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ICT用語ガイド
GUIDE 015 SaaS(Software as a Service)

パート1 SaaSを理解するための基礎知識

1-1:SaaSとは?

2006年あたりから耳にするようになったSaaSという言葉ですが、これはSoftware as a Service:「サービスとしてのソフトウェア」を省略したもので、「ネットワークを通じて、さまざまなソフトウェアの機能を利用者の必要に応じて提供するサービス」という意味です。しかし、ネットワーク経由でアプリケーションソフトウェアの機能を提供するサービスは、なんら新しいものではありません。1990年の後半に登場したASP(Application Service Provider)も、グループウェアやショッピングカートなどのアプリケーションをサービスとして提供していました。では、なぜそれがSaaSとして広がり始めたのでしょうか。

SaaSが受け入れられた背景には、主として3つの要因を挙げることができます。その1つは、ASPの頃に比べて、ネットワークインフラの整備が一段と進んだことです。ブロードバンドなどの、より高速なネットワーク環境が広がったことで、大容量のデータもストレスなくやり取りすることができ、ASPでは提供できなかった業務アプリケーションやCRMなどをサービスとして提供できるようになっています。

2つめは、提供されるサービスコストの低下です。多くのASPでは、1サービスを1ユーザに提供する「シングルテナント方式」を採用して、ユーザ専用のサーバ環境を提供していました。その結果、ソフトウェアだけでなくサーバ環境の構築コストも必要となり、トータルコストが高くなったためにASPの利用拡大が進まない面がありました。その教訓からか、SaaSでは1サービスを複数ユーザに提供する「マルチテナント方式」を採用することで安価なサービスを実現しています。

3つめは、「サービスとしてのソフトウェア」の利便性が高まったことです。ASPで提供されていたサービスの多くはプロバイダと開発ベンダーが別であり、さらに既存アプリケーションを使ったサービスだったため、ユーザが自由にカスタマイズできない利便性の悪いものでした。SaaSはユーザが自由にインターフェースを変更したり、ビジネスロジックを修正できるオンデマンドでのサービス提供を目的としており、開発したベンダーがホスティングしているためにユーザの使い勝手のよいサービスを提供することが可能となっています。

ユーザが求めているのは、サーバなどのハードウェアやパッケージ・ソフトウェアではなく、必要としているサービスを、今すぐ低コストで利用できる環境です。SaaSはこれらのニーズを満たすことが可能な、最新のネットワーク環境を最大限に活かして提供される「サービスとしてのソフトウェア」であると言えます。

シングルテナントとマルチテナント

SasS市場への参入が相次ぐ

SaaSの生みの親ともいえるのが、米国のセールスフォース・ドットコム社です。同社がSaaSとして提供する「Salesforce」というCRMソリューションは、既に世界中で約3万社が利用しています。セールスフォース・ドットコムは1999年の設立以来、ASPプロバイダとしてCRMやSFAなどのアプリケーションをオンデマンドで、月額数千円の低コストで提供してきました。同社のビジネスモデルが注目を浴びるようになったのは、高速ネットワーク回線が低コストで利用できるようになったことが大きく影響しています。初期投資や運用管理コストが不要な同社のサービスは、ソフトウェアの導入や利用の新しい形態としてSaaSモデルと呼ばれるようになりました。

同社の成功を追うように、米国ネットスイート社が中小企業向けのサービスとして、CRM/ERP/eコマースの機能を統合した「NetSuite」の提供を開始しました。さらに大手ITベンダー数社がSaaS市場への参入を果たし、活発な市場競争を展開しようとしています。

1-2:SaaSの最新動向を知る

閉域網(IP-VPN)で使われ始めたSaaS

SaaSの特徴の1つとして、「マルチテナント方式」によりサービスが安価に提供できるようなったことを説明しました。しかしこれは、企業セキュリティの視点からいえば大きな不安材料になります。なぜなら、SaaSではサーバやアプリケーション、データベースなどを複数のユーザ企業で共有するのが大前提であり、それらをインターネット経由で利用することになるため、顧客情報など機密情報の漏えいが心配されるからです。

こうした不安を解消させる手段として、SaaSとIP-VPNなどの閉域網サービスをセットにした新サービスが注目されています。WANサービスの中でSaaSを展開させることにより、ユーザ企業は安心してさまざまなSaaSのサービスを利用できるようになります。通信事業者からすれば、VPNの付加価値サービスにSaaSという強力なメニューをラインナップに加えることが可能となり、結果的には両者に利益をもたらすことになります。

このように、サービスとネットワークインフラは表裏一体の関係にあり、互いが刺激しあうことにより、今後も成長していくことになります。その意味で、SaaSのさらなる成長の鍵はNGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)の実現にあるともいえます。

NGNは、固定電話網のように高い信頼性を持ち、なおかつIPネットワークの自由度を目指した次世代のネットワークです。NGNの高い通信品質とセキュリティは、ネットワークをプラットフォームとするSaaSに安定したアプリケーション環境を提供します。さらにCRMとテレビ電話の連携や、ユビキタス・デバイスとの連動なども可能となり、今後予想もつかないような新サービスを生みだすチャンスにもなると考えられます。

マッシュアップと標準化の動き

Web2.0の要素の1つに「マッシュアップ」という手法があります。Googleの地図検索サービス、「Google Maps」で提供されたサービスとしてご存知の方も多いかもしれません。これは、複数のWebサービスをAPI※1経由で連携させることで、あたかも単一のサービスのように動作させるというものです。

また、ユーザが自由にカスタマイズできるというのがSaaSの特徴のひとつですが、例えば、ユーザのカスタマイズ情報をメタデータ※2としてデータベースに保存しておくことで、ユーザが望むレイアウトの変更や設定項目の追加などに柔軟に対応するサービスを実現しています。

これらの手法は、いずれも多様化するユーザのニーズに対して、いかに最適なサービスを提供できるかという視点から考えられたものです。つまり、SaaSとマッシュアップは強い親和性があり、SaaSで提供されるサービスにもマッシュアップが適用できます。一社では提供できない複雑なサービスも、マッシュアップで複数のSaaSを連携させることにより実現することが可能となります。

セールスフォース・ドットコムでは今年になって「Salesforce」と独シーメンスの通信アプリケーションを組み合わせたマッシュアップ・サービスの提供を開始しました。これにより、CRMを利用して電話会議などを行う際に参加者の状況を事前に把握することが可能となります。ユーザの立場から言えば、このようなベンダーの垣根を越えた共通のプラットフォームの上で、様々なアプリケーションやサービスが利用できることが理想ですが、そのためには別々に存在するアプリケーションやサービスをまとめるための標準化された環境が必要になります。その足掛りとなる動きは既にSaaS業界の中で起こりつつあります。

SaaSベンダーの提供するサービスを自由に組み合わせて利用できるようになることで、ユーザはコンピュータやアプリケーションを意識する必要がなくなります。NGNとSaaSが提供する新しいサービスは、水道の蛇口をひねるように、ネットワークに接続するだけでサービスを利用できる、ユーティリティ・コンピューティングの大きな流れにつながっているのです。

※1 API(Application Programming Interface)
プログラム開発を容易に行うために、ファイル管理や入出力といったOSの機能、プログラムの機能などを呼び出すためのインタフェース。
※2 メタデータ(meta data)
膨大なデータの中から特定のデータを見つけ出すときに参照する、データの属性を記録した情報です。

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