニキャスト)通信により、さらに高度な情報コミュニケーション環境が実現するでしょう。新しいサービスや革新的なアイディアが私たちの生活スタイルを変えるのも、そう遠くはないような気がします。
