法人のお客さま総合 > ビジネスアドバンス > リーダー戦略考:池谷 裕二 氏 > 脳の可能性を探る
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大脳の機能を追うのが大脳生理学。私の研究の本来のバックグラウンドは薬学で、薬理学が専門なのですが、脳などの生体の機能を知らないと薬も作れないので、薬を作る一歩手前の生理学を研究しています。解剖学では死亡後の脳を解剖したりしますが、生理学というのは生きた脳を扱います。
一言でいうと、海馬の可塑性です。可塑性というのは、あるきっかけにより脳の状態が変化すること。そしてそのきっかけがなくなっても変化した状態がしばらく脳に留まるということです。この脳の変化が、一般の言葉でいう“記憶”になります。記憶するときには海馬の中にあるニューロン(神経細胞)が活動するのですが、その活動の形としての記憶が、どうやって保存されているのか。あるいはどれくらいの期間保存されているのか。どういったときに失われてしまうのかを研究しています。
海馬の性質を難しい言葉でいうと“陳述記憶”。昨日は何を食べた、現在の総理大臣は誰だとか、言葉で説明できるような、いかにも“記憶”らしい記憶は、ほぼすべて海馬が作っています。しかしそれ以外の潜在的な記憶などについては、おそらく海馬とは無関係です。
場合によって違うと思います。総理大臣が誰かというのは、たぶん側頭葉あたりに蓄えられているのだろうと思うのですが、そうとばかりはいいきれません。ものによっては違うかもしれないし、時間や色に関する記憶は、それぞれまた別のところにあるかもしれないのです。脳の特徴は、情報が分散されて保管されていること。たとえば、人の情報なら「顔」、「体つき」、「声」、「名前」などが別々に蓄えられており、たとえば「顔」の情報を蓄えている部位に障害がおこると、その他のすべてのシチュエーションは完璧に思い出せるのに、相手の顔だけが思い出せないという状態になります。
シナプス(神経細胞が会話をする場所)の結びつきが強くなったり弱くなったりすることで記憶するというのはわかっています。10年くらい前は、結びつきの強さとシナプスの中に入っている神経伝達物質との関係にさまざまな仮説がありましたが、ここ2、3年は、結びつきが強まるときにはシナプスが大きくなる、弱まるときにはシナプスが小さくなるという構造の変化に注目があつまっています。強くなれば、それだけ通りが良くなって、その回路がよく使われるようになります。ではすべてのシナプスが大きくなれば良いのかというとそれは違っていて、バランスが大切なのです。シナプスを大きくしたり小さくしたりしながら、回路の繋がり具合を全体としてうまく調節することで、記憶ができているらしいということがわかってきています。

加齢とともに衰えていく代表的な能力としては、言語獲得能力や絶対音感を獲得する能力があります。これは大人より子供の方が勝っています。大人になるとできなくなるというわけではありませんが、年齢とともにその能力は衰えてきます。絶対音感に関しては、6、7歳以降ほぼ獲得できなくなってしまうようです。なぜそのくらいの年齢でできなくなるのかはわかりませんが、可塑性を抑える物質が関係しているとみられています。
実は脳の可塑性というのは、記憶するためには必要ですが、過度になってしまっては危ないのです。子供の脳は大人に比べて可塑性が強く、柔軟性のある脳といえるのですが、可塑性が過ぎると脳が急激に変化してしまいます。情報の吸収が早い代わりに忘れるのも早くなり、情報を長い間保管できないのです。
脳ができたそもそもの理由は、環境に適応して変化し、情報を蓄積して成長していくため。可塑性が過剰だと、情報の蓄積ができず根底から変わってしまうことになるので問題なのです。
「直感」です。どうして直感が歳をとるにしたがって増すかといえば、経験がたまるからです。直感と似た言葉にひらめきがあります。両者は同じ意味で使ってしまいがちですが、実はまったく異なるものです。脳科学者は絶対にこれらを一緒にしません。英語でも直感はintuition、ひらめきは inspiration。どちらも「ふと思いつく」という点では同じなのですが、思いついたあとが全然違うのです。ひと言でいうと、思いついた理由をいえるのがひらめきで、理由をいえないのが直感です。たとえば「なるほどこういうことだったのか」と思いつくとき、「こうなるからこうなるに決まっている。何であのとき思いつかなかったのだろう」というのは、完全な論理思考なのでひらめきです。「思いついた理由がわからないけれど、実際にやってみると正しかった」というのが直感です。
脳の部位でいうと、ひらめきは大脳皮質、直感はストリアツム(線条体)という脳の部位で行われます。ストリアツムは、前頭葉とともに歳をとればとるほど大きくなることがわかっています。
先日、棋士の羽生善治さんにお会いしました。将棋を指しているときは、基本的に手を読んでいるそうですが、中盤の難しい局面では手が読めないことも結構あるらしいのです。そのときに何が起こるかというと、「理由はわからないが、次にここに指せば勝てるような気がする」と感じるのだそうです。まさに直感ですね。
私が同じ盤面を見ても、どの駒をどこに指せばいいのかはわかりません。指したとしても、それはでたらめです。でたらめと直感の違いは何かというと、「経験に裏付けられているかどうか」です。羽生さんは小さいときから将棋を指しているので、本人に理由がわからなくても、ストリアツムが綿密な計算をして正しい答えを出してくれているのです。
歳をとると“物忘れ”が多くなると思うのには、3つの理由があると池谷准教授はいう。一つめは「情報の量」。「子供の情報はそんなに多くありません。たとえば知っている人の名前を挙げてというと、クラスの何十人くらいしかありません。しかし大人になって出会った人の数は、たぶん千人、2千人、もしかすると1万人を超えるかもしれません。数十人の中から1人の名前を思い出すのと1万人の中から思い出すのでは、どちらが難しいかということです」。物忘れが増えたというのは、それだけ沢山の情報が脳に詰まっていることの勲章だそうだ。
二つめのファクターは「時間」。歳をとると時間が早く感じるようになるそうだ。「子供にとっての“つい最近”は、せいぜい“3日くらい前”まで。ところが大人にとっての“つい最近”は、“半年くらい前”までを指したりします。半年前に覚えたことを思い出そうとしても、半年間復習しなかったら覚えられないのは当たり前なのです。また、3日間と半年間とでは、物忘れの絶対回数は後者の方が多いですよね。時間が経つのが早く感じるようになると、忘れるスピードも速くなったような気がするのです」。
最後は、「実は物忘れは増えていない」。大人と子供の物忘れの頻度は意外にも同じだそうだ。その証拠に、置き忘れなどは子供の方が圧倒的に多い。にもかかわらず、物忘れしやすくなったと感じるのはなぜだろうか? 「子供は物忘れをしても歳のせいだとへこまないのです(笑)。また、『歳をとると記憶が衰える』などというテレビや雑誌の影響で、歳をとるイコール記憶力が衰えると誤解しているだけです」。私たちは、必要以上に脳の衰えに敏感になりすぎているのかもしれない。
私はストリアツムを、海馬などより遙かに大切な脳の部位だと思っています。ストリアツムというのは、本来は体を動かすのをコントロールする部位。たとえばコップを手でスムーズに取るなどといった動きをコントロールしています。手が震えてしまうパーキンソン病は、ストリアツムに障害がおこってしまう病気です。
脳に占めるストリアツムの割合は、爬虫類の方が人間よりも大きい。また海馬は、ほ乳類にしかないので、生物学的には後付けといえます。そういう意味では、ストリアツムは海馬などよりも、生物にとって本質的で重要なものなのです。
たとえば訓練すれば誰でも自転車に乗れるようになりますが、これには2つのポイントがあります。ひとつは実際に繰り返すことによってやっと乗れるようになること。いくら「自転車に乗れる本」を読んでも、乗れるようにはなりません。あくまでも実地によって身につくのです。もうひとつは無意識。覚えようと思って覚えられるものではなくて、繰り返していくことにより、あるとき自然に乗れるようになるのです。
コップをつかむという行動もそうです。実はコップをつかむということはすごく精巧で正確な行動なのですが、幼児の頃にたくさんのつかむ経験、いわば訓練をしたから、私たちは「腕や指にどれくらいの力をかけよう」と考えなくても無意識に行えるのです。自転車に乗るのもコップをつかむのも、ストリアツムが無意識に厳密な計算をしてくれるので可能となるわけです。
直感もまったく同じで、経験によって蓄積されていきますが、使用されるときは無意識です。だから直感は「論理的な説明ができない」のです。しかし本人にわからないだけであって、本当は理由がちゃんとあるのです。
経営者の方々も、会社を運営するなかでたくさんの経験を積んでいきます。ある重大な決断をしなければならないときに、ベテランであればあるほど直感で選択しても大きく道を踏み外すことが少ないのは、その直感が豊富な経験に裏付けられているからなのです。
孔子の言葉では、70歳は「従心」といいます。心の思うところに従って行動し、外れないというような意味なのですが、これはまさに直感を指しているのだろうと思います。本人には理由がわからないけれど、心に従えばいいということです。
そういう理解でいいと思います。無意識に「こんなシチュエーションって前もあったな、このときにはこのようにしたな」とストリアツムが計算してくれているのです。直感は、一見非科学的なのですが、脳科学のまじめな対象として研究されていて、いろいろと面白いことがわかっています。
海馬とストリアツムには性差もあります。海馬はたぶん男性の方が強いと見られていますが、逆に直感を生むストリアツムは間違いなく女性の方が強くて、その理由もエストロゲンなどの女性ホルモンに関係するということがわかっています。昔からよくいわれる「女の勘」は、科学的見地からも本当だったのです(笑)。しかし直感は男性でも年齢を重ねると伸びてきます。もちろんいろいろな経験を積むなどして鍛えないと伸びませんが、そういう訓練を無意識のうちに受けている脳というのは、本当に尊重しなければいけません。だから歳をとった脳、ベテランの脳というのは本当にすばらしいと思いますね。
要するにアイデアですよね。アイデアはその前提となる知識をいかに蓄えているかが重要。何もないところからは絶対生まれません。充分な知識があるのだったら、“待つことしかない”ですね。
私がよくいうのは、「私たちには自由意志がない」ということです。「好きなときにボタンを押してください」という有名な実験があります。ボタンを押すのは自由意志です。そのときの脳の活動を見て、意志がどこから生まれるのかを観察したところ、当初の予想と違い、ボタンを押したくなったときより1秒くらい前から、脳がすでに押す準備を始めていることがわかりました。1秒経って押せる状態になってから、初めて「ボタンを押したい」という感情が生まれてくるのです。つまり、意志により選択しているのではなく、脳が指令を出しているのです。
それではボタンを押したくなる人間の意志とは一体何だと思いますか? 実は飾りだろうという科学者は結構多くて、私もその一人です。「脳が勝手に準備を始めて、指令を出して、ボタンを押してしまう」というのでは、操り人形みたいで気分が悪いですよね。だから本当は脳が勝手に押しているのですが、「人はあたかも自分の意志で押したのだと思い込むことで、満足しようとしている」と説明されています。
40代、50代になって司法試験など難しい資格試験を受けようと勉強する。あるいは中国語やロシア語をマスターしようと勉強を始める。普通に考えるとかなり無理があると感じるが、池谷准教授によると「そのようなことはありません。やればできます。脳も筋肉と同じように、使えば使うほど、トレーニングすればするほど強化されます。老化という言葉があるように、確かに身体は老化するのですが、それが早いところと遅いところがあるのです。目や耳、皮膚や筋肉は衰えが早く、心臓や脳などは衰えが遅いところです。また、脳というのは、歳をとってからむしろ伸びてくるという面白い側面を持っています」とのこと。40 代・50代・60代の方も、勉強を始めるのに遅くはないということである。「ただし、じっとしていては記憶力を鍛えられることはないので、相当な苦労は必要です」。筋トレと同じように、日々のトレーニングが大切なようである。
自由意志はないのですが、実はボタンを押す実験でも、私たちにできることがひとつあるのです。それが「自由否定」。“ボタンを押したくなる”のは自動制御だからしようがないのですが、そこで“押さないこと”は可能です。最後の選択権を持っているわけです。子供は自由否定が下手なので、作った本人の前で「この料理はまずい」などと平気でいってしまうのですが、その言葉を抑えるのが自由否定です。大人になると分別がつき、自然と自由否定ができるようになりますが、「まずいなあ」と思ってしまうところまでは同じなわけです。結局、思わないようにすることはできないけれど、言葉にするかどうかはコントロールできるということです。
話をアイデアに戻しますが、人には自由意志がないから、アイデアが出てくるか出てこないかはコントロールできません。先ほどいった“待つことしかない”というのは、そういう意味です。
しかし自由否定はあるので、自分の中でアイデアが一杯生まれてきたときに、「これは使えない」と自分で否定することはできます。そして、否定しなかったアイデアを企画にすればいいのです。
基本的にアイデアとは、数を打てば当たるもの。だから重要なのは、どれだけ多くの候補を出せるかです。下手な鉄砲数打ちゃ当たるで、1個よりも10個、 10個よりも100個、そういう戦略しかないですね。そのうちに1、2個くらいは、良いアイデアが出てきます。たくさんの企画を出せるかというのは、どれだけ脳を“揺らがせる”ことができるかにかかっています。
揺らぎというのは結構重要な要素で、“物忘れ”も揺らぎのひとつ。たまたま思い出そうと思ったときに、悪い揺らぎの状態なら、思い出そうとしても出てこない。しかし、どうでもよいときにフッと出てきたりしますよね。そういうときは、良い揺らぎの状態です。アイデアの出てくる良い揺らぎというのがありますが、その揺らぎを得るためには“歩く”といいのです。
歩くとシータ波(θ波)という脳波が出るためです。ものを思いつくのに良い、“ 三上(さんじょう)”という言葉があります。三上の1つめは“馬上(ばじょう)”で、いまなら電車や自動車の中。2つめは“枕上(ちんじょう)”で、布団やベッドの上。3つめは“厠上(しじょう)”、つまりトイレです。厳密にいうと歩くという動作がθ波を放出させているわけではなくて、場所が変わるという環境の変化が要因です。それはなぜかというと、脳は場所に敏感だからです。これは私たち人間の祖先が野生のとき、生きるために獲物や食料がどこで獲れたかを確実に覚える必要があったことに関係すると考えられます。
ずっとデスクに座っていても、アイデアはなかなか出るものではありません。どういうときに出るかというと、フッと席を立ったときなど。トイレというのはデスクから動いた直後ですよね。布団やベッドの上というのは一体どういうことかというと、実は眠っているときにもθ波が出ているからです。また、トイレに行くときに思いつく、眠っているときに思いつくのに重要なのは「考え続けていること」です。休んでしまうとダメ。一番いけないパターンは、煮詰まったからと言い訳をつけて、お酒などで脳をリセットしてしまうことです。
私が高校生のときに、百人一首を1週間で100句すべて覚える課題が出て困ったことがありました。単語帳の表側に上の句、裏側に下の句を書いて憶えたのですが、なかなか憶えられません。イライラして台所のテーブルのまわりをグルグル回ったのですが、そうしたら憶えられたのです。いま考えると、あれも歩いていることがポイントでした。
θ波が出ていると、「情報の吸収力」が高まります。アイデアを出すのも記憶を留めるのも歩いたり場所を変えるといいのです。私も実際に実験のアイデアを思いつくのは移動中、大学の行き帰りが多いです。これは動物実験でわかっているのですが、(1)自分の足で歩いているとき。(2)乗り物に乗り動かしているとき(人がクルマを運転している状態)。(3)固定されたままリモコンで乗り物が動かされているとき(人が電車に乗っている状態)。これらすべての状態でθ波が出るのです。最もθ波が出るのはやはり(1)ですけどね。
会社内でも脳にθ波を出させる工夫はできます。私がよく行うのは、場所が変わった気分を作ることです。一番簡単なのは椅子の向きを変えることです。脳を効率良く使うために、脳を騙して刺激を与えるということです。
「脳を研究するとあまり悩まなくなりますね。しょせん悩みは脳によって作られたもの。そんなものに振り回されているのはばかばかしい」と池谷准教授。ところで、悩んだときにすがりたくなるのが神様・仏様。最近の脳の研究によると、「神様を感じる脳の部位」というのも、ちゃんとあるのだそうだ。

場所の話もそうですが、脳が働く状況を考えるときは、「自分が野生動物だったら」と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。たとえばライオンはお腹がすいたら狩りに出ますが、それは決まって朝と夕方。魚が釣れるのも同じ時間帯です。これは動物の行動の真理で、1日の中で集中力や記憶力が最も高まる時間帯なのです。
また、狩りに出ているということは場所が変わるのでθ波が発生し、さらに集中力、記憶力が高まる状態になります。体を動かす、場所を変えることによって、「集中力や記憶力が高まるモード」になるのです。動物である人間もまったく同じで、仕事に適した時間というのは朝と夕方です。昼食をとったあとは眠くなりますが、動物である以上、これはしかたがないのです。仕事、特に書類を書くなど単調な仕事をはかどらせるためには午前中、あるいは夕方に行うといいと思います。
人間が脳をここまで発達させてきたのは社会性、つまり人と直接コミュニケーションをとるためです。その脳をメールという新しいコミュニケーションに使い回せるのなら、進化といえるのでしょうが、現時点では人と会ってコミュニケーションをとる以外に手段はありません。
アイデアが生まれるのは、人と話をしているときであり、メールをしているときではありません。一見くだらない話をしているようでも、そういうときにアイデアが生まれるものです。会話も含めて、体を使うことがいかに大事かということです。私が最も強調したいのは、「多くの人が脳のことばかりを気にして、身体性というものをあまりにも忘れている」ということです。机にしがみついてパソコンを操作しているだけでは、脳は活性化しないのです。体が動くことによって、場所が変わることによってθ波は出るのです。脳に刺激を与えるために、鍛えるために、ぜひ歩いたり体を動かす機会を増やしてください。
「自己知覚」という面白い実験があります。(1)マッチ棒を眉間に挟む。(2)ペンをヨコにして歯でくわえる。(3)ペンをタテにして唇だけでくわえる。強制的にこの3つの表情をさせて、同じマンガを読むという実験なのですが、分析すると、(2)のときが一番面白くマンガが読めるという結果が出るのです。それはなぜかというと、(2)は笑ったときの顔になるので、顔が笑っているから楽しいのだと脳が勘違いするのです。そうすると、同じマンガを読んでも面白く感じるというわけです。(1)は、しかめっ面。(3)は沈んだような憂鬱な気分の表情。この2つの状態だと読んだこと、聞いたこと、やっていることも面白く感じないのです。
つまり「体によって脳は変わる」のです。生物の進化上、脳よりも体の方が先にできています。脳がない生き物はいますが、体のない生き物は存在しませんよね。大切なのは体が先ということです。たとえば、テレビで見るお笑い芸人さんの芸を見てあまり面白くないと思ったことはありませんか?しかし、同じ芸でも寄席やスタジオなどライブで見ている人は大笑いしていたりするじゃないですか。これはなぜかというと、臨場感などいろいろな違いが説明できますが、いちばんの違いは「ライブだと面白くなくてもとりあえず礼儀として笑わなくてはならない」ということ。義理で笑うことにより何が起こるかというと、“芸が本当に面白く感じる”のです。ようするに「顔が笑っている、だから楽しいにちがいない」と脳は判断するのです。笑っていると、それだけでポジティブな気分になるということですね。こんないいことはありませんよね。だから体を“始動(スイッチ)”にするのです。やる気がないときは、やり始めるのが一番というのと同じで、まずは体を動かすことが大切なんです。


歳をとっても記憶力を高める訓練はできますが、単純なものを暗記することは、実は大人にはあまり意味がないと考えています。確かにビジネスでは、出会った人の顔と名前を覚えなければいけないという局面もありますが、そういうものは生活の知恵として特に役に立つといったものではありません。子供なら単純な情報の丸暗記も必要だと思いますが、大人は丸暗記するような情報の記憶よりも、知恵や論理的な思考力など、応用の利く記憶を蓄える方がいいのです。そういう能力は、歳をとってからの方が若い頃より遙かに高いのです。脳の可能性は無限。脳は年齢に関係なく成長します。歳を重ねた脳に自信を持ってください。
大脳皮質・側頭葉の内側にあり、側脳室下角底部に突出した大脳辺縁系の一部。左右に一対ずつ存在し、ヒトでは直径1cm、長さも3cmほどで、入力された情報の整理(取捨選択)や記憶、空間学習能力に関わる器官。虚血に対して非常に脆弱であることや、アルツハイマー病における初期の病変部位のひとつとしても知られており、比較的研究の進んだ脳部位。心理的ストレスを長期間受け続けると神経細胞が破壊され、海馬が委縮する。脳の中にあって、唯一細胞分裂を繰り返す神経細胞が集まる器官でもある。
ニューロンとは神経細胞のことで、生体の細胞の中で「情報処理用」に特別な分化を遂げた細胞。本体の細胞体、入力部の樹状突起、出力部の軸索の3つの部分から成る。脳内ではこのニューロンが網の目のようにつながり、ニューロナル・ネットワーク(神経回路網)を構成している。各ニューロンは他の多数のニューロンから信号を受け取り、それを総合して次のニューロンに信号を伝えている。この伝達によって情報を処理し、また興奮や抑制を促す信号を発する。
ニューロン(神経細胞)間に形成される、信号伝達などの神経活動に関わる接合部位とその構造のこと。神経細胞の軸索を伝わってきた電気信号を化学物質の信号に変えることで、次の神経細胞に情報を伝達している。電気信号が伝わってくると、シナプスにある小胞から神経伝達物質という化学物質が、神経細胞同士のわずかな隙間であるシナプス間隙に分泌される。神経伝達物質が、次の神経細胞の細胞膜にある受容体(樹状突起)に結合すると、電気信号が生じて情報が伝達される。シナプス間隙の伝達にかかる時間は、約0.1〜1.0ミリ秒(ms)といわれている。
脳内でニューロン間の信号伝達を媒体する物質で、主に、アミノ酸、エステル類、モノアミン類、ペプチド類の四種に分類できる。シナプス前細胞の細胞体で合成され、細胞輸送によって運ばれるか、細胞外から吸収され、シナプス小胞に貯蔵される。発信側の神経細胞の信号から発せられ、この物質によって次の神経細胞を刺激することで、また神経伝達物質が発せられる。この連鎖がニューロナル・ネットワーク(神経回路網)の活動の基盤となり、情報処理を可能にしている。
Striatum(せんじょうたい)。終脳の皮質下構造で、大脳基底核の主要な構成要素のひとつ。機能としては、運動系への関与が最もよく知られているが、意思決定や期待予測などその他の高度な認知過程にも関わると考えられている。
1970年、埼玉県所沢市出身。二上達也九段門下。入門時からの評価に違わず、驚異的な速度で昇段を重ねる。89年、第2期竜王戦で初タイトルを獲得。眼鏡越しに相手を見やる姿は「ハブ睨み」といわれ、対戦相手を恐れさせた。93年、第34期王位戦でタイトルを奪取し、史上最年少で5冠王。96年には、第45期王将戦でタイトルを取り史上初の7冠全制覇を達成。各戦法に精通するオールラウンドプレーヤーで、柔軟な発想と絶妙な勝負手による逆転術は“羽生マジック”と称されている。
1871年にイギリスの内科医ジェームズ・パーキンソンが初めて記載した疾患であることから、この名称がつけられた。多くは40歳以後、特に50〜60歳台に発症し、手足の振戦(ふるえ)、筋強剛(筋の固さ)、動作緩慢、姿勢反射障害(転びやすさ)などが主な症状。これらの症状が現れる原因の大部分は、ストリアツム(線条体)のドーパミン(神経伝達物質)の欠乏によるものと考えられている。
主に海馬に出る記憶に関わる脳波のこと。約5回/秒の波をうつ4〜8Hzの脳波で、従来は浅い睡眠や瞑想の際に出る特殊な脳波だといわれていた。しかし近年の研究では、学習などで難解な問題を解いたりする際にも発せられ、これに応じて海馬のニューロン(神経細胞)が増えるという「記憶や学習とニューロンの関係性」が実験で確認された。θ波に関わるアセチルコリンは認知症を改善する薬の開発で重要な鍵を握っている。