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ICT用語ガイド

GUIDE 012 RFID(無線ICタグ)

〜実用段階に入ったRFIDの最新動向と将来の展望〜
2007年01月17日公開

パート1 RFIDの現状と、普及への課題

1-1:RFIDとは?

RFIDとは「Radio frequency identification」の略。電波(電磁波)を利用した専用のリーダ/ライタを使って、「RFタグ」のデータを「非接触」で読み書きするしくみのことです。タグについては、「ICタグ」「電子タグ」「電波タグ」「無線タグ」、「RFIDタグ」など、いろんな名前で呼ばれていますが、ここではJIS(日本工業規格)で定められている「RFタグ」と統一して呼ぶことにします。また、「RFID」とは、「RFタグ」とタグの情報を読み書きする専用のリーダ/ライタを含めたシステムを意味します。

RFタグは大きく、「モノに付けるもの」と「ヒトが持つもの」に分けることができます。ヒトが持つモノの代表例として、NTTコミュニケーションズで提供している「入退室管理」や「PCログイン認証制御」などを1枚のICカードで行うことができるeLWISE(エルワイズ※1)があげられます。また「Suica」や「Edy」などといった「非接触型ICカード」もあります。「ピッ!」と専用のリーダ/ライタにかざすだけで、改札を通ったり、買い物ができたり、カードに入金(チャージ)することなどが可能で、今も広く使われています。2006年1月からは、携帯電話に対応した「モバイルSuica」がサービス開始になりましたので、今後ますます普及されていくことでしょう。さらに、カード偽造やスキミング防止のために登場したICチップを搭載した銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどにも、RFIDの技術が活かされています。

さて、今回、この特集で注目したいのは、「モノに付けるRFタグ」です。私たちが目にする身近な例としては、盗難(万引き)防止タグがありますが(不正に持ち出すとピーッ!とうるさい音を出す、あれです)、主に在庫管理、品質管理など、流通や製造過程で利用されることが多いので、一般の消費者の目に触れることはまだ少ないかもしれません。しかし、飲食業、航空会社、クリーニングなどのサービス業など、RFIDの技術を導入する企業が年々増えているので、これからどんどん見かける機会が増えていくことでしょう。たとえば、食べたお皿をRFIDでカウントする回転寿司屋さん。食器をトレイに載せたままで料金を計算し、社員証で精算するというしくみを取り入れた社員食堂など、すでに身近なところで、RFIDは活用されているのです。

日本では、歩き出したばかりのRFIDですが、海外ではすでに大きな成果を上げている企業が出てきています。その代表選手がアメリカの超大手スーパー「ウォルマート」です。RFIDを本格的に導入した結果、「在庫補充が3倍も効率的になった」と報告されています。ウォルマートがRFIDを導入したということは、ウォルマートに商品を納めている業者もまた、RFIDに対応したということ。新たな市場がここに生まれたわけです。

また、アメリカの医療・製薬業界でも、RFID化の波は確実に押し寄せているようです。今まではバーコード管理が主流でしたが、ファイザーは偽薬防止の観点から、昨年より一部の製品に対し、いち早くRFIDの導入に踏み切りました。またセファロンも将来的に医薬品の出荷から返品までの追跡システムの実現を目指し、処方薬を個品単位で追跡するシステムの実証実験を行っています。

バーコードとRFIDの違い

イメージ1

ところで、「モノに付いているタグ」というと、真っ先に思いつくのが「バーコード」ではないでしょうか。レジで「ピッ!」と読み込むシーンは、すでに私たちの日常にとけ込んでいます。まずはバーコードとRFIDの違いから、整理してみることにしましょう。細かく見ていくと、違いはたくさんありますが、まずは代表的な違いをピックアップしてみました。

・データ量
2次元バーコード(QRコード)の登場で、バーコードでも数KBの容量を持つことが可能になりましたが、POSレジなどに利用されている一次元バーコードのデータ容量は20バイト。一方RFタグはパッシブタグ※2(電池を内蔵せず、1m以下の近距離での交信が可能なICタグのこと)で、4KBのデータを持つことができます。保有できるデータの桁が違うのです。
・認識の仕方
バーコードの場合は、赤外線を使った専用のバーコードリーダで、1つずつ読み込んでく必要があります。スーパーなどのレジで見かけるように、商品をハンディタイプのリーダにかざしたり、レジに設置されたリーダに通したりと、バーコードを読み込むために人の手が必要なのです。一方、RFタグの場合、認識範囲が広く、柔軟に対応できるところが大きな特徴です。肉眼では見えないところにあるタグを読み込んだり(これを「透過性が高い」と言います)、タグが密集して多少重なっていても、それぞれ個別のタグを認識する技術があるため、スムーズな読み取りが可能です。また、カートやコンテナごと認識するといった「複数同時認識」も可能となります。バーコードでは実現できなかったことが、RFIDでは現実のものになっているのです。
・書き込みの可否
バーコードは印刷物なので、データを書き込むことはできませんが、RFIDの場合は内蔵メモリにデータを保存しているので、しくみによっては書き込みが可能なものもあります(リードオンリーのRFIDもあります)。
・コスト
構成がシンプルなだけに、低いコストで使うことができるのが、バーコードの場合のメリットです。印刷物であるため、データの書き込みは一切できませんが、逆に印刷するだけで作れるという点は、コスト面では有利です。一方、RFIDの最大の難関がコストだと言われています。詳しくは後述します。

RFIDの特徴

そのほか、RFタグの特徴としては、汚れに強い、金属以外のものであれば、タグとリーダ/ライタの間にあっても、ほとんど影響を受けずにデータの読み書きができることがあげられます。さらに使用する周波数によって、次のような特徴があります。

・長波帯(〜135KHz)
タグの中のコイル(アンテナ)と、リーダ/ライタのコイル間で起こる電磁誘導を用いて通信します。読み取り可能な距離は数センチ程度ですが、指向性(タグの向きによる電波の届く範囲)が広く、水やホコリ、金属の影響も比較的受けにくいとされています。そのため家畜の管理などに向いているシステムと言われています。
・短波帯(13.56MHz)
長波帯と同じく、電磁誘導を用いて通信します。読み取り可能な距離は1メートル程度と、長波帯よりも距離はぐっと長くなりますが、その分指向性が狭くなります。薄型にしやすい作りになっているので、社員証などに多く使われています。
・UHF帯(860MHz〜960MHz、日本国内では952MHz〜954MHz)
2005年4月、総務省令改正により、日本でもRFID用に使用可能になった帯域です。電波を用いて通信するため、読み取り可能距離は7メートル程度にまで拡がります。指向性は長波・短波帯に比べさらに狭くなりますが、タグの向きや遮断物の影響を比較的受けにくいので、今後商品管理や物流管理に活用されると期待されています。
・マイクロ波帯(2.45GHz)
電波方式を用いて通信します。読み取り可能距離は2メートル程度。世界最小クラスのタグとして注目された日立の「ミューチップ」は、この帯域を利用しています。水分の影響を受けやすく、無線LANなどとの間で干渉も指摘されていますが、小型化・低価格化が期待できるため、入退場システム(電子チケット)や商品管理などに利用されています。

RFタグの特徴(バーコードとの比較)

※1 eLWISE(エルワイズ)
大容量メモリを搭載した国際標準タイプB仕様の非接触・接触インタフェースを備えた、NTT Com提供のコンビ型多機能ICカード。公的・職域系などの分野で多数の導入実績を持っている。
※2 パッシブタグ(passive tag)
自ら電源をもたないタイプのICカード。リーダ/ライタとの交信範囲は短いもので数mm、長くても数十cm程度に限られる。反対に電池を内蔵し、長距離での交信が可能なタイプは「アクティブタグ(active tag)」と呼ばれる。交信距離が長く、リーダ/ライタとの距離が数十mでも交信できるという長所があるが、電池の寿命が尽きると交信できなくなり、また、パッシブ型よりも高価。

1-2:RFID最前線!

さまざまな分野での活用が期待されているRFIDですが、普及するカギは「規格の国際標準化」「電波干渉問題」「低価格化」です。この3つをどうクリアしていくかが、今後注目されるところです。

「ucode」と「EPC」という2つの規格

RFタグに用いる「商品コード」の国際標準化に向けて、ユビキタスIDセンター(T-Engineフォーラム)とEPCグローバルという2つの団体が活発な動きを見せています。

ユビキタスIDセンターは、T-Engineフォーラムの中に設置された組織で、「ucode」というID体系を使って、「モノ」や「場所」を自動認識する技術を作り出し、さまざまな実証実験を進めています。「食の安心安全」を確保するトレーサビリティや、1つのICタグを流通管理、品質管理、店舗での商品情報提供サービスまでに多角利用する実験など、日本におけるRFIDの普及は、このユビキタスIDセンターがリードしてきました。

一方、EPCグローバルは2003年11月に設立された非営利法人で、本部はアメリカのニュージャージー州プリンストンにあります。EPCグローバルが推進しているのは、「EPC(Electronic Product Code)」というコードです。これを商品に付けることで、商品の品質管理から在庫状況に至るまで、ネットワークを活用してサプライチェーン全体でデータを共有・管理することを可能にする他、ハードウェアの策定も手がけています。

つまり「ucode」と「EPC」の2つのコード体系があり、どちらが世界標準となるか?と注目されてきましたが、2005年、日本の総務省令改正により、動きが出てきました。日本国内でもUHF帯が解禁されることになったおかげで、EPCグローバルの「Class1 Generation2(Gen2)」という規格が、俄然注目を集めるようになったからです。「次世代タグ」とも呼ばれ、低価格かつ使い勝手のよいタグと、大きな期待が寄せられている規格であるEPCグローバルは、「ISO 18000-6 Type C」という国際規格としての採用を提案をしています。予定では今年の春頃に成立されるだろうと言われており、もしこれが決定すれば、「Gen2タグ」は、業界団体規格から国際規格へと、昇格することになるのです。

この動きを受けて、日本でも2006年4月6日に日本初のGen2規格に準拠したICタグによる商用への運用が始まりました。

電波干渉問題の解決策は?

さて、ところ変われば電波事情もまた違うもので、現在注目を集めている「UHF帯」でも、日本と海外では使用する周波数が違います。欧州では865〜868MHz、アメリカは908.5〜914MHzですが、日本国内では952MHz〜954MHzなのです。したがって、アメリカで使っているタグをそのまま日本に持ってきても使うことができないため、日本向け用のタグに付け直すか、それとも日本・海外両方の周波数を認識できる「マルチ」なタグとリーダ/ライタを使うかが、注目されるところです。

また、国際物流向けの周波数帯は433MHzですが、この帯域は日本国内ではアマチュア無線用の帯域とされ、現時点ではRFIDで使うことができません。しかし、RFIDの可能性の高さや世界的動向、アマチュア無線ユーザが減ってきたことなどを加味し、総務省から関連省令等を改正する予定であることが発表されました(http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/061108_4.html)。電波の問題が解決されれば、日本におけるRFIDの普及も一気に加速するかもしれません。

低価格化のカギを握る「響プロジェクト」

響きプロジェクト

最後に、最も気になる「コスト」についての動きを把握しておきましょう。バーコードに比べてコスト高が指摘されているRFIDですが、確かに大きな課題であることは事実です。3年前に実験がスタートした当初、RFタグ1つに100〜200円かかっていましたが、現在1つ50円前後にまでコストダウンしています。当初の半分以下というのは、なかなかの業界努力の賜物ですが、「50円」というコスト自体、まだまだ安いとは言えません。数万、数十万円もする高級品なら、50円のタグを付けることは実現可能かもしれませんが、1つ100円程度の野菜や缶ジュースに、50円のタグというのは、あまりにも非現実的な話です。

そこで、登場したのが「響プロジェクト」です。「タグ単価(インレット※3)を5円まで落とす」ことを目的に、経済産業省が参加企業を公募し、「タグの製造から加工まで一貫して開発する」という条件のもとで、日立製作所が請け負い、協力会社として、大日本印刷、凸版印刷、NECの3社がプロジェクトに参加しました。2004年からプロジェクトはスタート。昨年5月に完了し、月産200万個で1個あたり30円だったコストを、月産1億個で1個あたり5円まで下げることに成功しました。また、「Gen2タグ」への完全互換を実現。押し寄せるグローバル化の波にも、しっかり対応できる準備は整いました。

ただし、一個あたり5円という数字は、あくまでも原価。実際に商品化されると、多少のコストアップはいなめませんが、それでもRFIDの普及に大きな牽引力になることは間違いないでしょう。響プロジェクトの成果によって、最大の難関であったコスト問題も、明るい未来が見えてきました。

※3 インレット
アンテナとICチップから構成され、ICカードやRFIDタグを作成するための部品。ICチップやアンテナがむき出しのため、シールやカードの形に加工する必要があり、その場合、単価は5円を上回る。

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