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僕が好きな写真は、田中徳太郎先生の『白鷺』。田中先生の写真はどれも素晴らしいのですが、僕が特に気に入った写真があります。白鷺が毛づくろいしている縦位置のモノクロ写真です。田中先生は埼玉の野田というところに住んでいて、そこに白鷺のコロニーがあったのです。40歳で国鉄を退職して白鷺を撮り始めたのですが、当時は望遠レンズもなかったので白鷺に近づけない。それで望遠レンズを考案し、やがて白鷺のコロニーと同じ高さのやぐらを田んぼに作られました。そこから望遠レンズで見事な写真を撮られています。
日本で評価される前に海外で高い評価を得た方で、1958年にはニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館に先生の作品が収蔵されました。その後、フランス国立古文書館に50点も永久コレクションとして収蔵されています。世界で評価を受けたすごい人がいると、日本でも有名になったのです。 先生と僕の出会いも鷺が縁。僕がフィリピンの写真展を開催したとき、大鷺(だいさぎ)を写したものがありました。波で浸食された巨岩に、大きく羽根を広げて休む寸前の大鷺です。その写真をいつまでも見ている小柄なおじさんがいました。「あなたが撮ったのですか?」と聞かれたので、「はい。これは黒鷺です」と答えました。そしたら「これは大鷺だと思いますよ」といわれたので、「やけに詳しいな」と思いました。「写真集を求めたいので、サインを入れてくれませんか」というので、「ご芳名帳にお名前をお願いします」といったら、『田中徳太郎』と書いてある。すごく驚いて「失礼しました」というと、「私の写真集は中村さんにプレゼントさせてください」といってくれました。それが縁で親しくなり、すごくよくしてもらいました。 田中先生の『白鷺』の写真をバックに坂東玉三郎氏が昭和女子大学の人見記念講堂で踊ったことがあります。そのときにも招待されたのですが、あの『白鷺』の写真を超えた写真は見たことがありません。本当に素晴らしい作品ですよ。 *2008年5月25日(日)まで、JCIIフォトサロン(東京都千代田区一番町)で、田中徳太郎作品展「白鷺」が開催されています。中村征夫氏もコメントを寄せられています。 <詳細はこちら> |